サロンの保険の選び方|施設賠償責任保険・店舗総合保険・休業補償の違い
更新日:2026年10月19日
サロンを開業するとき、「どの保険に入っておけばよいのか」は迷いやすいポイントの一つです。施設賠償責任保険、店舗の火災保険(店舗総合保険など)、休業補償の保険は、それぞれ備えるリスクが異なります。また、施術による事故がどこまで補償されるかは、契約によって違いがあります。この記事では、サロンで検討したい主な保険の違いと補償の範囲、選ぶときに確認したい点を、業界団体や公的機関の情報をもとに解説します。
- 施設賠償責任保険は、店舗の管理不備や業務の遂行が原因でお客様などに損害を与えた場合の賠償責任に備える保険です。
- 施術の結果によって後から生じた事故や仕上がり不良は、補償の対象外とされている契約もあるため、補償範囲の確認が欠かせません。
- 店舗の火災保険は、火災などによる建物や設備・什器の損害に備えるもので、地震による損害は特約がなければ補償されません。
- スタッフの業務中のけがは、賠償責任保険ではなく労災保険で備えるのが基本です。
サロンに必要な保険の全体像|リスクごとに備える保険が違う
サロンの保険は、「お客様への賠償」「店舗の財産の損害」「休業による収入の減少」「スタッフのけが」という4つのリスクに分けて考えると整理しやすくなります。
サロンでは、お客様が床で滑って転んだり、施術中にお客様の衣服を汚してしまったりと、お客様に損害を与えてしまう可能性があります。こうした賠償責任に備えるのが、施設賠償責任保険などの賠償責任保険です。一方、火災や水漏れで内装や美容機器が壊れたときの損害に備えるのは、火災保険です。さらに、店舗が被害を受けて営業できない期間の収入の減少には、休業補償の保険で備えます。スタッフが仕事中にけがをした場合は、労災保険の領域になります。
- お客様への賠償:施設賠償責任保険、生産物賠償責任保険(PL保険)など
- 店舗の財産の損害:店舗の火災保険(店舗総合保険など)
- 休業による収入の減少:休業補償保険など
- スタッフのけが:労災保険(必要に応じて労働災害総合保険など)
このように、それぞれの保険は備えるリスクが異なり、1つの保険ですべてをカバーできるわけではありません。なお、商品の名称や補償の範囲は保険会社によって異なるため、この記事では一般的な考え方として紹介します。
- サロンのリスクは、賠償・財産・休業・スタッフのけがの4つに分けて考える
- お客様への賠償には、施設賠償責任保険などの賠償責任保険で備える
- 店舗の財産の損害には火災保険、休業中の収入減には休業補償の保険で備える
- 商品の名称や補償の範囲は保険会社によって異なる
施設賠償責任保険とは|店舗の管理不備などによる事故に備える
施設賠償責任保険は、お店の施設の欠陥や管理の不備、スタッフの仕事中の行為が原因で、お客様などの第三者に損害を与え、法律上の賠償責任を負った場合に備える保険です。
日本損害保険協会は、施設賠償責任保険について、所有・使用・管理している施設の欠陥や、従業員等の仕事の遂行により企業が法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償すると説明しています。サロンであれば、濡れた床でお客様が滑って転んだ、看板が落ちて通行人にけがをさせた、といったケースが考えられます。
注意したいのは、何が補償の対象外になるかです。損保協会は、補償内容や保険金の支払限度額などは各社によって異なるとしています。一例として、美容業の業界団体の制度の約款概要では、従業員が業務中に負ったけがによる賠償責任や、お店が借りている物の損壊についての貸主への賠償責任などは、補償されないものとされています。どこまでが対象になるのかは、契約前に約款や重要事項説明書で確認しましょう。お客様とのトラブルが起きたときの対応の基本は、次の記事で解説しています。
- 施設の欠陥や管理不備、仕事の遂行による第三者への賠償責任に備える
- 床で滑って転んだ、看板が落ちたといった事故が想定される
- 補償内容や支払限度額は保険会社によって異なる
- 従業員のけがや借りている物の損壊は対象外とされている例がある
