サロンの電子帳簿保存法対応|レシート・請求書の電子保存を無理なく始める
更新日:2026年7月6日
メールで届いた請求書のPDF、ネット予約サービスの利用明細、ECで仕入れた薬剤の領収書——。これらを「印刷して紙で保管」していませんか。2024年から、電子で受け取った取引データは電子のまま保存することが原則になりました。電子帳簿保存法(電帳法)です。難しそうに見えますが、小規模サロンには負担を抑える緩和策も用意されています。この記事では、何が対象で、最低限どこを押さえればよいのかを、わかりやすく整理します。なお税務の最終判断は、顧問税理士や所轄税務署にご確認ください。
- 電子で受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存するのが原則です(2024年〜)。
- 対象は個人事業主を含むすべての保存義務者。売上規模を問わず関係します。
- 守るのは「真実性の確保」と「可視性の確保」。タイムスタンプは必須ではありません。
- 売上5,000万円以下なら検索要件が不要になるなど、小規模向けの緩和があります。
- 紙で受け取った領収書のスキャン保存は義務ではなく、任意の制度です。
「電子で受け取った書類」を、紙で保存していませんか
まず、いちばん誤解されやすい点から。電帳法で2024年から義務になったのは、『電子でやり取りした取引データを、電子のまま保存すること』です。
たとえば、メールに添付されて届いた請求書のPDF、予約・決済サービスからダウンロードする利用明細、ネットで仕入れた材料の領収書。これらはデータで受け取っている以上、印刷して紙で保管し、データは捨てる——という従来のやり方が原則として認められなくなりました。
逆に言えば、紙でもらった領収書や請求書は、これまで通り紙で保存して構いません。『2024年から紙の保存は一切ダメ』というのは誤解です。あくまで対象は『電子で授受したデータ』。ここを取り違えると、不要な作業に追われたり、必要な対応が抜け落ちたりします。
あわせて読みたい:- 電子で受け取ったデータは電子のまま保存するのが原則です。
- 対象はメール添付の請求書やネット仕入れの領収書などです。
- 紙で受け取った書類は従来どおり紙保存で構いません。
対象は誰?——個人サロンも例外ではない
「うちは個人だから関係ない」と思いたくなりますが、そうはいきません。電帳法の電子取引データ保存は、所得税・法人税の保存義務者すべてが対象です。個人事業主のサロンも、法人化した店も、規模に関係なく含まれます。
対象となる『取引情報』は、請求書・領収書・契約書・見積書・注文書などをデータで授受したもの。サロンの日常で言えば、ディーラーからのメール請求書、サブスクツールの利用明細、ネット通販の領収書あたりが典型です。
とはいえ、すべてを完璧なシステムで管理しなければならない、という話ではありません。次に見るように、満たすべき要件はシンプルで、小規模事業者向けの抜け道も用意されています。怖がりすぎず、まず自店にどんな電子取引があるかを洗い出すところから始めましょう。
- 電子取引データの保存義務は個人事業主も対象です。
- 請求書・領収書・明細などをデータで授受したものが該当します。
- まず自店の電子取引を洗い出すことから始めます。
守る要件は2つ。タイムスタンプは必須ではない
保存にあたって満たすべき要件は、大きく2つです。『真実性の確保』と『可視性の確保』。言葉は固いですが、中身は意外と現実的です。
真実性の確保は、データが改ざんされていないことを担保する措置で、次の4つの『いずれか1つ』でかまいません。①タイムスタンプ付きで授受する、②受け取り後にタイムスタンプを付す、③訂正・削除の履歴が残る(または訂正削除できない)システムを使う、④訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する。ここで大事なのは、タイムスタンプは必須ではないという点。④の事務処理規程を整えるだけでも要件を満たせます。規程のひな型は国税庁が無料で公開しています。
もう一方の可視性の確保は、画面やプリンタで速やかに見られること、そして取引年月日・金額・取引先で検索できること。これも次に述べる緩和の対象になります。まずは『タイムスタンプがないと無理』という思い込みを外しておきましょう。
