キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは|アシスタントやパートを正社員にするサロンが確認すること
更新日:2026年10月5日
契約社員やパートで迎えたアシスタントが育ってきたので、正社員として長く働いてほしい。そう考えたときに検討したいのが、厚生労働省の「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」です。有期雇用などのスタッフを正社員に転換した事業主に助成される制度ですが、転換の前に済ませておく手続きがあり、順番を誤ると対象外になります。この記事では、令和8年度の支給額と対象者、事前準備、サロンで気をつけたい点を整理します。
- キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期雇用・無期雇用のスタッフを正社員に転換した事業主に助成する厚生労働省の制度です。
- 中小企業が有期雇用から正社員に転換した場合、重点支援対象者は1人80万円(40万円×2期)、それ以外は40万円(1期)とされています。
- 転換の前日までにキャリアアップ計画を労働局へ提出し、就業規則などに転換制度を定めておく必要があります。
- 転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間より3%以上増やすことが要件の一つです。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは
正社員化コースは、有期雇用や無期雇用で働くスタッフを正社員(正規雇用労働者)に転換した事業主を支援する制度です。サロンでは、アシスタントや受付スタッフを正社員に迎え直す場面が想定されます。
キャリアアップ助成金には複数のコースがあり、正社員化コースはその一つです。厚生労働省のパンフレット(令和8年4月8日現在)では、対象となるのは「賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上受けて雇用される」有期または無期の雇用労働者とされています。
つまり、パートや契約社員として一定期間働いてきたスタッフを、就業規則にもとづいて正社員に転換することが前提です。業務委託契約で働く方は雇用されている労働者ではないため、この制度の対象にはならないと考えられます。
また、正社員として雇うことを約束して雇い入れた人や、過去3年以内に同じ事業主のもとで正社員だった人、事業主や取締役の3親等以内の親族などは、対象外とされています。家族経営のサロンでは、転換を考えているスタッフが対象外の範囲に入っていないかを先に確認しておくと安心です。
- 有期・無期雇用のスタッフを正社員に転換した事業主への助成制度
- 対象は正社員と異なる雇用区分で通算6か月以上雇用されている人
- 業務委託契約の方は雇用労働者ではないため対象外と考えられる
- 事業主の3親等以内の親族などは対象外とされている
令和8年度の支給額|重点支援対象者かどうかで変わる
支給額は、転換前の雇用形態と、そのスタッフが「重点支援対象者」にあたるかどうかで決まります。中小企業の場合、有期雇用から正社員への転換で最大80万円とされています。
パンフレットでは、中小企業が有期雇用から正社員に転換した場合、重点支援対象者は80万円(40万円×2期)、それ以外は40万円(40万円×1期)とされています。無期雇用から正社員への転換では、それぞれ40万円(20万円×2期)、20万円(20万円×1期)です。重点支援対象者は、2回に分けて支給される仕組みです。
重点支援対象者は、主に次のいずれかにあたる人です。雇入れから3年以上の有期雇用労働者、雇入れから3年未満で「過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下」かつ「過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない」有期雇用労働者、派遣労働者や母子家庭の母などです。なお、パンフレットでは令和8年4月1日に雇用された新規学卒者について、令和9年3月31日まで支給対象外とされています。今春入社したアシスタントの転換を考えている場合は、この点も確認しておきましょう。
このほか、正社員転換制度を新たに規定した場合などの加算措置も設けられています。なお、支給申請の上限は1年度1事業所あたり20名とされています。自店のスタッフがどの区分になるかは、パンフレットの判定基準に沿って1人ずつ確認するのが確実です。
- 中小企業の有期→正社員は、重点支援対象者80万円(2期)、それ以外40万円(1期)
- 無期→正社員は、それぞれ40万円・20万円
- 重点支援対象者には雇入れ3年以上の有期雇用労働者などが含まれる
- 申請の上限は1年度1事業所あたり20名
転換の前に済ませておく2つの準備
正社員化コースでもっとも大切なのは、転換の「前」に準備を終えておくことです。転換してから制度を知っても、あとから申請することはできません。
