サロンのお客様用Wi-Fi|設置の手順と、店舗用の回線と分けたほうがいい理由
更新日:2026年10月12日
カラーやパーマの待ち時間に「Wi-Fiはありますか」と聞かれることは、サロンでは珍しくありません。お客様用のWi-Fiは手軽に用意できるサービスですが、設定を間違えると、お店の業務用の端末にまで影響が及ぶおそれがあります。この記事では、総務省が公衆Wi-Fiの提供者向けに示している手引きをもとに、お客様用Wi-Fiを店舗用の回線と分けたほうがいい理由、設置の手順、パスワードの伝え方、運用で気をつけたいこと、お客様への案内の仕方を解説します。
- 総務省は、業務用のネットワークを使って公衆Wi-Fiを提供することは避け、業務用とWi-Fi提供用のネットワークを分離するよう求めています。
- 暗号化はWPA2またはWPA3を設定し、利用者の端末どうしの通信を遮断する機能も活用します。
- 暗号化キー(パスワード)を誰もが見られる場所に掲示することは望ましくないとされています。
- 本来の業務に付随して、または無料でWi-Fiを提供する場合は、電気通信事業法の届出が不要な例として総務省の手引きに挙げられています。
お客様用Wi-Fiを用意する前に知っておきたいこと
お客様用Wi-Fiは、待ち時間を快適に過ごしてもらうためのサービスですが、提供する側にもセキュリティを守る責任があることを前提に準備することが大切です。
総務省は、公衆Wi-Fiを提供する事業者向けに「公衆Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き」(令和7年2月版)を公開しています。この手引きは、飲食店や小売店などをはじめ、公衆Wi-Fiを提供する幅広い方々を対象にしており、サロンがお客様にWi-Fiを提供する場合にも参考になります。
あわせて気になるのが、届出が必要かどうかです。手引きでは、公衆Wi-Fiを事業として提供する場合は原則として電気通信事業法に基づく届出が必要としたうえで、本来の業務に付随して提供する場合や、対価を得ずに提供する場合は届出が不要な例として挙げています。ホテルが宿泊サービスの一環として宿泊者に提供するケースや、商店街が集客のために無料で提供するケースが例として示されています。サロンが来店したお客様向けに無料で提供する場合も、こうした例に近いと考えられますが、有料で提供する場合などは扱いが異なるため注意が必要です。
お客様用Wi-Fiを用意する目的は、あくまで待ち時間を快適に過ごしてもらうことです。安全に使ってもらうための設定と、お店の業務を守るための設定の両方をそろえることで、安心して提供できるサービスになります。
あわせて読みたい:- 総務省の「公衆Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き」(令和7年2月版)が参考になる
- 本来の業務に付随して、または無料で提供する場合は届出不要の例として挙げられている
- 有料で提供する場合などは扱いが異なるため注意する
- お客様の快適さとお店の業務を守る設定の両方をそろえる
店舗用の回線と分けたほうがいい理由
お客様用のWi-Fiは、お店が業務に使っているネットワークとは分けて用意するのが基本です。総務省の手引きも、業務用ネットワークでの公衆Wi-Fiの提供は避けるよう求めています。
手引きには、「自社・自組織で業務用に利用しているネットワークを使って公衆Wi-Fiを提供することは避けましょう。業務用のパソコンなどに公衆Wi-Fiからアクセスされるなど、不正アクセスの被害を受けるおそれがあります。」と書かれています。そのうえで、業務用のネットワークとWi-Fi提供用のネットワークを分離するよう求めています。
サロンでは、予約管理や会計に使うパソコンやタブレット、プリンターなどが、お店のネットワークにつながっている場合があります。お客様の端末が同じネットワークにつながると、こうした業務用の機器が見える状態になったり、万一ウイルスに感染した端末が接続されたときに影響を受けたりするおそれがあります。お客様の情報を扱うお店だからこそ、入り口を分けておくことが大切です。
分け方には、回線や機器を別々に用意する物理的な分離と、1台の機器の中でネットワークを分けるVLANなどの論理的な分離があると手引きでは紹介されています。機器によっては、お客様用のネットワーク(ゲスト用ネットワーク)を別に作れる機能を備えているものもあります。自店の機器でどちらの方法がとれるか、説明書などで確認してみましょう。
あわせて読みたい:- 業務用のネットワークを使って公衆Wi-Fiを提供することは避ける
- 業務用の端末に不正アクセスされるおそれがあるためである
- 物理的な分離と、VLANなどによる論理的な分離がある
- ゲスト用ネットワークを作れる機器かどうかを確認する
お客様用Wi-Fiの設置の手順
お客様用Wi-Fiは、①機器と回線の準備、②ネットワークの分離、③暗号化の設定、④端末どうしの通信の遮断、⑤管理用の設定の見直し、という順番で進めると、必要な設定を漏らさずに済みます。
まず、お客様用のWi-Fiに使う機器と回線を決めます。業務用と別の機器を用意するか、ゲスト用ネットワークの機能を使うかを選び、お客様用のネットワーク名(SSID)を業務用とは別に設定します。名前を見ただけでお客様用と分かるようにしておくと、案内もしやすくなります。
次に、暗号化を設定します。手引きでは、暗号化を行う場合はWPA2またはWPA3による暗号化を設定するよう求めています。手引きは、WEP方式は短時間で解読する方法が知られているため、使用を控えるよう求めています。
さらに、利用者の端末どうしが通信できないようにする機能を有効にします。手引きによると、一般的なWi-Fiルーターには相互通信を禁止する機能が搭載されていて、「プライバシーセパレータ」「クライアントアイソレーション」などの名称で呼ばれています。最後に、機器の管理画面に入るためのパスワードを初期設定から変更し、ファームウェアを最新の状態に更新します。手引きは、初期パスワードは同じ機種で共通だったり推測しやすかったりする場合があるため、速やかに変更するよう求めています。
