求職者へのセクハラ対策も義務に|サロン見学・面接・DMのルールを決める
更新日:2026年9月14日
- 求職者等へのセクハラ対策の義務化は2026年10月1日施行。根拠は改正男女雇用機会均等法です。
- 対象には応募者のほか、就職説明会やインターンシップの参加者、実習生も含まれます。
- 店外の飲食店での面談、懇親の場、SNSやDMのやり取りも「求職活動等」に含まれます。
- 求められる措置は方針の明確化、相談体制、事後対応、プライバシー保護等の4分類です。
- 採用活動を行っていない間は全項目を整えていなくても差し支えないとされていますが、募集を始めた時点で全ての履行が必要になります。
2026年10月1日から、何が義務になるのか
結論として、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための雇用管理上の措置が、事業主の義務になります。施行日は2026年10月1日です。
根拠は、2025年6月11日に公布された改正法により男女雇用機会均等法に新設された規定です。指針は2026年2月26日に告示されています。同じ日に、カスタマーハラスメント対策の義務化やパワーハラスメント指針の改正も施行されるため、ハラスメント関連の整備はまとめて進めるほうが効率的です。
具体的に押さえておきたいのは、中小企業への猶予がないことです。厚生労働省の資料には規模による適用猶予の記載がなく、事業主に規模の限定もありません。スタッフ数名のサロンでも、採用活動を行うのであれば対象になります。
注意点として、これは既存の「職場におけるセクシュアルハラスメント」の措置義務とは別のものです。従来の措置義務は自社で雇用する労働者を対象にしていましたが、今回は雇用関係にない求職者等が対象に加わりました。
- 施行日は2026年10月1日、根拠は改正男女雇用機会均等法です。
- 指針は2026年2月26日に告示されています。
- 中小企業への猶予は設けられていません。
- 雇用する労働者向けの既存の措置義務とは別に、新たに求められるものです。
「求職者等」に誰が含まれるのか
結論として、応募してきた方だけでなく、就職説明会の参加者、インターンシップ参加者、OB・OG訪問の相手、そして教育実習や看護実習などの実習生も含まれます。
理由は、厚生労働省の解釈Q&Aが範囲を明示しているためです。「求職者等」とは、雇用されようとして意思を表示している求職者に加え、事業主が行う労働者の採用に資する活動に参加する者や、教育実習、看護実習等の実習を受ける者を指すとされています。
一方で、含まれないものも明示されています。授業の一環としての社会科見学や、企業を招いた講演会など、専ら教育を目的として行われるものに参加する者は「求職者等」に該当しないとされています。
具体例として、美容サロンでよくある場面を整理します。求人に応募して面接に来た方は当然含まれます。求人サイト経由で問い合わせてきた方も含まれます。美容専門学校の学生がサロン見学に来る場合は、採用につなげる目的の見学であれば含まれると考えられます。一方、学校の授業として複数の店舗を回る社会科見学であれば、専ら教育目的として含まれない可能性があります。
注意点として、この区別は目的によって決まります。「サロン見学」という同じ呼び方でも、採用に資する活動なのか、授業の一環なのかで結論が変わります。実務では、どちらか判断がつかない場合は含まれる前提で対応するのが安全です。
あわせて読みたい:- 応募者、説明会参加者、インターンシップ参加者、OB・OG訪問の相手が含まれます。
- 教育実習、看護実習などの実習を受ける者も含まれます。
- 授業の一環としての社会科見学や講演会の参加者は含まれないとされています。
- 採用目的のサロン見学は含まれると考えられ、判断に迷う場合は含まれる前提で対応します。
店の外での面談やDMも対象になります
結論として、対象になるのは店内でのやり取りだけではありません。飲食店での面談、懇親の場、SNSやDMでのやり取りも「求職活動等」に含まれます。
理由は、厚生労働省の解釈Q&Aが範囲を明示しているためです。求職活動等には、事業主が雇用する労働者が通常就業している場所で行われるものに限らず、OB・OG訪問を行うための飲食店、就職説明会を行うための貸し会議室や学校のキャンパス等で行われるものも含まれるとされています。さらに、懇親の場等であっても、実質上、事業主の採用に資する活動や実習の延長と考えられる場面で行われるものも含まれます。
指針本体にも、SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれる旨が記載されています。
具体例として、美容サロンの採用実務では次のような場面が該当し得ます。応募者と近くのカフェで話をする。見学に来た学生とそのまま食事に行く。スタイリストが個人のアカウントから応募者にDMを送る。面接後に「連絡しやすいから」と個人の連絡先を交換する。いずれも、店の外で、記録の残らない形で行われがちな場面です。
注意点として、これらの場面をすべて禁止する必要はありません。求められているのは、どういう場面でどう行うかのルールをあらかじめ決めて周知することです。
- 飲食店での面談、貸し会議室、学校のキャンパスでのやり取りも含まれます。
- 懇親の場も、実質的に採用活動や実習の延長であれば含まれます。
- SNSやオンライン上のやり取りも対象です。
- 禁止ではなく、ルールを決めて周知することが求められています。
事業主に求められる4つの措置
結論として、求められる措置は4つの分類に整理されています。
指針が示す内容は次のとおりです。
1. 方針等の明確化およびその周知・啓発
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、スタッフへ周知・啓発すること
- 行為者について厳正に対処する旨の方針と対処の内容を就業規則等に規定し、スタッフへ周知・啓発すること
- 求職活動等に関するルールを事前に明確化すること