施術による事故はどう補償される?|「仕事の結果」による事故とPL保険
施術中に起きた事故と、施術を終えた後にその結果として起きた事故とでは、補償の扱いが分かれることがあるため、契約内容をよく確認することが大切です。
損保協会は、生産物賠償責任保険(PL保険)について、製造・販売した製品の欠陥や、行った工事・サービスの結果を原因として法律上の賠償責任を負った場合の損害を補償すると説明しています。つまり、サービスを提供し終えた後に、その結果が原因で起きた事故に備えるのがPL保険の考え方です。
美容業の例として、全日本美容業生活衛生同業組合連合会(全美連)の美容所賠償責任補償制度では、施術中に誤ってお客様の衣服を汚した場合や、薬品・器材の使用を誤ってお客様の頭皮・毛髪などに損傷を与えた場合などは補償の対象とされています。一方で、仕事の結果に起因して発生した賠償事故は補償されず、その例として「カラー施術の後日、シャンプーや汗によりお客さまの寝具や衣服を汚してしまった」ケースが挙げられています。髪型や毛染めの色などの仕上がり不良も、補償の対象外とされています。
このように、どの事故がどの保険の対象になるかは、保険会社や契約によって異なります。施術による事故への備えを考えるときは、「施術中の事故」と「施術の結果による事故」のそれぞれが補償されるかを確認しましょう。カラー剤のトラブルが起きたときの初期対応は、次の記事で紹介しています。
- PL保険は、製品やサービスの結果を原因とする事故の賠償責任に備える
- 業界団体の制度では、施術中の事故は補償され、仕事の結果による事故は補償されない例がある
- 髪型や毛染めの色などの仕上がり不良は対象外とされている
- 「施術中」と「施術の結果」のそれぞれが補償されるかを確認する
店舗の火災保険(店舗総合保険など)|建物・設備・什器の損害に備える
店舗の火災保険は、火災をはじめとする偶然な事故で、建物や設備・什器、商品などに生じた損害に備える保険です。
この記事では、店舗の建物や設備・什器の損害に備える火災保険を、便宜上「店舗の火災保険(店舗総合保険など)」と呼んでいます。損保協会は、企業向けの火災保険の補償範囲として、火災、落雷、破裂・爆発、風災・雹災・雪災、水ぬれ、盗難、水災などを挙げています。どこまでの事故が補償されるかは保険会社や商品によって異なるため、サロンでは、内装やセット椅子、シャンプー台、美容機器、店販の商品などが補償の対象に含まれているかを確認しましょう。
テナントとして物件を借りている場合は、自分が起こした火災などで借りている部屋に損害を与え、大家さんへの賠償責任を負うこともあります。こうした賠償責任に備える「借家人賠償責任」の補償は、一般に火災保険の特約として用意されています。物件の賃貸借契約で加入を求められることもあるため、契約書もあわせて確認しておきましょう。
地震への備えにも注意が必要です。損保協会によると、企業向けの火災保険では、地震・噴火・津波によって生じた損害は補償の対象外で、地震による損害に備えるには「地震危険補償特約」を付ける必要があります。また、個人向けの地震保険は居住用の建物と家財が対象のため、店舗や事務所などの事業用の物件では加入できません。
- 火災などの偶然な事故による建物・設備・什器・商品の損害に備える
- 美容機器や店販の商品が補償の対象に含まれるかを確認する
- 借りている物件への賠償には、借家人賠償責任の特約で備える
- 地震による損害は特約が必要で、個人向けの地震保険は店舗では使えない
休業補償の保険|店を開けられない期間の収入減に備える
休業補償の保険は、火災や水災などで店舗が被害を受けて営業できなくなった期間の利益の減少や、営業を続けるための費用に備えるものです。
損保協会は、休業補償保険について、火災や水災などの偶然の事故により建物や設備に損害が生じて休業した場合の利益損失や各種費用を補償すると説明しています。補償の内容として、収益の減少のほか、仮店舗を借りるなど営業を続けるための費用が挙げられており、食中毒や感染症による休業を補償する商品もあるとしています。家賃やスタッフの給与など、休業中も出ていく費用を考えると、店舗の火災保険とあわせて検討する価値があります。
