美容室の創業計画書の書き方|公庫の記入例
美容室の創業計画書の書き方|日本政策金融公庫の様式に沿った記入のポイント

美容室の創業計画書の書き方|日本政策金融公庫の様式に沿った記入のポイント

更新日:2026年10月19日

美容室の開業資金を日本政策金融公庫(日本公庫)から借りる場合、申込みの際に創業計画書を提出するのが一般的です。ただ、初めて書く方にとっては、各欄に何をどこまで書けばよいのか分かりにくいものです。この記事では、日本公庫の創業計画書の様式と美容業の記入例をもとに、項目ごとの書き方のポイント、売上見込みの根拠の示し方、美容室が利用できる主な融資制度と相談窓口を解説します。

【大事なこと】
  • 日本公庫の創業計画書は、創業の動機から事業の見通しまで10の項目で構成されています。
  • 日本公庫は業種別の記入例を公開しており、その中に「美容業」の記入例もあります。
  • 売上見込みは「客単価×席数×回転数×営業日数」のように、計算の根拠が分かる形で書くことが大切です。
  • 美容室の開業では、新規開業・スタートアップ支援資金のほか、生活衛生関係の融資制度も対象になります。

創業計画書とは|日本政策金融公庫への融資申込みで使う書類

創業計画書は、これから始める事業の内容や資金計画、売上の見通しを1つの書類にまとめたもので、日本公庫の創業融資を申し込む際に提出します。

日本公庫は、創業計画書の様式(PDF・Excel)を「各種書式ダウンロード」のページで公開しています。様式の冒頭には、面談にかかる時間を短縮するために利用することや、この書類に代えて自分で作成した計画書を提出してもよいことが書かれています。つまり、公庫の様式を使わなければならないわけではありませんが、様式に沿って書けば、融資の担当者が確認したい項目をもれなく押さえやすくなります。

また、日本公庫は業種別の記入例も公開しており、その中に「美容業」の記入例があります。セット面の数や回転数を使った売上の計算方法、必要な設備の書き方などが具体的に示されているため、手元に置いて見比べながら書き進めるとよいでしょう。開業準備の情報をまとめた「創業の手引」や、美容業向けの「創業の手引+(美容業)」も公開されています。

【要点まとめ】
  • 創業計画書は事業内容・資金計画・売上の見通しをまとめた書類
  • 日本公庫のホームページで様式(PDF・Excel)を入手できる
  • 公庫の様式に代えて、自分で作成した計画書でもよいとされている
  • 美容業の記入例や創業の手引も公開されている

創業計画書の様式の全体像|10の記入項目

日本公庫の創業計画書は10の項目で構成されており、全体を通して「なぜこの事業を始め、どうやって売上を立て、借りたお金をどう返すのか」が伝わるようにまとめます。

様式の項目は次のとおりです。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 従業員
  5. 取引先・取引関係等
  6. 関連企業
  7. お借入の状況
  8. 必要な資金と調達方法
  9. 事業の見通し(月平均)
  10. 自由記述欄

このうち、とくに重要なのが「取扱商品・サービス」「必要な資金と調達方法」「事業の見通し」の3つです。日本公庫の「創業の手引」でも、ビジネスモデルや資金計画、収支計画を検討した内容を、これらの欄に反映させる流れで説明されています。従業員の欄は、3か月以上継続して雇用する予定の人数を書く欄です。自由記述欄には、アピールポイントや事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイスなどを書くことができます。

【要点まとめ】
  • 様式は創業の動機から自由記述欄まで10の項目で構成されている
  • とくに重要なのは、取扱商品・サービス、必要な資金、事業の見通しの3つ
  • 従業員の欄は3か月以上継続して雇用する予定の人数を書く
  • 自由記述欄にはアピールポイントや悩みも書ける

創業の動機・経営者の略歴等の書き方|経験と資格を具体的に

創業の動機と経営者の略歴等の欄では、美容室を開く理由と、それを実現できる経験や技能があることを具体的に伝えることがポイントです。

創業の動機の欄は、「どのような目的、動機から創業するのか」を書く欄です。「独立したかった」だけで終わらせず、これまでの経験の中で感じたお客様のニーズや、自分のお店で実現したいことを書くと、事業の方向性が伝わりやすくなります。

経営者の略歴等の欄について、様式には、勤務先名だけではなく担当業務や役職、身につけた技能等についても記載するよう書かれています。美容室であれば、勤務していたサロンでの担当業務、店長などの役職、得意な施術、指名のお客様の状況などを、年月とともに整理して書きましょう。取得資格の欄には、美容業の記入例のように、美容師免許や管理美容師の資格を取得年月とあわせて書きます。

