出張美容の対象が拡大|条件・免許証携行・届出を解説
出張美容の対象が広がりました|サロンの外で施術する前に押さえる条件と手続き

出張美容の対象が広がりました|サロンの外で施術する前に押さえる条件と手続き

更新日:2026年9月14日

2026年3月、厚生労働省が出張理容・出張美容に関する通知とQ&Aを改正しました。これまで対象がはっきりしなかった「仕事の都合で来店の時間を確保できない方」なども、条件次第で対象になり得ることが示されています。あわせて、施術時の免許証の携行・提示が新たに求められるようになりました。制度の中身と、始める前に確認すべきことを整理します。
【大事なこと】
  • 出張美容の根拠は美容師法第7条ただし書と、美容師法施行令第4条です。
  • 2026年3月26日の通知とQ&Aで、対象となる方の考え方が明確化されました。
  • 仕事の都合で外出の時間を確保できない方も、条件次第で対象になり得ます。
  • 施術時に美容師免許証(本証または写し)を携行し、求めがあれば提示する必要があります。
  • 都道府県や市区の条例により届出の要否が異なるため、所管の保健所への確認が必要です。

出張美容の根拠となる法令を正しく押さえる

結論として、出張美容の可否を決めているのは美容師法第7条と、その委任を受けた美容師法施行令第4条です。

美容師法第7条は「美容師は、美容所以外の場所において、美容の業をしてはならない。ただし、政令で定める特別の事情がある場合には、この限りでない」と定めています。原則は禁止で、例外が政令で列挙されている構造です。

その政令にあたるのが美容師法施行令(昭和32年政令第277号)第4条で、次の3つが挙げられています。

  • 疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者に対して美容を行う場合
  • 婚礼その他の儀式に参列する者に対して、その儀式の直前に美容を行う場合
  • 前2号に定めるもののほか、都道府県(保健所を設置する市・特別区)が条例で定める場合

ここで重要なのが3号です。条例で定める場合が認められているため、実際に何が対象になるかは自治体によって変わります。全国一律のルールではない、という前提を最初に押さえておく必要があります。

注意点として、出張美容の対象範囲を定めた条文が「美容師法施行規則」にあると説明されることがありますが、正確には施行令(政令)です。条文を確認する際は、施行令第4条をご覧ください。

【要点まとめ】
  • 美容所以外での美容業は原則禁止で、政令で定める場合のみ例外です。
  • 根拠は美容師法第7条ただし書と、美容師法施行令第4条です。
  • 施行令第4条は、疾病等・儀式の直前・条例で定める場合の3つを挙げています。
  • 条例で定める部分があるため、対象範囲は自治体によって異なります。

2026年3月の改正で何が変わったのか

結論として、2026年3月26日に発出された通知とQ&Aによって、「美容所に来ることができない者」の解釈が明確化されました。

理由は、従来の運用では対象が疾病・障害・介護といった限られた状況に読まれがちで、実態と合わない場面が出てきていたためです。改正の対象となったのは、2016年3月24日付の従来通知です。

具体的に示された内容を見てみます。Q&Aでは「要介護状態にある等」の「等」について、入所施設にいる方、疾病や障害等のため美容所で施術を完了することが困難な方、外出が困難な妊婦、精神的・心理的な理由により外出が困難な方などが考えられるとしたうえで、次のような記述が加わりました。

「常時対応が求められる等の業務や勤務環境で、理容所・美容所の営業時間中に外出する時間の確保が困難である場合も考えられる」。また、仕事をしながら育児や介護を行っている場合についても、「時間的に拘束される業務を行っていて、外出する時間の確保が困難である場合には対象となり得る」とされています。

注意点として、この変更は法令そのものの改正ではなく、通知に付されたQ&A(事務連絡)による解釈の明確化です。「規制緩和で誰でも出張美容が可能になった」という理解は正確ではありません。Q&Aには歯止めも示されており、たとえば骨折していてもタクシーを使って日常的に外出している場合は「来ることが困難」とは認められない、という趣旨の記述があります。

