社員旅行・食事補助を福利厚生費にするには|小さなサロンの福利厚生の考え方
更新日:2026年10月19日
スタッフへの感謝を込めて社員旅行を企画したり、まかないやお弁当代を補助したりしたいと考えるオーナーもいるでしょう。ただ、こうした費用は、条件を満たさないとスタッフへの給与として扱われ、所得税の課税対象になることがあります。この記事では、社員旅行や食事補助を福利厚生費として扱うための要件を、国税庁の情報をもとに解説します。2026年4月から引き上げられた食事補助の非課税限度額や、記念品・お祝い金の扱いも紹介します。
- 社員旅行は、旅行期間が4泊5日以内で参加者が全体の50%以上などの要件を満たせば、原則として給与として課税しなくてよいとされています(旅行の内容や負担額によっては課税される場合もあります)。
- 食事補助は、スタッフが食事の価額の半分以上を負担し、お店の負担額が月7,500円(税抜)以下であれば非課税です。
- 食事補助の非課税限度額は、2026年4月1日以後に支給する食事から、月3,500円から7,500円に引き上げられました。
- 行事に参加しなかったスタッフに現金を渡すと、その金額は給与として課税されます。
福利厚生費とは|スタッフの給与として課税されないかがポイント
福利厚生費は、従業員のために支出する慰安や健康などの費用で、社員旅行や食事補助を福利厚生費として扱うには、スタッフの給与として課税されない要件を満たしているかがポイントになります。
国税庁の収支内訳書の書き方では、福利厚生費は「従業員の慰安、医療、衛生、保健などのために事業主が支出した費用」と説明されています(このほか、事業主が負担する従業員の社会保険料なども含まれます)。ただし、お店がスタッフのために費用を出しても、その内容によっては、スタッフが経済的な利益を受けたものとして給与扱いになり、所得税の課税対象になることがあります。給与として扱われる場合は、お店がその分の源泉徴収を行う必要が出てきます。
国税庁は、社員旅行や食事の支給などについて、給与として課税しなくてよい要件をそれぞれ示しています。この記事では、その要件をサロンでよくある場面に当てはめて紹介します。福利厚生の充実は、スタッフにとって働きやすさを感じるきっかけにもなります。採用の場面での伝え方は、次の記事も参考にしてください。
あわせて読みたい:- 福利厚生費は、従業員の慰安や健康などのために支出する費用
- 内容によっては、スタッフへの給与として課税されることがある
- 給与扱いになると、お店が源泉徴収を行う必要がある
- 国税庁が示す、給与として課税しなくてよい要件を確認する
社員旅行を福利厚生費にする要件|4泊5日以内・参加者50%以上
社員旅行の費用を給与として課税せずに扱うには、旅行期間が4泊5日以内であることと、参加者が全体の50%以上であることの両方を満たす必要があります。
国税庁は、従業員レクリエーション旅行の費用が給与として課税されるかどうかは、旅行の目的・規模・行程や、会社と参加者の負担額などを総合的に勘案して判定するとしています。そのうえで、社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行で、少額不追求の趣旨を逸脱しないものであり、かつ次の2つの要件をいずれも満たすものは、原則として給与として課税しなくてよいとしています。
- 旅行の期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合は、外国での滞在日数が4泊5日以内)
- 旅行に参加した人数が、全体の人数の50%以上であること(店舗ごとに行う場合は、その店舗の人数の50%以上)
たとえば、2店舗を経営していて店舗ごとに旅行を行う場合は、会社全体ではなく、それぞれの店舗で参加者が50%以上かどうかを判定します。また、役員だけで行う旅行、取引先の接待のための旅行、実質的に私的な旅行と認められるもの、金銭との選択が可能な旅行は、この扱いの対象になりません。
注意したいのは、自分の都合で旅行に参加しなかったスタッフに現金を渡す場合です。国税庁は、この場合、参加者と不参加者の全員に、その金額に相当する給与の支給があったものとするとしています。不参加のスタッフへの配慮のつもりが、参加したスタッフを含めて全員の課税につながるため、注意しましょう。
- 旅行期間4泊5日以内と、参加者50%以上の両方を満たす
- 店舗ごとに行う旅行は、店舗ごとに参加割合を判定する
- 役員だけの旅行や、金銭との選択ができる旅行は対象外
- 不参加者に現金を渡すと、参加者を含めて全員が課税される
食事補助の非課税要件|2026年4月から月7,500円に引き上げ
スタッフへの食事補助を給与として課税せずに扱うには、スタッフが食事の価額の半分以上を負担し、お店の負担額が1か月あたり7,500円(税抜)以下であることの両方を満たす必要があります。
国税庁によると、役員や使用人に支給する食事は、次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。
- 役員や使用人が、食事の価額の半分以上を負担していること
- 食事の価額から本人の負担額を差し引いた金額が、1か月あたり7,500円(税抜)以下であること
この7,500円という限度額は、所得税基本通達の改正により、2026年(令和8年)4月1日以後に支給する食事から、月額3,500円から引き上げられたものです。たとえば、1食500円(税抜)のお弁当を月20日支給し、スタッフが1食250円を負担する場合、食事の価額は月1万円、スタッフの負担は5,000円で半分以上、お店の負担も5,000円で7,500円以下となり、要件を満たします。要件を満たさない場合は、食事の価額からスタッフの負担額を差し引いた金額の全額が、給与として課税されます。
