2店舗目を出す?出さない?:出店判断チェックリストと損益シミュレーション
更新日:2025年11月3日
人材確保と育成の体制が整っていなければ、オーナーが現場に縛られ続けます。
損益分岐点と必要売上を事前に試算し、資金繰りに余裕を持つことが不可欠です。
出店エリアの商圏分析と競合調査で、勝算のある立地を見極めましょう。
出さない選択も戦略です。1店舗の深掘りで収益を最大化する道もあります。
1店舗目の実力を見極める:出店の大前提
2店舗目を出すかどうかの判断で、最初に確認すべきは1店舗目の収益性です。「売上が伸びてきた」という感覚だけでは不十分で、数字で経営状態を正確に把握する必要があります。
まず確認すべきは営業利益率です。一般的に、美容サロンの健全な営業利益率は15%から20%が目安とされています。売上から変動費を引いた貢献利益率が高く、固定費を差し引いても安定した利益が出ているかを確認しましょう。利益率が10%を下回る状態では、2店舗目の開業資金や運転資金を確保することは困難です。
次に、リピート率と顧客単価の安定性を見ます。新規顧客のリピート率が50%以上、既存顧客のリピート率が90%前後であることが理想です。顧客単価が安定し、予約が埋まりやすい状態であれば、経営モデルとして再現性があると判断できます。逆に、大手集客サイトのクーポン頼みで新規顧客ばかりが来店している状態では、2店舗目でも同じ構造を繰り返すだけで収益改善にはつながりません。
さらに、オーナー自身が現場から離れられる体制が整っているかも重要な判断材料です。もしオーナーが施術や予約対応に追われ、1店舗目の運営を任せられる店長やスタッフがいない場合、2店舗目を出してもオーナーが二つの店舗を行き来する日々になり、経営判断どころではなくなります。
- 営業利益率15%以上が目安。利益率10%未満なら再検討が必要です
- リピート率50%以上、顧客単価の安定が経営モデルの再現性を示します
- オーナーが現場から離れ、経営判断に集中できる体制が前提です
人材確保と育成体制:最大のボトルネック
2店舗目の出店で最も大きな壁となるのが、人材の確保と育成です。美容業界では新卒美容師の入社1年以内の離職率が31%、3年以内では50%に達するというデータがあり、人材の定着が極めて難しい現実があります。
2店舗目を出すということは、最低でも新店舗に配置する店長候補1名、スタイリスト1名から2名、アシスタント1名から2名の計4名から5名のスタッフが必要になります。さらに、既存店からスタッフを異動させる場合、既存店の稼働率が下がり売上に影響が出るリスクもあります。したがって、新規採用と内部育成の両輪で計画的に人員を確保する必要があります。
人材育成においては、技術の均一化が不可欠です。どのスタッフが担当しても一定水準以上のサービスが提供できる仕組みを作らなければ、顧客満足度にばらつきが生じ、ブランドイメージが損なわれます。マニュアル化された研修プログラムや定期的な技術チェック、接客ロールプレイングなどを通じて、サロン全体の技術力と接客力を標準化する取り組みが求められます。
また、スタッフのモチベーション管理も重要です。報酬体系を明確にし、売上や技術向上に応じた評価制度を導入することで、スタッフが成長意欲を持ち続けられる環境を整えましょう。柔軟な勤務体制や育児休業制度など、働きやすさへの配慮も離職率を下げる効果があります。ある老舗美容室では、スタッフの労務環境改善により8年間離職率ゼロを達成した事例もあります。
- 2店舗目には店長候補含め4名から5名のスタッフが必要です
- 技術と接客の均一化で、どのスタッフでも高品質なサービスを提供できる体制を整えます
- 報酬制度と労務環境の改善で、スタッフの定着率を高めましょう
資金計画と損益分岐点:数字で判断する
2店舗目の出店には、開業資金だけでなく運転資金も含めた綿密な資金計画が必要です。開業資金の目安は、物件取得費、内装工事費、設備・備品購入費を合わせて500万円から1,500万円程度が一般的ですが、立地や規模によって大きく変動します。
さらに重要なのが運転資金です。開業後すぐに黒字化することは稀で、軌道に乗るまでに3ヶ月から6ヶ月程度かかることを想定する必要があります。この期間の家賃、人件費、広告費、材料費などを賄うために、最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金を確保しておくことが推奨されます。
