カスハラ対策が全サロンで義務に|2026年10月1日から必要な5つの措置
更新日:2026年9月14日
- カスハラ対策の義務化は2026年10月1日施行。根拠は改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)です。
- 労働者を1人でも雇うすべての事業主が対象で、中小企業・個人事業主への猶予はありません。
- 講じるべき措置は「方針の明確化」「相談体制」「事後対応」「抑止措置」「プライバシー保護等」の5分類・10項目です。
- 同じ10月1日に、求職者へのセクハラ対策の義務化とパワハラ指針の改正も施行されます。
- 方針文・マニュアル・ポスターは厚生労働省が公開しており、一から作る必要はありません。
カスハラ対策の義務化は2026年10月1日から始まります
結論から言えば、2026年10月1日以降、スタッフを雇うすべての美容サロンにカスハラ対策の措置義務がかかります。根拠となるのは、2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)です。
なぜサロンの規模を問わないのかというと、今回の改正には企業規模による例外や経過措置がまったく設けられていないためです。2020年のパワーハラスメント防止措置では、中小企業に2022年3月末までの猶予がありました。今回はその猶予がなく、全事業主が同じ日から一斉に義務を負います。厚生労働省の施行通達も、必要な措置について「企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないもの」と明記しています。
前提として押さえておきたいのは、対象になるのはあくまでカスハラであって、正当なクレームではないという点です。指針は、社会通念上許容される範囲で行われたものは「正当な申入れ」であり、カスハラには当たらないとしています。仕上がりへのご指摘そのものは、サービスを良くするための情報です。判断は、要求の内容と、要求の手段・態様という二軸で行うことになります。
注意点として、義務の中身は「気をつける」ことではありません。指針が定める具体的な措置を講じたかどうかが問われます。次章以降でその中身を見ていきます。
あわせて読みたい:- 施行日は2026年10月1日、根拠法は改正労働施策総合推進法です。
- 企業規模による猶予・例外はなく、スタッフ1名のサロンも対象になります。
- 社会通念上許容される範囲の申し出は、正当なクレームであってカスハラではありません。
- 問われるのは心構えではなく、指針が定める措置を講じたかどうかです。
事業主に求められる5分類・10項目の措置
結論として、講じるべき措置は5つの分類に整理され、その中身は10項目に分かれます。厚生労働省は、これらを規模を問わず必ず講じなければならないものと示しています。
理由は、指針が「望ましい取組」と「必ず講ずべき措置」を明確に区別しているためです。前者は努力目標ですが、後者は義務です。以下の10項目が後者にあたります。
1. 事業主の方針等の明確化および周知・啓発
- カスハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、スタッフへ周知・啓発すること
- カスハラの内容と、発生時の対処方法をスタッフへ周知すること
2. 相談に応じ適切に対応するための体制整備
- 相談窓口をあらかじめ定め、スタッフに周知すること
- 相談窓口の担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにすること
3. 発生後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
- 被害を受けたスタッフへの配慮の措置を行うこと
- 再発防止に向けた措置を講じること
4. 抑止のための措置
- 特に悪質な事案への対処方針を定め、対応体制を整備すること
5. 併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシー保護に必要な措置を講じ、周知すること
- 相談したこと等を理由に不利益な取扱いをしない旨を定め、周知・啓発すること
注意点として、この10項目には「望ましい取組」も別途あります。自社が雇用する労働者以外の方への配慮や、他社からの協力の求めに応じるよう努めることなどです。こちらは努力義務にあたるため、まずは10項目を優先してください。