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【要点まとめ】
  • 2026年3月26日の通知とQ&Aで、対象者の解釈が明確化されました。
  • 業務や勤務環境の事情で外出の時間を確保できない場合も、対象となり得ます。
  • 仕事と育児・介護の両立で時間的な拘束がある場合も含まれ得ます。
  • 法令改正ではなくQ&Aによる解釈の明確化であり、無条件の緩和ではありません。

新たに求められる免許証の携行・提示

結論として、同じ2026年3月26日付で衛生管理要領も改正され、出張施術時の免許証の携行・提示が新たに求められるようになりました。

理由は、施術者が有資格者であることを利用者が確認できるようにするためです。要領には「出張理容・出張美容を行う際には、理容師又は美容師であることを証明するもの(免許証の本証又は写し)を持参し、利用者等から求めがあった場合にはそれを提示すること」と記載されています。

具体的な実務としては、免許証のコピーを施術キットに常備しておくのが簡単です。複数のスタッフが交代で出張施術を行う場合は、それぞれの写しを個別に用意しておく必要があります。

あわせて、器具の消毒方法について参照すべき手引きも更新されました。従来の資料から、2022年3月11日付の通知にもとづく内容へ切り替わっています。消毒済みの布片・器具・容器、消毒薬、救急薬品を携行すること、清潔な作業衣を着用すること、顔面の施術時にマスクを使用することなどは、従来から求められている基本です。

注意点として、衛生管理要領そのものは2007年に定められたもので、今回の改正はその一部改正という位置づけです。全体の要求水準を把握しておきたい場合は、要領本体にも目を通しておくことをおすすめします。

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【要点まとめ】
  • 2026年3月26日付で衛生管理要領が一部改正されました。
  • 免許証の本証または写しを携行し、求めがあれば提示することが必要です。
  • 器具消毒について参照する手引きが2022年の通知にもとづくものへ更新されました。
  • 清潔な作業衣、マスク、消毒済み器具の携行などは従来からの基本です。

始める前に必ず確認すべき、自治体ごとの違い

結論として、出張美容を始める前に必ず確認すべきなのは、所管の保健所における届出の要否と、対象範囲の定めです。ここが自治体によってまったく異なります。

理由は、施行令第4条第3号が条例への委任を認めているためです。各自治体が地域の実情に応じて上乗せの規定を設けています。

具体例を挙げると、届出が不要とされている自治体がある一方で、事前の届出を求める自治体もあります。承認申請の手続きを設けている自治体もあります。対象範囲についても、社会福祉施設や病院に加えて「専ら利用者に美容業を提供する自動車」を明記している自治体、船舶の乗組員を対象に含めている自治体など、内容はさまざまです。1年以内の健康診断の受診を求めている自治体もあります。

注意点として、2026年9月時点で、多くの自治体の公式ページはまだ新しいQ&Aの内容を反映していません。中には従来の解釈のまま「仕事や家事で行く時間がない場合は対象外」と記載している自治体もあります。こうした状況では、ウェブサイトの記載だけを根拠に判断せず、所管の保健所へ直接確認することが確実です。

【要点まとめ】
  • 届出の要否は自治体によって異なり、不要な地域も必要な地域もあります。
  • 条例で対象範囲が上乗せされている場合があります。
  • 健康診断の受診を求める自治体もあります。
  • 自治体サイトが最新のQ&Aを反映していない場合があるため、保健所への直接確認が確実です。

サロンの選択肢として考えるときの視点

結論として、出張美容は「新しい集客チャネル」というより、「既存のお客様との関係を切らさない手段」として捉えるほうが現実的です。

理由は、出張美容の対象が、あくまで美容所へ来ることが困難な方に限られているためです。誰でも呼べるサービスではない以上、新規のお客様を大量に獲得する性質のものではありません。

