サロンの冬の賞与・寸志の決め方|金額の考え方と社会保険・源泉徴収の手続き
更新日:2026年10月19日
年末が近づくと、スタッフに冬の賞与や寸志を出すかどうか、出すならいくらにするかで悩むオーナーもいるのではないでしょうか。賞与は金額を決めて終わりではなく、社会保険料や源泉徴収税の計算、賞与支払届の提出といった手続きも必要です。この記事では、サロンの賞与・寸志の決め方の考え方と、支給にあたって必要な社会保険・源泉徴収の手続きを、公的機関の情報をもとに解説します。
- 賞与は法律で支給が義務付けられたものではありませんが、支給する場合は就業規則で時期や算定基準などを明確にしておくことが必要とされています。
- 社会保険では、名称を問わず、労働の対償として年3回以下で支給されるものが賞与として扱われます。
- 賞与を支給したら、支払日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出します。
- 源泉徴収税額は、前月の給与をもとに「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で求めるのが基本です。
賞与・寸志とは|支給義務の有無と就業規則での定め方
賞与は法律で支給が義務付けられたものではありませんが、支給する場合は、いつ、どのような基準で支給するのかを就業規則などで明確にしておくことが大切です。
厚生労働省のモデル就業規則の解説では、「賞与は、労基法その他の法律によって設けることが義務付けられているものではありません」としたうえで、賞与を支給する場合は、就業規則に支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法等を明確にしておくことが必要だとしています。労働基準法第89条でも、常時10人以上の労働者を使用する事業場が作る就業規則では、臨時の賃金等の定めをする場合はこれに関する事項を記載することとされています。
「寸志」という言葉には、法律上の決まった意味はありません。日本年金機構は、賞与支払届の対象について、名称を問わず労働の対償として受ける報酬のうち年3回以下の支給のものとしています。寸志という名前で少額を渡す場合も、社会保険では名前ではなく支給の実態で判断されると考えておきましょう。
すでにスタッフを雇っている場合は、支給を決める前に、雇用契約書や就業規則に賞与についてどう書いてあるかを確認しておきましょう。書いてある内容と実際の支給が食い違うと、スタッフとの行き違いのもとになります。雇用契約書の作り方は、次の記事で解説しています。
- 賞与は法律上の支給義務があるものではない
- 支給する場合は、時期・算定基準・査定期間・支払方法などを就業規則で明確にする
- 社会保険では、名称を問わず年3回以下の支給が賞与として扱われる
- 支給前に、雇用契約書や就業規則の賞与の記載を確認する
冬の賞与の金額の決め方|原資と配分の基準を分けて考える
冬の賞与の金額は、まずお店全体で支給できる総額(原資)を決め、次にその原資をどのような基準で配分するかを決める、という2段階で考えると整理しやすくなります。
原資を決めるときは、利益が出ているかだけでなく、手元のお金に余裕があるかも確認します。賞与を支給すると、本人が負担する社会保険料とは別に、事業主負担分の社会保険料も発生します。また、年末年始は材料の仕入れや家賃の支払いが重なるお店もあります。賞与を支払ったあとも、翌月以降の支払いに困らないかを確かめてから原資を決めましょう。
配分の基準には、たとえば「基本給の◯か月分を基準にする」「売上や指名数などの実績を加味する」「勤務年数や役割を加味する」といった考え方があります。どの基準を使う場合も、スタッフに説明できる形にしておくことが大切です。評価が曖昧なまま金額に差をつけると、不満の原因になりかねません。賞与を渡すときに面談の時間をとり、評価の理由や来年への期待を伝えると、金額以上に気持ちが伝わります。資金繰りの考え方や、スタッフとの対話の進め方は、次の記事も参考にしてください。
- まず原資(総額)を決め、次に配分の基準を決める
- 原資は利益だけでなく、手元資金と事業主負担の社会保険料も見て決める
- 配分の基準は、スタッフに説明できる形にしておく
- 面談で評価の理由や来年への期待を伝える
パート・有期雇用スタッフの賞与|同一労働同一賃金の考え方
業績などへの貢献に応じて支給する賞与については、パートタイムや有期雇用のスタッフにも、正社員と同じ貢献なら同じように、貢献に違いがあれば違いに応じて支給することが求められます。
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給する賞与について、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には同一の支給を、貢献に一定の違いがある場合はその違いに応じた支給をしなければならないとしています。問題となる例として、業績等への貢献に応じて賞与を支給している会社が、通常の労働者には職務の内容や貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているのに、短時間・有期雇用労働者には支給していないケースが挙げられています。
なお、このガイドラインは改正され、2026年10月1日から適用されています。改正後の概要では、賞与には労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の労働意欲の向上など、さまざまな性質・目的が含まれうるとされています。お店の賞与がどのような目的で支給されているのかを整理し、パートスタッフの扱いを説明できるようにしておきましょう。具体的な判断に迷う場合は、社会保険労務士や労働局の相談窓口に相談すると安心です。
- 貢献に応じて支給する賞与は、同一の貢献なら同一の支給が求められる
- 貢献にかかわらず正社員全員に支給し、パートには支給しない例は問題とされている
- 改正ガイドラインは2026年10月1日から適用されている
- 賞与の目的を整理し、パートの扱いを説明できるようにする
