パート・アルバイトへの説明義務が変わります|2026年10月からの実務と過料
更新日:2026年9月14日
- 2026年10月1日から、短時間・有期雇用スタッフの雇入れ時の明示事項がひとつ追加されます。
- 追加されるのは「待遇の相違等について説明を求めることができる旨」の明示です。
- 明示を怠った場合、10万円以下の過料が定められています。
- 中小企業・小規模事業者への猶予は設けられていません。
- 同一労働同一賃金ガイドラインも改正され、家族手当や住宅手当の扱いが明確化されます。
2026年10月に何が変わるのか
結論として、パートやアルバイトを雇い入れるときに渡す書面に、記載事項がひとつ増えます。「通常の労働者(正社員)との待遇の相違について、説明を求めることができる」という旨の明示です。
正確に押さえておきたいのは、これが法律そのものの改正ではないという点です。パートタイム・有期雇用労働法の条文は変わらず、その施行規則(省令)と指針(告示)が改正されるものです。公布は2026年4月28日、施行・適用は2026年10月1日です。
具体的には、厚生労働省が公開している改正後のモデル労働条件通知書に、次の文言と記入欄が設けられています。「次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。」そのうえで、部署名、担当者の職氏名、連絡先を記載する形です。既存の「雇用管理の改善等に関する相談窓口」と同じ担当者であれば「同上」と記載できることも様式上に示されています。
注意点として、明示の方法は原則として書面の交付です。本人が希望した場合に限り、FAXや電子メールなどによる明示も認められています。この点は従来の明示事項と同じ扱いです。
あわせて読みたい:- 法律ではなく、施行規則(省令)と指針(告示)の改正です。
- 公布は2026年4月28日、施行は2026年10月1日です。
- 明示事項に「説明を求めることができる旨」と窓口の記載が加わります。
- 原則は書面交付、本人が希望した場合は電子メール等も可能です。
対象になるスタッフと、対象になるサロン
結論として、週の所定労働時間が正社員より短いスタッフ、または期間の定めがある契約のスタッフを雇い入れる場合が対象です。サロンの規模による例外はありません。
理由は、法律が対象を「短時間労働者」と「有期雇用労働者」で定義しており、事業主の規模で線を引いていないためです。短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者と比べて短い労働者を指します。有期雇用労働者とは、期間の定めのある労働契約を締結している労働者です。
具体例として、美容サロンで想定されるのは次のような方です。週3日勤務の受付スタッフ。子育て中で時短勤務のスタイリスト。1年契約のアイリスト。学生アルバイト。いずれも、正社員より所定労働時間が短いか、期間の定めがあれば対象になります。
注意点として、全員がパートというサロンでは「通常の労働者(正社員)」が存在しないため、待遇差の説明という場面自体が成り立ちません。ただし、雇入れ時の明示義務そのものは、短時間・有期雇用労働者を雇い入れる限り課されます。この違いは押さえておいてください。
- 対象は短時間労働者と有期雇用労働者です。
- 事業主の規模による例外・猶予は設けられていません。
- 週3日勤務の受付、時短スタッフ、1年契約のアイリストなどが該当します。
- 正社員がいないサロンでも、雇入れ時の明示義務自体は課されます。
実際に「説明を求められた」ときに何を伝えるのか
結論として、説明を求められた場合に伝えるべきは、待遇差の内容と理由、そして待遇を決めるにあたって考慮した事項です。
理由は、法律が事業主に説明義務を課しているためです。厚生労働省のパンフレットでは、説明すべき内容として「待遇差の内容や理由」と「法第6条から第13条までの措置を講じるに当たって考慮した事項」の2点が示されています。あわせて、説明を求めたことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています。
今回の改正では、説明の方法も明確化されました。指針が示す方法は2つです。ひとつは、資料を活用しながら口頭で説明する方法。もうひとつは、説明すべき事項をすべて記載した、容易に理解できる内容の資料を交付する方法です。
具体例として、サロンでよくある待遇差を考えてみます。正社員には賞与があり、パートにはない。指名手当の計算方法が違う。有給の付与日数が違う。こうした違いについて「なぜそうなっているのか」を、職務の内容や責任の範囲、配置の変更の有無といった観点から説明できるよう、あらかじめ整理しておく必要があります。
注意点として、個人情報の漏えい防止の観点から資料の交付が難しい場合には、求めがあったときに閲覧させるなどの工夫をすることが指針に示されています。他のスタッフの具体的な給与額をそのまま見せる必要はない、という趣旨です。
あわせて読みたい:- 説明すべきは待遇差の内容と理由、そして待遇決定にあたって考慮した事項です。
- 説明を求めたことを理由とする不利益取扱いは禁止されています。
- 説明方法は「資料を活用した口頭説明」または「全事項を記載した資料の交付」です。