あわせて読みたい:- 要件は「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つです。
- 真実性は4つの選択肢のいずれか1つでよく、規程整備でも可です。
- タイムスタンプは必須ではありません。
小規模サロンを助ける、緩和と猶予
電帳法には、小さな事業者ほど助かる緩和措置があります。知らずに高い仕組みを導入する前に、押さえておきたいところです。
ひとつは検索要件の緩和。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、検索機能の確保そのものが不要になります(税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられることが前提)。多くの個人サロン・小規模店はここに当てはまるはずです。
もうひとつが『相当の理由』による猶予措置です。要件どおりに保存できないことに相当の理由があると所轄税務署長が認め、かつ調査の際にデータのダウンロードの求めと出力書面の提示・提出の両方に応じられれば、改ざん防止や検索の対応は不要で、データを保存しておくだけでよいとされています。事前申請も要りません。ただし『猶予があるから何もしなくていい』ではなく、データ自体は残しておく必要がある点に注意してください。
- 売上5,000万円以下なら検索要件の確保が不要になります。
- 「相当の理由」による猶予措置があり、事前申請も不要です。
- 猶予でも電子データ自体は残す必要があります。
紙の領収書のスキャナ保存は「任意」
電帳法には『スキャナ保存』という制度もあります。紙で受け取った領収書や請求書を、スキャンして画像データで保存できる仕組みです。
ここで大事なのは、スキャナ保存はあくまで任意だということ。やってもやらなくても構いません。電子取引データの保存(義務)とは別物なので、混同しないようにします。『電帳法で全部スキャンしないといけない』というのは誤解です。
ただ、ペーパーレスを進めたい店にとっては便利な選択肢です。近年は要件も緩和され、解像度などの情報保存や入力者情報の確認が不要になるなど、使いやすくなってきました。紙の山を減らしたいなら、義務の対応が落ち着いた後に、任意で取り入れていくとよいでしょう。
あわせて読みたい:- 紙書類のスキャナ保存は義務ではなく任意の制度です。
- 電子取引データの保存義務とは別物で混同に注意します。
- ペーパーレスを進めたい店には便利な選択肢です。
無理なく始める、実務の手順
最後に、何から手をつけるかです。一気に完璧を目指さず、順番に進めれば十分対応できます。
まず、自店の電子取引を洗い出す。メール請求書、各種ツールの明細、ネット仕入れの領収書などをリスト化します。次に、売上5,000万円以下なら検索要件は不要なので、改ざん防止は『事務処理規程』で対応できないか検討する。国税庁のひな型を使えば、システム導入なしでも始められます。そのうえで、保存フォルダと『日付_取引先_金額』のような命名ルールを決め、すぐ取り出せる状態にしておきます。
電帳法の保存要件そのものは、会計ソフトなど要件を満たすツールで整えるのが基本です。日々の会計まわりを整理しておくと、こうした対応もぐっと進めやすくなります。判断に迷う点は、顧問税理士に確認しながら進めましょう。
あわせて読みたい:- まず電子取引を洗い出し、リスト化します。
- 改ざん防止は事務処理規程(無料ひな型)で対応できます。
- 保存要件は会計ソフト等で整え、税理士に確認しながら進めます。
まとめ|怖がらず、対象と要件を正しく押さえる
電子帳簿保存法は、名前こそ難しそうですが、要点は限られています。電子で受け取った請求書・領収書は電子のまま保存する。守る要件は真実性と可視性の2つで、タイムスタンプは必須ではなく、規程整備でも対応できる。売上5,000万円以下なら検索要件は不要で、『相当の理由』による猶予もある。紙のスキャナ保存は任意。これだけ押さえれば、過剰な投資をせずに対応できます。まずは自店の電子取引の洗い出しから始め、迷う点は顧問税理士や所轄税務署に確認してください。難しそうな名前に身構えず、対象と要件を正しく押さえることが何よりの近道です。
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