- 措置は5分類・10項目に整理され、いずれも規模を問わず必須とされています。
- 方針の明確化と周知、相談窓口の設置がまず先に来ます。
- 悪質事案への対処方針を定めることも、抑止措置として含まれます。
- 努力義務にあたる「望ましい取組」とは区別して整理します。
同じ10月1日に、もう2つのハラスメント義務が始まります
結論として、2026年10月1日に施行されるのはカスハラ対策だけではありません。あと2つ、同じ日に始まるものがあります。
理由は、同一の改正法と関連する告示によって、複数のハラスメント対策が同時に整備されたためです。
求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化
男女雇用機会均等法の改正により、求職者等へのセクハラ対策が事業主の義務になります。対象は応募者だけでなく、就職説明会やインターンシップの参加者、実習を受ける方も含まれます。場所も店内に限られず、飲食店での面談や懇親の場、SNSでのやり取りも範囲に入るとされています。求められるのは、方針の明確化、相談体制の整備、事後対応、プライバシー保護等の措置です。
パワーハラスメント指針の改正
いわゆる「自爆営業」について、指針に記述が加わります。指針上の表記は「商品の買い取り強要等」で、事業主が労働者に対し、当該労働者の自由な意思に反して自社の商品・サービスを購入させる行為に関連する言動も、パワハラの3要素をすべて満たす場合には該当するとされました。あわせて、性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動や、本人の了解を得ない暴露についても、指針上で明確化されています。
具体的に、この3つは方針文と相談窓口を共通化できます。「当店はスタッフに対するハラスメントを容認しません」という方針を1枚にまとめ、対象にお客様・求職者・取引先を含めておけば、3つ分の「方針の明確化」を一度に満たせます。相談窓口も同じ窓口で構いません。
注意点として、パワハラ指針の改正は新たな義務が増えたものではなく、既存のパワハラ防止措置義務の対象であることが明記されたという位置づけです。「10月から新たに禁止される」という理解は正確ではありません。
- 同じ10月1日に、求職者等へのセクハラ対策も義務化されます。
- パワハラ指針に「商品の買い取り強要等」の記述が加わります。
- 方針文と相談窓口は3つで共通化でき、作業は一度で済みます。
- パワハラ指針の改正は解釈の明確化であり、新たな義務ではありません。
10月までにサロンが進める3ステップ
結論として、残された時間で優先すべきは「方針を1枚にする」「相談先を決めて伝える」「悪質事案の手順を決める」の3つです。
理由は、この3つが10項目のうち最も上流にあり、ここが決まれば残りの項目は日々の運用に落とし込めるからです。
ステップ1:方針をA4一枚にまとめる
ハラスメントを容認しない旨の一文を軸に、対象となる行為の例と、発生時の対応の流れを書き添えます。作成したらスタッフルームへ掲示し、朝礼で読み合わせたうえで、周知した日付を記録しておきます。周知した記録が残っているかどうかが、措置を講じたことの裏づけになります。
ステップ2:相談先を決めて、全員に伝える
小規模サロンではオーナーや店長が窓口になるのが現実的です。ただし、相談相手がその場にいる当事者だと相談しづらいこともあります。可能であれば、店舗外の相談先(顧問の社会保険労務士、都道府県の労働局など)も併記しておくと安心感が違います。求職者向けには、採用ページにも窓口を記載します。
ステップ3:悪質事案の手順を決めておく
その場で判断させないことが、スタッフを守る一番の方法です。東京都の美容業の同業組合が2025年12月にまとめた業界向けマニュアルでは、対応が膠着してから30分を目安に対応を打ち切り、警告のうえ退去を求め、それでも収まらなければ警察へ通報するという段階的な流れが示されています。あわせて、施術ブースや個室など密閉的な空間ではなく、受付など開けた場所で対応することも推奨されています。
注意点として、土下座の強要は強要罪に該当し得る行為であり、応じる必要はありません。暴行があった場合は、監督者の判断を待たずに通報して差し支えないと考えられます。
