スタッフ10人未満のサロンの就業規則|作成義務の有無と作っておくメリット
更新日:2026年10月19日
スタッフが数名のサロンでは、「就業規則はうちには関係ない」と考えているオーナーもいるかもしれません。たしかに、労働基準法で就業規則の作成と届出が義務付けられているのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です。ただ、10人未満でも作っておくことで、ルールの共有やトラブルの防止に役立つ場面があります。この記事では、10人未満のサロンの就業規則について、作成義務の考え方、人数の数え方、作るメリットと作り方を解説します。
- 就業規則の作成・届出の義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です。
- 人数は店舗などの事業場ごとに数え、パートやアルバイトも含みます。
- 10人未満でも、石川労働局や広島労働局などは就業規則を作成することが望ましいとしています。
- 10人未満でも、雇い入れの際の労働条件の明示は必要です。
就業規則の作成義務は「常時10人以上」|10人未満のサロンに義務はない
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を義務付けており、10人未満のサロンには法律上の作成義務はありません。
労働基準法第89条は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と定めています。届出先は、所轄の労働基準監督署長です。内容を変更した場合も、同じように届け出る必要があります。
「常時」とは、いつも10人以上いる状態のことを指します。広島労働局は、時として10人未満になることがあっても、常態として10人以上であれば就業規則を作成しなければならないとしています。反対に、石川労働局は、有期の労働者を一時的に雇って10人を超えても、契約期間が満了すれば10人未満に戻るような場合は該当しないと説明しています。繁忙期に有期契約のスタッフを一時的に雇い、契約満了で10人未満に戻るような場合は、これに当たると考えられます。
スタッフが増えて常時10人以上になった時点で、作成と届出の義務が生じます。今は10人未満でも、増員の予定があるなら早めに準備しておくと慌てずにすみます。
- 作成・届出の義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する場合
- 届出先は所轄の労働基準監督署長で、変更時も届け出る
- 時として10人未満になっても、常態として10人以上なら義務がある
- 一時的に10人を超えるだけなら該当しないとされている
「常時10人」の数え方|店舗ごとに数え、パートも含める
常時10人以上かどうかは、会社全体ではなく店舗などの事業場ごとに数え、正社員だけでなくパートやアルバイトも人数に含めます。
石川労働局のFAQでは、就業規則の作成・届出義務は「事業場」単位で考え、経営上一体をなす支店などを総合した全事業を指すのではないと説明しています。また、場所的に独立した営業所は原則として事業場とみなされるため、2店舗を経営していて合計で10人以上いても、それぞれの店舗が常時10人未満であれば、その店舗単位では作成・届出の義務はないとされています。
また、広島労働局は、ここでいう「労働者」には、いわゆる正規社員のほか、パートタイム労働者や臨時のアルバイトなどすべての者を含むとしています。正社員が5人でも、パートスタッフが5人いれば合計10人になるため、数え漏れがないように注意しましょう。
派遣スタッフや業務委託の方がいる場合など、人数の数え方に迷うときは、所轄の労働基準監督署に相談すると確実です。
- 人数は会社全体ではなく、店舗などの事業場ごとに数える
- 各店舗が10人未満なら、その店舗単位では作成・届出の義務はない
- パートやアルバイトも人数に含める
- 数え方に迷ったら労働基準監督署に相談する
10人未満でも就業規則を作るメリット
10人未満のサロンでも、就業規則を作っておくと、働き方のルールをスタッフと共有でき、懲戒や助成金の申請といった場面で備えになります。
石川労働局や広島労働局、兵庫労働局は、労働者が10人未満の事業場でも就業規則を作成することが望ましいとしています。小さなサロンでは、勤務時間や休みの取り方、遅刻や欠勤の連絡方法などがオーナーとスタッフの口約束になりがちです。文書にしておけば、新しく入ったスタッフにも同じルールを伝えられ、人によって説明が違うといった行き違いを防げます。
懲戒の場面でも違いが出ます。厚生労働省のサイトで紹介されている最高裁判所の判例(フジ興産事件)の要旨では、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則で懲戒の種別と事由を定めておくことが必要とされています。また、就業規則が拘束力を持つためには、その内容を労働者に周知する手続きが必要だとされています。
助成金を申請する場面でも、就業規則が関わることがあります。たとえば、有期雇用のスタッフを正社員に転換した場合のキャリアアップ助成金(正社員化コース)では、転換の制度を就業規則などに規定していることが要件の一つとされています。そのほかにも要件があるため、申請を考える場合は厚生労働省の案内で確認しましょう。
- 石川・広島・兵庫の各労働局は、10人未満でも作成が望ましいとしている
- 文書にすることで、スタッフ全員に同じルールを伝えられる
- 懲戒には、あらかじめ就業規則で種別と事由を定めておく必要がある
- キャリアアップ助成金では、転換制度の規定が要件の一つになる