損益分岐点の計算も欠かせません。損益分岐点売上高とは、収支がトントンになる売上の水準であり、これを下回ると赤字になります。計算式は「固定費÷(1−変動費率)」で求められます。
例えば、2店舗目の固定費が月60万円(家賃15万円、人件費35万円、広告費5万円、その他5万円)、変動費率が15%(材料費10%、決済手数料3%、光熱費2%)の場合、損益分岐点売上高は約70.6万円となります。つまり、月に71万円以上の売上がなければ赤字になるということです。
さらに、目標利益を達成するための必要売上高も試算しましょう。例えば月20万円の利益を出したい場合、必要売上高は「(固定費60万円+目標利益20万円)÷0.85=約94万円」となります。この売上を達成するために、客単価8,000円なら月に118人の来店が必要で、1日あたり約4人から5人の予約を埋める計算になります。
こうした数字を事前に試算することで、現実的な事業計画が立てられます。BeautyMeritの予約管理システムを活用すれば、既存店の売上データや顧客単価、来店頻度などを分析し、より精度の高いシミュレーションが可能です。
- 開業資金500万円から1,500万円に加え、3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を確保します
- 損益分岐点売上高を計算し、最低限必要な売上水準を把握しましょう
- 目標利益から逆算した必要売上高と、それを達成するための来店客数を試算します
商圏分析と立地選定:勝算のあるエリアを見極める
2店舗目の成否を大きく左右するのが立地選定です。既存店と同じエリアに出すのか、別のエリアに進出するのかによって、戦略は大きく変わります。
同一商圏内に2店舗目を出す場合、既存店の顧客を奪い合う「カニバリゼーション」のリスクがあります。一方で、ブランド認知度が高まり、予約の分散によって機会損失を減らせるメリットもあります。既存店が予約で埋まりやすく、断っている顧客が多い状況であれば、同一商圏での出店も有効な選択肢です。
別のエリアに進出する場合は、商圏分析が不可欠です。人口動態、年齢分布、所得層、駅の乗降客数、競合店舗数などを調査し、ターゲット顧客層が十分に存在するかを見極めます。特に、既存店と同じターゲット層が多く住むエリアであれば、既存の経営ノウハウを活かしやすくなります。
競合調査も重要です。近隣に大型チェーン店が多い激戦区では、新規参入のハードルが高くなります。一方で、個人サロンが多く価格帯やサービス内容で差別化できるエリアなら、独自性を打ち出すことで優位に立てる可能性があります。Googleマップやグルメサイトで周辺サロンの口コミや評価を確認し、どのようなサービスが求められているかをリサーチしましょう。
立地選定では、家賃が売上に占める割合も考慮します。理想的な家賃比率は売上の10%から15%以内とされており、これを超えると経営を圧迫します。好立地であっても家賃が高すぎる物件は避け、バランスの取れた立地を選ぶことが大切です。
- 同一商圏内の出店は既存店との共食いリスクと予約分散効果を比較検討します
- 別エリアは人口動態、競合状況、ターゲット層の存在を商圏分析で確認します
- 家賃比率は売上の10%から15%以内を目安にし、収益性とのバランスを重視します
オペレーション体制とシステム化:再現性を高める
2店舗目を成功させるには、1店舗目で培った経営ノウハウを標準化し、再現可能な仕組みとして確立することが必須です。オーナーの感覚や経験に頼った属人的な経営では、店舗が増えるほど管理が行き届かなくなります。
まず、業務マニュアルの整備が基本です。接客フロー、カウンセリング方法、施術手順、予約対応、会計処理、清掃ルールなど、日常業務のすべてを文書化します。これにより、新しいスタッフでも一定水準のサービスを提供できるようになり、教育コストも削減できます。
予約管理システムや顧客管理システムの導入も重要です。複数店舗の予約状況を一元管理できるシステムを使えば、オーナーは離れた場所からでも各店舗の稼働率や売上をリアルタイムで把握できます。顧客情報も共有されるため、既存店の顧客が新店舗を利用する際にもスムーズな対応が可能です。