賞与にかかる社会保険料と労働保険料の計算
賞与からも、毎月の給与と同じく、健康保険・厚生年金保険の保険料と雇用保険料を差し引きます。
健康保険と厚生年金保険の保険料は、「標準賞与額」に保険料率をかけて計算します。標準賞与額は、実際に支払った賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額です。上限は、健康保険が年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計額573万円、厚生年金保険が1か月あたり150万円とされています。保険料率は毎月の給与と共通で、厚生年金保険料率は18.3%で、事業主と被保険者が半分ずつ負担します。健康保険料率は、協会けんぽの場合は都道府県ごとに異なるため、加入している保険の料率表で確認しましょう。また、2026年4月分からは子ども・子育て支援金の徴収も始まっています。協会けんぽ(東京支部)の保険料額表では、子ども・子育て支援金についても標準賞与額の上限が健康保険と同じ年度累計573万円と示されています。加入している健康保険の案内もあわせて確認してください。
雇用保険料と労災保険料は、賞与を含めた賃金総額に保険料率をかけて計算します。2026年度(令和8年度)の一般の事業の雇用保険料率は、労働者負担が1,000分の5、事業主負担が1,000分の8.5です。労災保険料は全額が事業主負担のため、賞与から差し引くことはありません。
- 標準賞与額は、賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた額
- 上限は、健康保険が年度累計573万円、厚生年金保険が1か月150万円
- 保険料率は毎月の給与と共通で、健康保険料率は加入先で確認する
- 雇用保険料は賞与からも差し引き、労災保険料は全額事業主負担
賞与支払届の提出|支払日から5日以内に届け出る
健康保険・厚生年金保険に加入しているスタッフに賞与を支給したときは、支払日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出します。
日本年金機構によると、提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所で、提出方法は電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参から選べます。以前は賞与支払届とあわせて「総括表」を提出していましたが、2021年(令和3年)3月に廃止され、添付書類も原則として不要です。
あらかじめ年金事務所に届け出ている賞与の支払予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」を提出します。今年は冬の賞与を見送るという場合も、届出が必要かどうかを確認しておきましょう。また、健康保険の標準賞与額の年度累計が573万円を超えた場合は、被保険者の申し出に基づいて「健康保険 標準賞与額累計申出書」を提出することがあります(年度内に保険者の変更がない場合など、提出が不要なケースもあります)。手続きの詳細は日本年金機構のホームページで確認するか、社会保険労務士に相談するとよいでしょう。
- 賞与を支給したら、支払日から5日以内に賞与支払届を提出する
- 提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所
- 総括表は2021年3月に廃止され、添付書類は原則不要
- 支払予定月に支給しなかった場合は、賞与不支給報告書を提出する
賞与の源泉徴収税額の計算方法
賞与から差し引く源泉徴収税額は、前月の給与の金額をもとに、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って計算するのが基本です。
国税庁の説明では、まず前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を求めます。次に、算出率の表の甲欄で、扶養親族等の数とその金額が当てはまる行から「賞与の金額に乗ずべき率」を求めます。最後に、賞与から社会保険料等を差し引いた金額にその率をかけたものが税額です。扶養控除等申告書を提出していない人は、乙欄を使います。
例外もあります。前月に給与の支払いがない場合や、賞与の金額(社会保険料等を差し引いた額)が前月の給与(同)の10倍を超える場合は、算出率の表ではなく、月額表を使った別の計算方法になります。賞与の計算の基礎となった期間が6か月を超える場合は計算に使う数字が変わる点も含め、該当するときは国税庁のタックスアンサーで手順を確認しましょう。
なお、国税庁は、令和9年分以後の算出率の表や月額表は改正されていると案内しています。2026年の冬の賞与は令和8年分の表で計算し、翌年以降は新しい表を使うことになります。給与計算ソフトや外部システムを使っている場合も、表が更新されているかを確認しましょう。
- 前月の給与(社会保険料等控除後)と扶養親族等の数から、算出率の表で率を求める
- 賞与から社会保険料等を差し引いた額に、その率をかける
- 前月の給与がない場合や10倍を超える場合は、別の計算方法になる
- 令和9年分以後は表が改正されているため、翌年以降は新しい表を使う
まとめ|方針と手続きの両方を準備して支給する
サロンの賞与・寸志は、法律で支給が義務付けられたものではありませんが、支給するなら就業規則などで支給の時期や算定基準を明確にし、原資と配分の基準を分けて金額を決めることが大切です。パートや有期雇用のスタッフについても、賞与の目的に照らして扱いを説明できるようにしておきましょう。
支給の際には、社会保険料と雇用保険料の控除、源泉徴収税額の計算、支払日から5日以内の賞与支払届の提出が必要です。料率や計算の表は改定されることがあるため、支給前に日本年金機構や国税庁、加入している健康保険の最新情報を確認し、迷う点は社会保険労務士や税理士に相談しながら進めましょう。
よくある質問(FAQ)
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