美容室の椅子(スタイリングチェア)の選び方|種類・機能・設置前の確認点
更新日:2026年10月19日
美容室の椅子(スタイリングチェア)は、お客様が施術の時間を過ごす場所であり、スタッフにとっては毎日の仕事道具でもあります。一度設置すると長く使うものなので、デザインだけでなく、昇降の仕組みや機能、設置できる台数まで考えて選びたいところです。この記事では、スタイリングチェアの種類と機能の違い、保健所の基準に関わる床面積と台数の考え方、購入時に知っておきたい耐用年数について解説します。
- スタイリングチェアは、座る部分の「チェア」と、昇降や回転を担う「チェアベース」の組み合わせで考えます。
- 昇降の操作には足踏みタイプと電動タイプがあり、メーカーによっては両方とも油圧の仕組みを使っています。
- 美容所の床面積と置ける椅子の台数の基準は自治体によって異なるため、購入前に保健所に確認することが大切です。
- 国税庁の耐用年数表では「理容・美容機器」は5年ですが、個別の資産の区分は税理士に確認すると安心です。
スタイリングチェアの基本|チェアとチェアベースの組み合わせで選ぶ
スタイリングチェアは、お客様が座る「チェア」部分と、昇降や回転を担う土台の「チェアベース」を組み合わせて選ぶものと考えると、比べやすくなります。
大手理美容機器メーカーの製品案内では、チェアとチェアベースが別々に紹介されており、同じチェアでも組み合わせるベースによって操作の方法や高さの範囲が変わります。座り心地やデザインはチェア部分で、使い勝手の多くはチェアベースで決まると考えるとよいでしょう。
美容室で使う椅子には、スタイリングチェアのほかに、シャンプー台で使うシャンプーチェアや、待合スペースの椅子などがあります。この記事では主にスタイリングチェアを扱いますが、後述する保健所の基準では、シャンプー用の椅子を台数に数えるかどうかが自治体によって異なるため、お店全体の椅子をまとめて把握しておくことが大切です。開業時に必要な什器や備品の全体像は、次の記事で整理しています。
- スタイリングチェアは、チェアとチェアベースの組み合わせで考える
- 座り心地やデザインはチェア、操作や高さの範囲はベースで変わる
- 美容室にはシャンプーチェアや待合の椅子もある
- 保健所の基準に備え、お店全体の椅子をまとめて把握しておく
昇降方式とチェアベースの種類|足踏みタイプと電動タイプ
チェアベースを選ぶときは、昇降の操作方法、床への設置方法、高さの範囲の3点を確認するのが基本です。
昇降の操作方法には、ペダルを踏んで上げ下げする足踏みタイプと、スイッチで動かす電動タイプがあります。メーカーの案内では、電動タイプはスイッチひとつでスムーズに上昇するため、スタッフにもお客様にもやさしいチェアベースとされています。なお、このメーカーでは「ハイドロウリック」と呼ばれる油圧の仕組みをすべてのチェアベースに採用していると案内しており、「油圧式か電動式か」という二択ではなく、操作が足踏みか電動かの違いと考えるのが正確です。
床への設置方法には、床に置くだけの置き式と、床に固定する固定式があります。固定式は床に固定するため、内装工事の段階で設置位置を決めておくことが考えられます。電動タイプを選ぶ場合は、電源の位置も確認しておきましょう。また、いちばん下げたときの高さ(初高)と、上げ下げできる幅(ストローク)の違いによって、低初高、ベーシック、高ストロークといったタイプに分けられています。小柄なお客様が座りやすいか、スタッフの身長や施術の内容に合わせて作業しやすい高さに調整できるかを考えて選びましょう。
- 昇降の操作には足踏みタイプと電動タイプがある
- メーカーによっては、どちらも油圧の仕組みを使っている
- 設置方法には置き式と固定式があり、固定式は内装工事と合わせて考える
- 初高とストロークで、座りやすさと作業しやすい高さを確認する
スタイリングチェアの機能で選ぶ|回転・リクライニング・足置き・枕
チェアの機能は、お店で行う施術の内容と、お客様にどう過ごしてほしいかに合わせて選ぶことが大切です。
メーカーの製品案内で紹介されている主な機能には、次のようなものがあります。
- 回転:ロックを解除してチェアの上部を回転させられる
- 足置き:足を伸ばせるプレートタイプや、パイプタイプのステップ
- リクライニング:カットなどの施術を行う標準の姿勢と、くつろげる姿勢を切り替えられる
- レッグレスト:脚を支える機能を備えたタイプ
- 枕:頭を支える枕を備えたタイプ
たとえば、ヘッドスパやトリートメントなど、お客様にくつろいでもらう時間が長いメニューが多いお店では、リクライニングや足を支える機能を重視する考え方があります。一方で、カット中心で回転率を重視するお店では、操作のしやすさや乗り降りのしやすさを優先することもあるでしょう。機能によって価格や本体の大きさが変わることもあるため、実際の施術の流れを思い浮かべながら、必要な機能を絞り込むことをおすすめします。可能であれば、ショールームなどで実際に座り、スタッフが操作してみると違いが分かりやすくなります。
- 回転、足置き、リクライニング、レッグレスト、枕などの機能がある
- くつろぎ重視のメニューが多いなら、リクライニングなどを重視する
- 機能によって、価格や本体の大きさが変わることもある