- 個人情報の観点から交付が難しい場合は、閲覧させる等の工夫が示されています。
同一労働同一賃金ガイドラインも改正されます
結論として、同じ2026年10月1日から、同一労働同一賃金ガイドライン(不合理な待遇の禁止等に関する指針)も改正されます。手当と休暇の扱いが具体的になりました。
理由は、これまで判断が分かれやすかった項目について、裁判例の蓄積を踏まえて整理が進んだためです。
今回新たに明記された内容のうち、美容サロンに関係しやすいものを挙げます。
- 住宅手当:転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、正社員と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、同一の住宅手当を支給しなければならない
- 夏季冬季休暇:短時間・有期雇用労働者にも、正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない
- 家族手当:継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、正社員と同一の家族手当を支給する
- 賞与・退職手当:性質・目的が妥当する場合に、職務の相違に応じた均衡のとれた内容を支給しないことは不合理と認められる旨が明確化
具体例として、多くのサロンで関係しそうなのは夏季冬季休暇と家族手当です。正社員には夏季休暇があるがパートにはない、という運用をしている場合は、見直しの検討が必要になると考えられます。
注意点として、これは「すべて同じにしなければならない」という意味ではありません。職務の内容、責任の範囲、配置の変更の範囲に違いがあれば、その違いに応じた均衡のとれた待遇であることが求められる、という枠組みです。まずは自店の手当と休暇を一覧にして、正社員とパートで何がどう違うのかを可視化するところから始めるのが現実的です。
- 同一労働同一賃金ガイドラインも2026年10月1日から改正されます。
- 住宅手当、夏季冬季休暇、家族手当、賞与・退職手当の扱いが明確化されました。
- 夏季冬季休暇は、正社員と同一の付与が求められると明記されています。
- すべてを同一にする趣旨ではなく、違いに応じた均衡が求められます。
9月中にサロンが進める3つの作業
結論として、10月までにやるべき作業は「様式の差し替え」「窓口の決定」「待遇差の棚卸し」の3つです。
理由は、この順番で進めれば、10月1日以降に新しく雇い入れるスタッフへの対応が確実になるからです。
1. 労働条件通知書の様式を差し替える
厚生労働省が改正後のモデル労働条件通知書をPDFとWordで公開しています。自店で使っている様式が古い場合は差し替えてください。あわせて、リーフレットやポスター、法対応のチェックツールも公開されています。
2. 説明を受け付ける窓口を決める
通知書には部署名、担当者の職氏名、連絡先を記載します。小規模サロンではオーナーや店長が担当することになりますが、誰が受けるのかを明記しておくことが必要です。既存の「雇用管理の改善等に関する相談窓口」と同じであれば「同上」と記載できます。
3. 正社員とパートの待遇差を一覧にする
基本給の考え方、賞与の有無、各種手当、休暇、指名手当や歩合の計算方法、研修の機会。これらを表にして、正社員とパートで何がどう違うのかを書き出します。そのうえで、それぞれの違いの理由を一行ずつ書き添えておくと、実際に説明を求められたときにそのまま使えます。
注意点として、2026年10月1日時点ですでに在籍しているスタッフへ遡って明示する必要があるかどうかは、公開されている資料からは読み取れませんでした。判断に迷う場合は、所轄の労働局へご確認ください。
あわせて読みたい:- 厚生労働省が改正後のモデル労働条件通知書を公開しています。
- 説明を受け付ける窓口の部署名・担当者・連絡先を決めて記載します。
- 正社員とパートの待遇差を一覧にし、違いの理由を書き添えます。
- 在籍者への遡及明示の要否は、所轄の労働局への確認をおすすめします。
まとめ:様式を1枚差し替えるところから
2026年10月1日から、短時間・有期雇用のスタッフを雇い入れるときの明示事項がひとつ増えます。追加されるのは「待遇の相違等について説明を求めることができる旨」と、その窓口の記載です。明示を怠ると10万円以下の過料が定められており、サロンの規模による猶予はありません。
やるべきことは多くありません。厚生労働省が公開している改正後のモデル労働条件通知書に様式を差し替え、窓口を決めて記入する。この2つで、明示義務そのものは満たせます。
そのうえで時間をかけたいのが、正社員とパートの待遇差の棚卸しです。実際に説明を求められてから慌てて整理するより、先に一覧にしておくほうが確実ですし、スタッフとの信頼にもつながります。同一労働同一賃金ガイドラインの改正内容もあわせて確認し、判断に迷う点は所轄の労働局や社会保険労務士へご相談ください。
FAQ:パート・有期雇用スタッフへの説明義務について、よくある質問
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