在庫管理と発注の仕組み化も欠かせません。材料費は変動費の大部分を占めるため、適切な在庫管理で無駄を減らすことが利益率向上につながります。発注基準を明確にし、定期的な棚卸しで過剰在庫や品切れを防ぎましょう。
さらに、店舗間の情報共有体制も整えます。定期的なミーティングや報告の仕組みを作り、成功事例や課題を共有することで、組織全体のレベルアップが図れます。オーナーが全店舗を巡回する頻度や、店長への権限委譲の範囲も事前に決めておくとスムーズです。
- 業務マニュアルで接客や施術の手順を標準化し、属人性を排除します
- 予約・顧客管理システムで複数店舗を一元管理し、経営の見える化を実現します
- 在庫管理と情報共有の仕組みで、無駄なコストを削減し組織力を高めます
出さない選択肢:1店舗集中戦略のメリット
ここまで2店舗目の出店について解説してきましたが、実は「出さない」という選択肢も立派な戦略です。無理に多店舗展開を急ぐよりも、1店舗に経営資源を集中させることで、より高い収益性と顧客満足度を実現できるケースも多くあります。
1店舗集中のメリットの一つは、オーナーが経営戦略に専念できることです。複数店舗を管理すると、どうしても移動や現場対応に時間を取られ、マーケティングやサービス改善といった経営の本質に集中しづらくなります。1店舗であれば、顧客一人ひとりとの関係を深め、リピート率や客単価を最大化する施策に注力できます。
また、高単価メニューの開発や店販商品の強化によって、売上を伸ばす方法もあります。例えば、トリートメントやヘッドスパなどのケアメニューを充実させ、ケアサービス比率50%、店販購入客比率20%を目指すことで、客単価を大幅に引き上げられます。ある成功事例では、60分8,000円から10,000円のトリートメントメニューを導入し、顧客単価と利益率を同時に向上させています。
さらに、訪問美容サービスへの展開も選択肢の一つです。店舗を持たずに高齢者施設や個人宅への出張サービスを提供することで、固定費を抑えながら新たな収益源を確保できます。実際に、地方の小規模美容室が訪問美容に注力し、安定した顧客基盤を築いた事例もあります。
1店舗集中戦略では、スタッフ教育にも十分な時間を割けるため、技術力と接客力の向上がしやすく、結果として顧客満足度が高まります。顧客再来店率90%を達成しているサロンも、スタッフの満足度向上と丁寧な顧客対応を徹底することで実現しています。
- 1店舗集中でオーナーが経営戦略に専念し、顧客満足度を最大化できます
- 高単価メニューや店販強化で、客単価と利益率を向上させる方法もあります
- 訪問美容など新サービス展開で、店舗を増やさずに収益源を多様化できます
まとめ:冷静な判断で未来を切り拓く
2店舗目の出店は、売上拡大の大きなチャンスである一方、経営リスクも伴う重要な意思決定です。成功の鍵は、感覚や勢いではなく、数字とデータに基づいた冷静な判断にあります。
まず、1店舗目が十分な収益性を持ち、再現可能な経営モデルとして確立されているかを確認しましょう。営業利益率15%以上、リピート率50%以上が一つの目安です。人材確保と育成体制が整っており、オーナーが現場から離れられる状態であることも前提条件です。
資金面では、開業資金に加えて3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を確保し、損益分岐点と必要売上高を事前に試算します。商圏分析と立地選定では、人口動態や競合状況を調査し、勝算のあるエリアを見極めることが重要です。
業務の標準化とシステム化により、属人的な経営から脱却し、複数店舗でも品質を保てる仕組みを作りましょう。予約管理システムや顧客管理システムを活用すれば、経営の見える化が進み、的確な判断ができるようになります。
そして、「出さない」という選択肢も忘れないでください。1店舗に経営資源を集中させ、客単価向上や新サービス開発に注力することで、無理な拡大をせずに安定した収益を確保できます。
最終的には、あなた自身の経営ビジョンと、サロンが目指す姿に照らし合わせて判断することが大切です。多店舗展開で地域に複数の拠点を持つのか、1店舗で圧倒的な顧客満足度を追求するのか。どちらの道を選ぶにしても、準備と計画を怠らず、着実に前へ進んでいきましょう。
よくある質問
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