10人未満でも必要なこと|雇い入れ時の労働条件の明示
就業規則の作成義務がない10人未満のサロンでも、スタッフを雇い入れるときには、賃金や労働時間などの労働条件を書面などで明示する必要があります。
長野労働局の労働条件ハンドブックでも、10人未満でも「労働条件通知書」の作成・交付は必要だと説明されています。就業規則を作らない場合は、雇用契約書や労働条件通知書が、そのスタッフとのルールを示す主な書類になります。
ここで就業規則があると、全員に共通するルールは就業規則にまとめ、一人ひとりで異なる条件(勤務日数や時給など)は労働条件通知書に書く、というように役割を分けられます。労働契約法第7条では、労働契約を結ぶ際に、合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるとされています。ただし、就業規則と異なる労働条件を個別に合意していた部分はその合意によります(就業規則の基準を下回る合意は、同法第12条により無効とされます)。雇用契約書の作り方は、次の記事で解説しています。
あわせて読みたい:- 10人未満でも、労働条件通知書の作成・交付は必要
- 就業規則がない場合は、雇用契約書や労働条件通知書が主なルールになる
- 共通ルールは就業規則、個別の条件は労働条件通知書と分けられる
- 個別の合意が優先されるが、就業規則の基準を下回る合意は無効
就業規則に書く内容|必ず書く事項と、定める場合に書く事項
就業規則には、労働時間や賃金、退職など必ず書く事項と、退職手当や表彰・制裁のように、お店で定めをする場合に書く事項があります。
労働基準法第89条で、就業規則に必ず記載する事項とされているのは、次の3つです。
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇など
- 賃金の決定、計算・支払の方法、締切り・支払の時期、昇給
- 退職に関すること(解雇の事由を含む)
このほか、退職手当、賞与などの臨時の賃金、食費や作業用品などの負担、安全・衛生、表彰・制裁などは、定めをする場合に記載する事項とされています。解説書などでは前者を「絶対的必要記載事項」、後者を「相対的必要記載事項」と呼ぶことがありますが、これは条文上の言葉ではなく、説明のための分類です。
サロンで考えておきたいのは、シフト制での休日の決め方や、遅刻・欠勤の連絡方法、スタッフ全員に適用するSNSの運用ルールなどです。第89条では、事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合は、その事項も記載することとされています。シフトの組み方や、SNSのルールの作り方は、次の記事も参考にしてください。
あわせて読みたい:
あわせて読みたい:
- 労働時間・休日、賃金、退職の3つは必ず記載する
- 退職手当、賞与、表彰・制裁などは、定めをする場合に記載する
- 「絶対的」「相対的」は説明のための分類で、条文上の言葉ではない
- 全員に適用するルールを定める場合は、その事項も記載する
就業規則の作り方と周知|モデル就業規則を土台にする
就業規則を作るときは、厚生労働省のモデル就業規則を土台にしてお店の実態に合わせて書き換え、完成したらスタッフに周知することが大切です。
厚生労働省は、就業規則の作成例として「モデル就業規則」を公開しており、2025年(令和7年)12月版が掲載されています。条文ごとに解説が付いているため、内容を理解しながらお店に合わせて書き換えられます。ただし、モデルの内容をそのまま使うと、実際の働き方と合わない部分が出ることもあります。勤務時間や休日、賃金の締め日など、今の運用と一つひとつ照らし合わせて確認しましょう。
作成したら、スタッフに周知します。労働基準法第106条では、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することなどの方法で、労働者に周知させなければならないとしています。前述のとおり、周知は就業規則が効力を持つためにも欠かせません。なお、労働基準法第90条では、就業規則の作成・変更の際に、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴くこととされ、届け出る際にはその意見を記した書面を添付します。スタッフの意見を聞きながら作ることで、納得感のあるルールにもなるでしょう。内容に不安がある場合は、社会保険労務士に相談するのも一つの方法です。
- 厚生労働省のモデル就業規則(2025年12月版)を土台にする
- モデルの内容は、今の働き方と照らし合わせて書き換える
- 掲示・備え付け・書面の交付などの方法でスタッフに周知する
- 作成・変更の際は、過半数代表者などの意見を聴く
まとめ|10人未満でも「ルールを文書にする」ことに意味がある
就業規則の作成・届出の義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場で、人数は店舗ごとに、パートやアルバイトも含めて数えます。10人未満のサロンには法律上の作成義務はありませんが、石川労働局や広島労働局などは作成が望ましいとしており、ルールの共有や懲戒、助成金の申請といった場面で就業規則が役立ちます。
まずは雇い入れ時の労働条件の明示を確実に行い、そのうえで、モデル就業規則を参考にお店のルールを文書にしてみましょう。作った就業規則はスタッフに周知し、働き方が変わったら見直すことも忘れないようにしてください。
よくある質問(FAQ)
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