1つ目は、キャリアアップ計画の提出です。パンフレットでは、キャリアアップ計画を「コース実施日の前日」までに管轄の労働局長に提出するよう求めており、コース実施日の1か月前など余裕を持った提出をすすめています。ここでいうコース実施日は、正社員への転換日と考えるとわかりやすいでしょう。
2つ目は、就業規則などへの転換制度の規定です。転換は「就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定した制度に基づき」行う必要があるとされています。たとえば「勤続◯年以上で、面談と技術チェックを経て正社員に転換できる」といった条件と手続きを、就業規則に書いておくイメージです。
サロンでは、スタイリストデビューや一定の技術習得を節目に正社員へ切り替えるケースが考えられます。その節目を就業規則の転換要件と結びつけておくと、スタッフにとっても目標がはっきりします。規定の書き方に迷う場合は、社会保険労務士や管轄の労働局に相談しておくと安心です。
あわせて読みたい:- キャリアアップ計画は転換日の前日までに労働局へ提出する
- 提出は1か月前など余裕を持つことがすすめられている
- 転換制度を就業規則などに定め、その制度にもとづいて転換する
- 技術の節目と転換要件を結びつけるとスタッフの目標にもなる
転換後の賃金は「3%以上」増やす
正社員に転換したあとの賃金は、転換前より3%以上増やす必要があります。肩書きだけを変えて給与が同じままでは、要件を満たしません。
パンフレットでは、「正社員転換後6か月間の賃金を、正社員転換前6か月間の賃金より3%以上増額させている」ことが要件とされています。比べるのは、転換の前後それぞれ6か月間の賃金です。
たとえば転換前の6か月間の賃金が合計120万円なら、転換後の6か月間は合計123.6万円以上にする必要がある、という計算になります(編集部による試算)。賃金に何を含めて比較するかには細かな決まりがあるため、実際の計算はパンフレットの定めに沿って確認してください。
サロンで注意したいのは、正社員になったことで社会保険に加入し、手取りが一時的に減ったように感じるケースです。スタッフの受け止め方は、額面より手取りで決まりがちです。転換の前に、保険料の負担が変わることや将来の保障も含めて説明しておくと、せっかくの正社員化が不満につながりにくくなります。
あわせて読みたい:- 転換後6か月間の賃金を転換前6か月間より3%以上増やす
- 比べるのは転換前後それぞれ6か月間の賃金
- 賃金に含める範囲はパンフレットの定めで確認する
- 社会保険加入による手取りの変化は事前に説明しておく
申請の流れとタイミング|6か月後から2か月以内
支給申請ができるのは、転換してすぐではなく、正社員として6か月分の賃金を支払ったあとです。申請できる期間が決まっているため、時期を管理しておく必要があります。
パンフレットでは、第1期の申請は「正規雇用労働者としての賃金を6か月分支給した日の翌日から起算して2か月以内」に行うとされています。重点支援対象者の第2期は、転換後12か月以上継続して雇用し、12か月分の賃金を支給したことが条件とされています。
全体の流れを整理すると、①就業規則などへの転換制度の規定とキャリアアップ計画の提出、②転換の実施、③正社員として6か月分の賃金を支給、④その翌日から2か月以内に支給申請、という順番です。助成金は転換からしばらくたって支給されるため、転換時点の人件費は自店で負担することになります。
転換日、6か月分の賃金支払日、申請期限の3つをカレンダーに書き込んでおくと、申請漏れを防げます。スタッフが複数いる場合は、1人ずつ日付が異なる点にも注意してください。
あわせて読みたい:- 第1期は正社員として6か月分の賃金を支給した翌日から2か月以内に申請
- 重点支援対象者の第2期は転換後12か月以上の継続雇用が条件
- 流れは規定・計画提出→転換→6か月分支給→申請の順
- 転換日・支払日・申請期限をスタッフごとに管理する
まとめ:正社員化を決めたら、転換日より先に計画を出す
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、①有期・無期雇用のスタッフを正社員に転換した事業主への助成で、②中小企業の有期→正社員は重点支援対象者80万円・それ以外40万円、③転換前日までのキャリアアップ計画提出と就業規則への規定が必要、④転換後の賃金を3%以上増やし、⑤6か月分の支給後2か月以内に申請する、という流れで理解できます。
アシスタントの正社員化を考え始めたら、まず転換の予定日を決め、その1か月以上前に計画を出せるように逆算してみてください。支給額や要件は年度ごとに見直されるため、最新のパンフレットと管轄の労働局の案内で確認することをおすすめします。令和8年度の内容は、厚生労働省のキャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版パンフレット)にまとめられています。
よくある質問(FAQ)
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