具体的に考えると、可能性があるのは既存のお客様の中です。長く通ってくださっていた方が、体調やご家族の介護、勤務環境の変化によって来店できなくなるケースは、どのサロンにも起こります。これまでは自然と失客になっていたその層に、継続の選択肢を提示できるようになった、という捉え方ができます。

市場全体で見ると、美容所の数は増え続けています。厚生労働省の衛生行政報告例によれば、2024年度末時点の美容所数は277,752施設で、前年度から3,682施設の増加です。従業美容師数も588,291人と増えています。店舗が増える一方で市場は縮小傾向にあり、既存のお客様を失わない仕組みの重要性は増していると考えられます。

注意点として、出張美容の市場規模や事業者数に関する公的な統計は存在しません。「これだけの市場がある」といった数字が示されることがありますが、出所が確認できないものは判断材料にしないほうが安全です。実際に、出張美容とは無関係の統計が市場規模として引用されている例も見られます。

あわせて読みたい:
【要点まとめ】
  • 出張美容の対象は、美容所へ来ることが困難な方に限られます。
  • 新規獲得より、既存のお客様の継続手段として考えるのが現実的です。
  • 2024年度末の美容所数は277,752施設で、前年度から増加しています。
  • 出張美容の市場規模に関する公的統計はなく、出所不明の数字には注意が必要です。

まとめ:解釈は広がったが、確認すべきことは増えた

2026年3月の通知とQ&Aによって、出張美容の対象となる方の考え方は明確になりました。勤務環境や育児・介護との両立によって外出の時間を確保できない方も、条件次第で対象になり得ます。長く通ってくださっていたお客様が来店できなくなったときの選択肢として、検討する価値はあるはずです。

一方で、免許証の携行・提示という新しい実務が加わり、自治体ごとの届出ルールも従来どおり残っています。制度の理解と手続きの確認を先に済ませておくことが、トラブルを避ける近道です。

まずは所管の保健所に、自治体の条例上の対象範囲と届出の要否を確認するところから始めてください。厚生労働省の通知本文とQ&Aは公開されているため、あわせて目を通しておくと、保健所への相談もスムーズに進みます。

FAQ:出張美容について、よくある質問

Q. 出張美容はどんな場合に認められますか?
A. 美容師法施行令第4条により、疾病その他の理由で美容所に来ることができない方、婚礼その他の儀式に参列する方への儀式直前の施術、および都道府県などが条例で定める場合に限られます。2026年3月のQ&Aでは、勤務環境の事情で営業時間中に外出する時間を確保できない場合も対象となり得ることが示されました。

Q. 2026年の改正で規制は緩和されたのですか?
A. 法令そのものが改正されたわけではなく、通知に付されたQ&Aによって「美容所に来ることができない者」の解釈が明確化されたものです。対象が広がり得る一方で、日常的に外出できている場合は対象と認められないという歯止めも示されています。誰でも出張美容を受けられるようになったわけではありません。

Q. 出張美容を始めるには届出が必要ですか?
A. 自治体によって異なります。届出が不要とされている地域もあれば、事前の届出や承認申請を求める地域もあります。対象範囲についても条例で上乗せがある場合があるため、必ず所管の保健所へ直接ご確認ください。自治体のウェブサイトは最新の通知を反映していないことがあります。

Q. 出張施術のときに持っていくものはありますか?
A. 2026年3月の衛生管理要領の改正により、美容師免許証の本証または写しを携行し、求めがあれば提示することが必要になりました。あわせて、消毒済みの布片・器具・容器、消毒薬、救急薬品の携行、清潔な作業衣の着用なども従来から求められています。

Q. 出張美容でどのくらいの売上が見込めますか?
A. 出張美容の市場規模や事業者数に関する公的な統計は公表されていません。そのため、一般的な売上の目安を示すことはできません。対象が美容所に来ることが困難な方に限られる性質上、新規獲得の手段というより、既存のお客様との関係を継続する手段として検討するのが現実的と考えられます。

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