- 実際に座り、操作してから選ぶと違いが分かりやすい
設置できる台数の確認|床面積の基準は自治体によって違う
美容室に置ける椅子の台数は、作業室の床面積に関する基準で決まり、その基準は自治体によって異なるため、購入前に出店予定地の保健所で確認することが欠かせません。
国の「理容所及び美容所における衛生管理要領」では、作業場は作業や衛生保持に支障を来さない程度の十分な広さを持つこととされ、具体的な数値は各自治体の条例や基準で定められています。たとえば、次のように基準は大きく異なります。
- 東京都(東京都保健医療局の案内):1作業室の床面積は13平方メートル以上で、美容いすは6台まで。6台を超える場合は、1台増すごとに3平方メートルを加える
- 千葉県(海匝保健所の案内):いすが1台の場合は6.6平方メートル以上で、1台増すごとに3.3平方メートルを加える
- 大分市:美容イス4台以下は13平方メートル以上で、5台以上は1台増すごとに3平方メートルを加える
- 北九州市:9.9平方メートルで4脚まで、1脚増すごとに2平方メートルを加える
さらに、どの椅子を台数に数えるかも自治体によって違います。東京都の目黒区や町田市は、美容いすにはセットいす、シャンプーいす、コールド待ちいすを含むとしています。一方、大分市はシャンプーイスを美容イスに含まないとしています。物件を決める前に、作業室の床面積で何台まで置けるのかを保健所に確認し、そのうえで椅子の台数を決めましょう。限られた広さでのレイアウトの考え方は、次の記事も参考にしてください。
- 置ける椅子の台数は、作業室の床面積の基準で決まる
- 基準となる面積や加算の方法は自治体によって大きく異なる
- シャンプー用の椅子を台数に含めるかも自治体によって違う
- 物件を決める前に、保健所で台数の上限を確認する
配置と動線の考え方|椅子の間隔は実際の作業で確かめる
スタイリングチェアの配置は、決まった数値に合わせるのではなく、施術中のスタッフの動きとお客様の通り道を確保できるかを、実際の作業に近い形で確かめて決めることが大切です。
確認した自治体の基準では、椅子と椅子の間隔について具体的な数値は見当たりませんでした。基準として定められているのは、作業室の床面積のほか、作業場と待合所を明確に区分することなどです。そのため、椅子の間隔はお店ごとに判断することになります。
配置を考えるときは、チェアを回転させたりリクライニングさせたりしたときに、隣の椅子や鏡、ワゴンに当たらないかを確認します。カットのときにスタッフが椅子の周りを一周できるか、カラー剤を運ぶワゴンを置いても通路をふさがないか、といった点も見ておきたいところです。図面だけでは分かりにくいため、床にテープで椅子の大きさを印して、実際に人が動いてみる方法も考えられます。椅子の寸法や回転したときの範囲はメーカーの資料で確認し、内装業者とも共有しておきましょう。
- 確認した自治体の基準に、椅子の間隔の具体的な数値はなかった
- 作業場と待合所を区分することなどは基準で定められている
- 回転やリクライニングをしても周りに当たらないかを確認する
- 床にテープで印をつけ、実際に動いて確かめる方法もある
購入費用と耐用年数|減価償却は税理士に確認する
スタイリングチェアのように長く使う設備は、取得価額などに応じて、購入費用を耐用年数にわたって少しずつ経費にする「減価償却」の対象になることがあります。
国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」では、器具及び備品のうち「理容・美容機器」の耐用年数は5年とされています。ただし、スタイリングチェアがこの区分に当たると明記した国税庁の資料は確認できていません。実際の区分や、どのように経費に計上するかは、取得価額や使い方によっても変わるため、税理士に確認すると安心です。
費用を抑えるために、中古品を検討するお店もあるでしょう。中古品の場合は、昇降や回転がスムーズに動くか、座面や背もたれに傷みがないか、部品の交換やメンテナンスに対応してもらえるかを確認しておきたいところです。新品・中古のどちらでも、見積もりを取る際には、本体の価格だけでなく、運搬や設置の費用もあわせて確認しましょう。美容室で経費にできる費用の考え方は、次の記事で解説しています。
- 長く使う設備は、取得価額などに応じて減価償却の対象になる
- 国税庁の耐用年数表では「理容・美容機器」は5年
- スタイリングチェアの区分や計上方法は税理士に確認する
- 中古品は動作やメンテナンスの対応を確認し、設置費用も見積もる
まとめ|機能と台数の両方を確認してから選ぶ
美容室の椅子(スタイリングチェア)は、チェアとチェアベースの組み合わせで考え、昇降の操作方法、設置方法、高さの範囲、回転やリクライニングなどの機能を、お店の施術内容に合わせて選ぶことが大切です。あわせて、置ける台数は自治体ごとの床面積の基準で決まり、シャンプー用の椅子を台数に数えるかどうかも自治体によって違います。
物件や内装の計画を固める前に保健所で台数の上限を確認し、実際に座って操作したうえで選びましょう。減価償却の扱いは税理士に確認しておくと、開業後の会計処理もスムーズに進められます。
よくある質問(FAQ)
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