- お客様用のネットワーク名(SSID)を業務用とは別に設定する
- 暗号化はWPA2またはWPA3を設定し、WEP方式は使わない
- 利用者の端末どうしの通信を遮断する機能を有効にする
- 管理画面のパスワードを初期設定から変更し、ファームウェアを更新する
パスワードの伝え方|掲示は避けて個別に案内する
お客様用Wi-Fiのパスワード(暗号化キー)は、店内に貼り出すのではなく、利用したいお客様に個別に伝える方法が望ましいとされています。
総務省の手引きには、「暗号化キーを掲示して誰もが知りうる状態においてしまうことは望ましくありません。」とあります。対応の例として、暗号化キーを記した用紙を個別に配ることや、定期的にキーを変更することが挙げられています。
サロンであれば、パスワードを書いた小さなカードを用意し、希望するお客様に施術の席で手渡す方法が考えられます。受付で口頭で伝える場合も、ほかのお客様に聞こえにくいよう配慮するとよいでしょう。カードは使い終わったら回収するか、パスワードを定期的に変えるルールにしておくと安心です。
パスワードを変えたときは、スタッフにも忘れずに共有します。新しいパスワードを伝えるカードを作り直し、古いカードが店内に残っていないかを確認しましょう。変更の時期を「毎月1日」などと決めておくと、うっかり忘れることを防げます。
- 暗号化キーを誰もが見られる場所に掲示するのは望ましくない
- パスワードを書いたカードを、希望するお客様に個別に渡す
- 口頭で伝えるときは、ほかのお客様に聞こえにくいよう配慮する
- パスワードを定期的に変え、スタッフにも共有する
運用で気をつけたいこと|更新・買い替え・記録の扱い
お客様用Wi-Fiは設置して終わりではなく、機器の更新や買い替え、記録の扱いなど、続けて管理することが大切です。
総務省の手引きは、Wi-Fiルーターのファームウェアを最新の状態にアップデートすることや、サポート期限が切れている場合は買い替えることを求めています。警視庁も家庭用ルーターについて、初期設定の単純なIDやパスワードを変更すること、常に最新のファームウェアを使うこと、サポートが終了したルーターは買い替えを検討することを呼びかけています。開業時に設置したルーターを何年も使い続けている場合は、メーカーのサポート状況を一度確認してみましょう。
アクセスの記録(ログ)の扱いにも注意が必要です。手引きでは、アクセスログは高いプライバシー性を持つため、目的に照らして必要最小限の範囲での記録にとどめるよう求めています。また、利用者の確認や認証の仕組みを導入すれば、誰が使っていたかを調査でき、不正利用の防止につながるとしています。メールアドレスなどで認証する仕組みを使う場合は、取得した情報の扱いをお客様に説明できるようにしておきましょう。
こうした管理を担当する人を決め、ファームウェアの確認やパスワードの変更を月に1度の作業として予定に入れておくと、管理が後回しになりにくくなります。
- ファームウェアを最新に保ち、サポート期限切れの機器は買い替える
- アクセスログの記録は、目的に照らして必要最小限にとどめる
- 認証の仕組みを使う場合は、取得した情報の扱いを説明できるようにする
- 管理の担当者を決め、定期的な作業として予定に入れる
お客様への案内|安全に使ってもらうための伝え方
お客様用Wi-Fiを案内するときは、接続の方法とあわせて、安全に使うための注意点を一言添えると、お客様に安心して使ってもらえます。
総務省は、利用者向けにも「公衆Wi-Fiの安全な利用に向けて 簡易マニュアル Wi-Fi利用者向け」(令和7年2月版)を公開しています。このマニュアルでは、接続しようとするWi-FiのSSIDが提供者の案内しているものと同じかを確認すること、URLが「https://」で始まっているかやブラウザに鍵マークが表示されているかを確認すること、などが挙げられています。
サロンの案内カードには、お客様用のネットワーク名とパスワードに加えて、「接続先が当店のネットワーク名と同じかご確認ください」と書いておくとよいでしょう。偽のWi-Fiに誤って接続してしまうことを防ぐ手助けになります。
また、Wi-Fiの利用は任意であること、通信の安全はお客様ご自身でも気をつけていただきたいことを、やわらかい言葉で添えておくと誤解が生まれにくくなります。施術中の雑誌の代わりにタブレットを用意している場合は、そのタブレットもお客様用のネットワークにつなぎ、業務用の端末とは分けておきましょう。
あわせて読みたい:- 総務省の利用者向けマニュアルの注意点を案内に活かす
- 案内カードに、当店のネットワーク名と同じか確認するよう書いておく
- 利用は任意で、通信の安全にはお客様自身も気をつけてほしいことを添える
- お客様用のタブレットも、業務用の端末とは別のネットワークにつなぐ
まとめ:お客様の快適さと、お店の情報の両方を守る
サロンのお客様用Wi-Fiは、①総務省の提供者向けの手引きを参考にし、②業務用のネットワークと分けて用意し、③WPA2またはWPA3の暗号化と端末どうしの通信の遮断を設定し、④パスワードは掲示せず個別に伝え、⑤機器の更新や記録の扱いを続けて管理し、⑥お客様にも安全に使うための注意点を案内する、という流れで準備します。
まずは、今お店で使っているWi-Fiが、業務用の端末とお客様の端末で同じネットワークになっていないかを確認してみてください。同じになっている場合は、ゲスト用ネットワークの機能が使えるかを調べ、分けるところから始めましょう。
よくある質問(FAQ)
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