なお、食事代を現金で渡す場合は、原則として全額が給与として課税されます。例外として、深夜勤務をする人に、夜食を支給できないために夜食の代わりとして支給する現金は、1食当たり650円(税抜)以下であれば課税されません。また、残業や宿日直をした人に支給する食事は、無料で支給しても課税しなくてよいとされています。
- スタッフが食事の価額の半分以上を負担することが必要
- お店の負担額は、1か月7,500円(税抜)以下であることが必要
- 限度額は、2026年4月1日以後に支給する食事から7,500円に引き上げられた
- 食事代を現金で渡すと、原則として全額が課税される
忘年会・新年会など社内行事の費用の考え方
スタッフ全員を対象にした社内の会食などの行事は、社会通念上一般的に行われている範囲であれば、参加したスタッフの給与として課税しなくてよいとされています。
国税庁の所得税基本通達では、使用者が役員や使用人のレクリエーションのために、社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会などの行事の費用を負担することで受ける経済的利益については、課税しなくて差し支えないとしています。ただし、役員だけを対象とする場合や、行事に参加しなかった人(業務の必要で参加できなかった人を除く)に参加に代えて金銭を支給する場合は除かれます。忘年会や新年会のようにスタッフ全員が参加できる会食も、この考え方に沿って判断すると考えられます。
ここでも、行事に参加しなかったスタッフに金銭を渡す場合は注意が必要です。通達では、行事に参加しなかった人に支給する金銭は、給与として課税することに留意するとされており、仕事の都合で参加できなかった人に支給する金銭も含まれます。また、「社会通念上一般的」といえるかどうかは、行事の内容や費用の水準によって判断が分かれることもあります。高額な会食や、一部のスタッフだけを対象にした会食を予定している場合は、事前に税理士に確認しておくと安心です。
- 社会通念上一般的な会食・旅行などの行事は、課税しなくてよいとされている
- 役員だけが対象の場合や、不参加者に参加に代えて金銭を渡す場合は除かれる
- 不参加者に支給する金銭は、仕事の都合で参加できなかった人の分も課税される
- 高額な会食や一部だけを対象にする場合は、税理士に確認する
記念品・お祝い金の扱い|永年勤続表彰や結婚祝い
永年勤続の記念品や創業記念品、結婚や出産のお祝い金は、一定の要件や社会通念上相当な範囲であれば、給与として課税しなくてよいとされています。
国税庁は、創業記念品については、記念品としてふさわしいものであること、処分見込価額による評価額が1万円(税抜)以下であること、一定期間ごとに支給する場合はおおむね5年以上の間隔があることを要件としています。永年勤続表彰の記念品などについては、社会通念上相当な金額であること、勤続年数がおおむね10年以上の人が対象であること、2回以上表彰する場合はおおむね5年以上の間隔があることが要件です。ただし、記念品の代わりに現金や商品券を渡す場合はその全額(商品券は券面額)が、本人が自由に品物を選べる場合はその記念品の価額が、給与として課税されます。
結婚や出産などのお祝い金品は、所得税基本通達で給与等とするとしたうえで、その金額が受ける人の地位などに照らして社会通念上相当と認められるものは、課税しなくて差し支えないとされています。お祝い金の金額や支給の基準をあらかじめ決めておくと、スタッフによって差が出ず、税務上の説明もしやすくなります。
- 創業記念品は、評価額1万円(税抜)以下などの要件がある
- 永年勤続表彰は、おおむね10年以上の勤続が対象などの要件がある
- 現金・商品券や、自由に選べる記念品は給与として課税される
- 結婚・出産のお祝い金は、社会通念上相当な範囲なら課税しなくてよい
個人事業主のサロンで気をつけたいこと|事業主本人の費用との区別
個人事業主のサロンでは、スタッフのための福利厚生の費用と、事業主本人の生活のための費用をきちんと区別して記録することが大切です。
前述のとおり、国税庁の収支内訳書の書き方では、福利厚生費は「従業員の慰安、医療、衛生、保健などのために事業主が支出した費用」とされています。同じ書き方の中で、衣料費や食費などの家事上の費用は必要経費にならないとされています。また、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務を行ううえで直接必要であったことが明らかに区分できる部分に限られます。
たとえば、スタッフと一緒に参加する社員旅行や会食のように、事業主本人も関わる支出は、どこまでを経費とするかで迷いやすいところです。領収書には参加者や目的をメモしておき、判断に迷うものは税理士に確認しましょう。経費の考え方や帳簿の付け方は、次の記事で解説しています。
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- 福利厚生費は、従業員の慰安や健康などのための費用
- 衣料費や食費などの家事上の費用は必要経費にならない
- 家事関連費は、業務に直接必要な部分が明らかに区分できる場合に限られる
- 領収書に参加者や目的をメモし、迷うものは税理士に確認する
まとめ|要件を確認してから福利厚生を企画する
社員旅行や食事補助を福利厚生費として扱うには、国税庁が示す要件を満たすことが前提です。社員旅行は4泊5日以内で参加者50%以上、食事補助はスタッフが半分以上を負担し、お店の負担が月7,500円(税抜)以下であることが要件で、食事補助の限度額は2026年4月1日以後に支給する食事から引き上げられています。
行事に参加しなかったスタッフへの現金の支給や、現金・商品券での記念品は課税の対象になるなど、配慮のつもりの対応が課税につながることもあります。福利厚生を企画するときは、事前に要件を確認し、判断に迷う点は税理士に相談しながら進めましょう。
よくある質問(FAQ)
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