許認可(許可・届出等)の欄も確認しておきたい項目です。美容師法では、美容所を開設しようとする者は、あらかじめ都道府県知事に届け出ることとされており、検査を受けて確認を受けた後でなければ美容所を使用してはならないと定められています。手続きの窓口は出店予定地の自治体で確認し、手続きの状況が分かるように記入しましょう。

【要点まとめ】
  • 創業の動機は、経験から感じたニーズや実現したいことを具体的に書く
  • 略歴は勤務先名だけでなく、担当業務・役職・身につけた技能まで書く
  • 取得資格には美容師免許や管理美容師を取得年月とあわせて書く
  • 美容所の開設届と検査確認の手続き状況を許認可の欄に記入する

取扱商品・サービスの書き方|強み・ターゲット・競合を整理する

取扱商品・サービスの欄では、提供するメニューと価格に加えて、お店の強み、誰に向けたお店なのか、周りにどのような競合があるのかを整理して書きます。

様式には、「セールスポイント(自社の強み)」「販売ターゲット・販売戦略(集客方法)」「競合・市場など自社を取り巻く状況」を書く欄があります。たとえば、セールスポイントには得意な施術やお店のコンセプト、販売ターゲットには想定するお客様の年代や生活スタイル、集客方法には開業前からの告知の方法などが考えられます。競合の欄には、出店予定地の周辺にある美容室の価格帯や特徴を調べたうえで、自分のお店との違いを書くと説得力が増します。

日本公庫の「創業の手引」では、自社・顧客・競合を分析する3C分析や、競合との位置関係を整理するポジショニングマップといった方法が紹介されています。また、「創業の手引+(美容業)」では、販売計画を立てる際に「だれが・だれに・何を・どのように・どこで・販売条件・時間」を検討するよう示されています。こうした整理をしておくと、面談で質問を受けたときにも、自分の言葉で説明しやすくなります。

【要点まとめ】
  • メニューと価格に加え、強み・ターゲット・集客方法・競合を書く
  • 競合は周辺の美容室を調べ、自分のお店との違いを示す
  • 3C分析やポジショニングマップで整理しておくと書きやすい
  • 整理した内容は面談での説明にも役立つ

必要な資金と調達方法の書き方|設備資金と運転資金を分ける

必要な資金の欄では、開業にかかるお金を設備資金と運転資金に分けて書き、それを自己資金や借入でどう用意するかを、合計が一致するようにまとめます。

美容業の記入例では、設備資金として「店舗内外装工事(設備工事含む)」「セット椅子」「シャンプー台」「什器・備品類」「保証金」などが、運転資金として「消耗品等仕入」「広告費等諸経費支払」「家賃等」が挙げられています。設備資金には見積書などを添付するよう注記されているため、内装工事や美容機器はあらかじめ見積もりを取っておきましょう。開業費用の項目の洗い出しには、次の記事も参考になります。

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調達方法には、自己資金、親族などからの借入、日本公庫からの借入などを書きます。日本公庫の「創業の手引」では、自己資金は着実に蓄積することが重要だとしたうえで、日本公庫の調査で、調達総額に占める自己資金の割合が平均22.9%だったことを紹介しています。これは平均の数値で、融資の条件を示したものではありません。

物件の契約時期にも注意が必要です。「創業の手引+(美容業)」では、資金調達の準備(とくに金融機関からの借入が決定していること)が整ってから物件の本契約を結ぶことをすすめています。物件選びの確認点は、次の記事で解説しています。

あわせて読みたい:
【要点まとめ】
  • 設備資金と運転資金に分け、調達方法との合計を一致させる
  • 設備資金には見積書などを添付する
  • 自己資金の割合の平均は22.9%で、融資の条件ではない
  • 物件の本契約は、借入が決定してから結ぶことがすすめられている

事業の見通しの書き方|売上と経費の根拠を数字で示す

事業の見通しの欄では、売上高や経費の金額だけでなく、その金額をどのように計算したのかという根拠を書くことが最も重要です。

様式には、売上高、売上原価(仕入高)、経費を計算した根拠を記入する欄があります。美容業の記入例では、売上高の根拠として「6,000円(平均単価)×3台×2回転×26日=93万円」と、平均単価、セット面の数、1日の回転数、営業日数をかけ合わせた計算式が示されています。ヘアケア商品の販売は別に月2万円と見込まれており、施術以外の売上を分けて書く方法も参考になります。また、軌道に乗った後の見通しでは、回転数が2回転から3回転に上がる根拠を「勤務時の経験から」と記載しています。

数字の根拠は、勤務していたサロンでの実績や、出店予定地の競合の価格帯など、説明できるものにしておきましょう。経費のうち人件費は、従業員数も分かるように書くよう注記されています。なお、様式では、個人営業の場合、事業主分は人件費に含めないとされています。