2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談窓口をあらかじめ定め、スタッフおよび求職者等に周知すること
- 相談窓口の担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにすること
3. 事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
- 被害を受けた求職者等に対する配慮の措置を行うこと
- 行為者に対する措置を行うこと
- 再発防止に向けた措置を講じること
4. 併せて講ずべき措置
- 相談者・行為者等のプライバシー保護に必要な措置を講じ、周知すること
- 相談したことや事実確認に協力したこと等を理由に不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発すること
注意点として、相談窓口は「スタッフおよび求職者等に周知」することが求められています。社内向けだけでなく、求職者が窓口を知ることができる状態にしておく必要がある、という点が既存のセクハラ対策との違いです。
- 措置は方針の明確化、相談体制、事後対応、プライバシー保護等の4分類です。
- 就業規則等への規定と、スタッフへの周知・啓発が求められます。
- 相談窓口はスタッフだけでなく、求職者等にも周知する必要があります。
- 相談したことを理由とする不利益取扱いは禁止されます。
「ルールの事前明確化」で決める4つのこと
結論として、事前に明確化すべきルールとして指針が挙げているのは、面談の時間、場所、実施体制、そしてやり取りに用いるSNSの種類です。
厚生労働省の解釈Q&Aでは、求職者等と面談等を行う際の規則として次のものが考えられるとされています。面談時間および場所の指定。実施体制(複数人で対応することとする等)。求職者等とのやり取りに用いるSNSの種類の指定。
具体的に、サロンで決めておくとよい内容を考えてみます。
- 時間:面接や見学は営業時間内、または閉店後の一定時刻までに行う
- 場所:原則として店舗内で行い、他のスタッフがいる時間帯を選ぶ
- 体制:面接は原則2名以上で対応する。1名で行う場合は事前に共有する
- 連絡手段:応募者との連絡は店舗の公式アカウントまたは採用専用のアドレスに限る。個人のアカウントは使わない
あわせて、指針は周知の方法についても示しています。スタッフに対しては研修や講習等を実施して周知・啓発すること。求職者等に対しては、上記の規則を踏まえた面談等に関する留意事項を、ホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知すること。この二方向の周知がセットになっています。
注意点として、指針は「面談時間および場所の指定」と書いているだけで、具体的な時間帯の制限までは定めていません。何時以降は不可といった線引きは、各サロンが自店の実情に合わせて決めることになります。
あわせて読みたい:- 明確化するのは面談の時間、場所、実施体制、使用するSNSの種類です。
- 実施体制の例として「複数人で対応する」が挙げられています。
- スタッフには研修等で、求職者等にはホームページ等で周知します。
- 具体的な時間帯の制限は指針に定めがなく、各サロンで決めることになります。
採用活動をしていない期間の扱い
結論として、採用活動を行っていない間は全項目を整えていなくても差し支えないとされています。ただし、募集を始めた時点で全ての措置義務を履行する必要があります。
厚生労働省の解釈Q&Aには、次の趣旨が示されています。定期的な採用活動を行っておらず、求職者等と労働者が接する機会がない場合は、指針に規定する措置を全て講じていなくとも差し支えないが、採用活動を開始し、求職者等に対する説明会や面接を実施することとなれば、その時点で全ての措置義務を履行する必要がある。
具体的に、これは小規模サロンにとって現実的な整理です。常時募集を出しているわけではないサロンであれば、10月1日の時点で全てが整っている必要はありません。ただし「求人を出す前に準備しておく」という段取りは必須になります。
注意点として、美容業界では急な欠員が出てから慌てて募集をかける場面が少なくありません。そのタイミングで一から整備するのは現実的ではないため、募集の有無にかかわらず、方針とルールだけは先に作っておくことをおすすめします。作業量としては、方針をA4一枚、面談ルールをA4一枚、あわせて2枚程度で足ります。
あわせて読みたい:- 採用活動を行っていない間は、全項目を講じていなくても差し支えないとされています。
- 説明会や面接を実施する時点で、全ての措置義務の履行が必要になります。
- 急な募集に備え、方針と面談ルールは先に作っておくのが現実的です。
- 作業量としてはA4二枚程度から始められます。
まとめ:面談ルールをA4一枚にして、採用ページに載せる
2026年10月1日から、求職者等へのセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務になります。対象は応募者だけでなく、説明会やインターンシップの参加者、実習生も含まれます。場所も店内に限られず、飲食店での面談やSNSのやり取りも「求職活動等」に含まれます。
やるべきことの中心は、面談ルールの事前明確化です。時間、場所、実施体制、使用するSNSの4点を決めてA4一枚にまとめ、スタッフに周知する。そのうえで、求職者向けの留意事項として採用ページに掲載する。相談窓口を決めて、そこにも記載する。この流れで、求められている措置の骨格は形になります。
採用活動をしていない期間は全項目を整えていなくても差し支えないとされていますが、募集を出した時点で全てが必要になります。急な欠員に備えて、9月中に方針とルールだけは作っておくことをおすすめします。就業規則への反映が必要かどうかは、所轄の労働局や社会保険労務士へご確認ください。
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