名前が似ているものに、全美連の「休業補償共済制度」があります。これは、病気やけがで仕事ができなくなったときの所得を補償する制度で、店舗の災害による休業の損失を補償するものではありません。自分が働けなくなるリスクと、店舗が使えなくなるリスクは分けて考えましょう。台風や大雪などで臨時休業するときの判断基準は、次の記事で解説しています。
- 店舗の被害で休業した期間の利益の減少や、営業継続の費用に備える
- 仮店舗の費用など、営業を続けるための費用も対象になる場合がある
- 食中毒や感染症による休業を補償する商品もある
- 全美連の休業補償共済は、病気やけがで働けないときの所得補償
スタッフのけがへの備え|労災保険と特別加入
スタッフが仕事中や通勤中にけがをした場合に備えるのは労災保険で、パートやアルバイトを一人でも雇っていれば、原則として労働保険への加入が必要です。
厚生労働省によると、労働者(パートタイマー、アルバイトを含む)を一人でも雇用していれば、業種・規模を問わず労働保険の適用事業となります。労災保険は、労働者が業務や通勤が原因で負傷した場合などに、被災した労働者や遺族を保護するための給付を行う制度です。前述のとおり、賠償責任保険では従業員の業務中のけがが対象外とされている例があるため、スタッフのけがは労災保険で備えるのが基本です。
オーナー自身は労働者ではないため、原則として労災保険の対象になりません。ただし、労働者を雇う中小事業主などは、一定の要件のもとで労災保険に「特別加入」できる制度があり、手続きは労働保険事務組合を通じて行います。また、損保協会は、従業員が労働災害を被った場合に、企業が補償金を負担することで生じる損害に備える労働災害総合保険も紹介しています。
- パートやアルバイトを一人でも雇えば、労働保険の適用事業になる
- スタッフの業務中・通勤中のけがは労災保険で備える
- オーナーは、要件を満たせば労災保険に特別加入できる場合がある
- 企業の補償金の負担に備える労働災害総合保険もある
保険を選ぶときの確認ポイント|補償範囲と対象外を比べる
サロンの保険を選ぶときは、保険料の安さだけで決めず、何が補償され、何が補償されないのかを、自分のお店のリスクと照らし合わせて確認することが大切です。
確認しておきたい点は次のとおりです。
- 施術中の事故と、施術の結果による事故がそれぞれ補償されるか
- お客様の持ち物(衣服やバッグなど)の損害が対象になるか
- 美容機器や内装、店販の商品が火災保険の対象に含まれているか
- 地震や水災による損害が補償されるか、特約が必要か
- 1事故あたりの支払限度額や、自己負担額(免責金額)はいくらか
美容業では、業界団体を通じた制度も選択肢になります。全美連の美容所賠償責任補償制度は、美容所でお客様の身体や持ち物に損害を与えたときに補償が受けられる制度で、各都道府県の美容組合を通じて申し込む仕組みです。加入の対象や補償の金額は年度によって変わることがあるため、最新の内容は所属する組合に確認しましょう。複数の保険を検討する場合は、同じ条件で補償の範囲を並べて比べると、重なりや抜けに気づきやすくなります。
- 保険料だけでなく、補償の範囲と対象外を確認する
- 施術の結果による事故、お客様の持ち物、美容機器の扱いを確認する
- 支払限度額や自己負担額も比べる
- 業界団体の制度は、最新の内容を所属する組合に確認する
まとめ|リスクを分けて考え、補償の範囲を確かめて選ぶ
サロンの保険は、お客様への賠償、店舗の財産の損害、休業による収入の減少、スタッフのけがという4つのリスクに分けて考えると、必要な保険が見えてきます。施設賠償責任保険はお客様などへの賠償、店舗の火災保険は建物や設備の損害、休業補償の保険は休業中の利益の減少、労災保険はスタッフのけがに備えるものです。
とくに、施術の結果による事故や地震による損害は、補償されない契約もあります。開業前や契約の更新時には、約款や重要事項説明書で補償の範囲と対象外を確認し、分からない点は保険会社や代理店、所属する組合に相談しながら選びましょう。
よくある質問(FAQ)
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