「創業の手引+(美容業)」では、創業当初と軌道に乗った後の両方の収支計画を立てることや、借入金の返済財源は「減価償却費+当期利益」で考えることが示されています。売上から経費を引いた利益で、毎月の返済ができるかを確認しておきましょう。損益分岐点の考え方は、次の記事で解説しています。

あわせて読みたい:
【要点まとめ】
  • 売上高・原価・経費は、金額とあわせて計算の根拠を書く
  • 美容業の記入例では「平均単価×台数×回転数×営業日数」で売上を計算している
  • 人件費は従業員数が分かるように書き、個人営業では事業主分は含めない
  • 返済財源は「減価償却費+当期利益」で考え、返済できるかを確認する

美容室が利用できる日本公庫の融資制度と相談窓口

美容室の開業では、日本公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」のほか、美容業を含む生活衛生関係の事業向けの融資制度も利用の対象になります。

新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内(いずれも据置期間5年以内)とされています。2025年3月に「新規開業資金」から名称が変わりました。なお、以前の新創業融資制度にあった「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という要件は、2024年の制度の見直しでなくなっています。

美容業は、生活衛生関係の融資制度(一般貸付)の対象業種にも含まれます。この制度では、原則として都道府県知事の「推せん書」が必要ですが、設備資金の申込金額が500万円以下の場合は不要とされています。振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員の場合は、組合の長に「振興事業に係る資金証明書」の交付を依頼する手続きになります。創業する方や創業後おおむね7年以内の方には、限度額が上乗せされる「生活衛生新企業育成資金」もあります。

どの制度が合うか迷う場合は、日本公庫の相談窓口を利用しましょう。創業ホットライン(事業資金相談ダイヤル0120-154-505で自動応答の「0」を選択、平日9時〜19時)のほか、全国の支店に予約不要の「創業サポートデスク」が設けられています。融資の条件は変わることがあるため、申込み前に日本公庫のホームページで最新の情報を確認してください。

【要点まとめ】
  • 新規開業・スタートアップ支援資金は、開業前から事業開始後おおむね7年以内が対象
  • 以前の新創業融資制度の自己資金要件は、2024年の見直しでなくなった
  • 美容業は生活衛生関係の融資制度の対象で、推せん書や資金証明書の手続きがある
  • 迷ったら事業資金相談ダイヤルや創業サポートデスクに相談する

まとめ|記入例を参考に、数字の根拠まで自分の言葉で書く

美容室の創業計画書は、日本公庫の様式と美容業の記入例を参考にしながら、創業の動機、経験と資格、お店の強みとターゲット、必要な資金と調達方法、事業の見通しを整理して書くことが大切です。とくに売上の見通しは、平均単価やセット面の数、回転数、営業日数といった根拠を示し、借入金を返済できる計画になっているかを確認しましょう。

書き終えたら、内容を自分の言葉で説明できるかを見直しておくと、面談にも落ち着いて臨めます。融資制度の条件は変わることがあるため、最新の情報を日本公庫のホームページや相談窓口で確認しながら準備を進めてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 創業計画書は日本公庫の様式で書かないといけませんか?
A. 必ずしも公庫の様式である必要はありません。様式の冒頭には、この書類に代えて自分で作成した計画書を提出してもよいと書かれています。ただし、公庫の様式は面談で確認したい項目がそろっているため、自作の計画書を使う場合も、様式の項目を参考にして内容にもれがないか確認しておくと安心です。
Q. 美容室の創業計画書の記入例はどこで見られますか?
A. 日本公庫のホームページで、業種別の創業計画書の記入例が公開されており、その中に「美容業」の記入例があります。平均単価や台数、回転数、営業日数を使った売上の計算式や、セット椅子・シャンプー台などの設備資金の書き方が示されているため、様式と見比べながら書き進めるのがおすすめです。
Q. 自己資金がなくても創業融資は受けられますか?
A. 以前の新創業融資制度にあった自己資金の要件は、2024年の見直しでなくなっています。ただし、融資を受けられるかどうかは事業計画などをもとに日本公庫が判断します。公庫の創業の手引でも、自己資金は着実に蓄積することが重要とされているため、できる範囲で準備し、計画書に調達方法を書いておきましょう。
Q. 生活衛生関係の融資で美容室を開業する場合、推せん書は必要ですか?
A. 生活衛生関係の融資制度を使う場合、組合員以外は原則として都道府県知事の推せん書が必要ですが、設備資金の申込金額が500万円以下なら不要です。振興計画の認定を受けた組合の組合員は、組合の長に振興事業に係る資金証明書の交付を依頼します。どの制度で申し込むかによって必要な手続きが変わるため、事前に窓口で確認しましょう。

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