あわせて読みたい:- 方針はA4一枚から始めて構いません。周知した日付を記録しておきます。
- 相談窓口は店内だけでなく、外部の相談先も併記すると相談しやすくなります。
- 悪質事案は、時間を区切って段階的に対応する手順を先に決めておきます。
- 対応場所は個室を避け、受付など開けた場所を選びます。
書式は一から作らない|公開資料を書き換えて使う
結論として、方針文もマニュアルもポスターも、厚生労働省が公開しているものを書き換えて使えます。ゼロから作る必要はありません。
理由は、指針の内容に沿った資料が、あらかじめ用意されているためです。厚生労働省のハラスメント対策ポータルサイトでは、企業向けマニュアル、対策リーフレット、店頭に掲示できるポスター、説明会用の資料などがダウンロードできます。
具体的に、サロンで使いやすいものを挙げます。
- 企業向けマニュアル:方針文の記載例や対応フローが載っており、自店の状況に合わせて書き換えられます
- 対策ポスター:受付や待合に掲示することで、お客様への周知と抑止を兼ねられます
- リーフレット(簡易版・詳細版):スタッフへの説明資料として、朝礼やミーティングでそのまま使えます
- 解釈Q&A:判断に迷う場面の考え方が示されています
注意点として、厚生労働省の業種別マニュアルは現在、宅配業編とスーパーマーケット業編の2業種のみです。美容業向けの国のマニュアルは存在しません。美容業に特化した内容が必要な場合は、前述の業界団体のマニュアルを参照することになります。
もうひとつ、書式を用意しただけでは措置を講じたことになりません。スタッフへ周知し、その記録を残すところまでが一続きです。掲示した日、読み合わせをした日をメモしておいてください。
- 方針文・マニュアル・ポスターは厚生労働省が公開しています。
- 自店の業態や状況に合わせて書き換える形が現実的です。
- 国の業種別マニュアルは2業種のみで、美容業向けは存在しません。
- 書式の用意だけでなく、周知と記録までが一続きです。
対応を怠った場合に何が起きるのか
結論として、措置義務違反そのものに刑事罰はありませんが、行政指導と事業主名の公表という仕組みがあります。
理由は、改正法が実効性を行政指導と公表によって担保する構造になっているためです。厚生労働大臣または都道府県労働局長は、必要があると認めるときに助言・指導・勧告を行うことができ、勧告に従わなかった場合はその旨を公表できるとされています。
具体的なリスクとして、より現実的なのは民事上の責任です。スタッフが心身の不調をきたした場合、事業主が安全配慮義務を果たしていたかどうかが問われます。方針も窓口も記録もない状態は、この点で不利に働くと考えられます。
注意点として、罰則がないことを理由に後回しにするのは得策とは言えません。カスハラ対応の体制があること自体が、採用や定着の場面で働きやすさの証明になります。人手の確保が難しい今、この観点は無視できません。
- 措置義務違反への直接の刑事罰は設けられていません。
- 助言・指導・勧告があり、勧告に従わない場合は事業主名が公表されることがあります。
- より現実的なリスクは、安全配慮義務をめぐる民事上の責任です。
- 体制の整備は、採用や定着の面でもプラスに働きます。
まとめ:10月1日までに、方針・窓口・手順の3点を形にする
2026年10月1日から、カスハラ対策はすべての事業主の義務になります。中小企業への猶予はなく、スタッフ1名のサロンも対象です。求められるのは5分類・10項目の措置ですが、着手の順番は明快です。方針を1枚にまとめ、相談先を決めて全員に伝え、悪質事案の手順を先に決めておく。この3点が形になっていれば、残りは日々の運用に落とし込めます。
同じ10月1日には、求職者等へのセクハラ対策の義務化と、パワハラ指針の改正も施行されます。方針文と相談窓口は3つで共通化できるので、まとめて一度に整えるほうが効率的です。
書式は厚生労働省の公開資料を書き換えれば足ります。まずはリーフレットとマニュアルに目を通し、自店の状況に合わせるところから始めてみてください。就業規則の見直しが必要かどうか判断に迷う場合は、所轄の労働局や社会保険労務士へご相談ください。
FAQ:カスハラ対策の義務化について、よくある質問
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