医療・介護施設とのパートナーシップで広げる訪問美容:現場調整とメニュー設計のポイント
更新日:2025年12月22日
料金は30分7,000円前後が目安で、介護保険適用外のため施設負担か利用者負担かを事前に明確化する必要があります。
メニューは従来のカット・カラーに加え、メイクやネイルケアなど細やかな心のケアを含む内容が評価されます。
施設管理者への営業では、男性には価格面を、女性には技術面を強調するなど相手に合わせたアプローチが効果的です。
感染症対策や器具の衛生管理ルールを徹底し、自治体の訪問美容支援制度も積極的に活用しましょう。
訪問美容が切り拓く新たな市場機会
結論から言えば、訪問美容は立地条件に左右されず、高齢化社会における確実な需要を捉えられる成長分野です。
美容業界では経営上の問題として「客数の減少」が8割のサロンで課題とされています。一方で、高齢者や障害をお持ちの方など、店舗への来店が困難な層は増加の一途を辿っており、この層へのアプローチは未開拓の市場といえます。実際に訪問美容サービスを開始したサロンでは、5年後には訪問での収入が主軸となったケースも報告されています。
訪問美容の最大の魅力は、サロンの立地や客数に依存しない収益構造を構築できる点です。医療・介護施設と定期契約を結ぶことで、月間の訪問スケジュールと収益を予測しやすくなり、経営の安定化につながります。また、高齢者に美容サービスを提供することで表情が明るくなるなど、やりがいの大きさも美容師のモチベーション向上に寄与します。
ただし、通常のサロン業務とは異なる専門知識や配慮が求められるため、スタッフの育成と施設側との綿密な調整が不可欠です。以下、具体的な進め方を段階的に解説していきます。
- 訪問美容は立地に左右されず、高齢化社会の確実な需要を捉える成長市場です
- 施設との定期契約により、安定した収益構造を構築できます
- 美容を通じて高齢者のQOL向上に貢献でき、スタッフのやりがいも大きい分野です
- 成功には医療・福祉知識の習得と施設との信頼関係構築が必須です
医療・介護施設との連携体制づくり
施設連携の第一歩は、信頼関係の構築から始まります。
訪問美容を施設に導入する際、まず重要なのは施設管理者や介護スタッフとの関係づくりです。施設側にとって、訪問美容サービスは利用者のQOL向上につながる付加価値であると同時に、外部業者の受け入れには慎重な判断が必要です。そのため、施設側が安心して受け入れられる体制を整えることが最優先となります。
具体的には、初回のアプローチで「お試し体験会」を提案する方法が効果的です。近隣の老人ホームや病院に営業をかけ、無料または特別料金でデモンストレーションを実施させてもらうことで、施設スタッフやご家族に実際のサービス品質を体感していただけます。実例では、高齢者の髪を切ったりお化粧をしたりすると喜びの声が上がり、本格導入につながったケースが多数報告されています。
営業時のポイントは、相手に合わせた訴求方法です。介護施設の管理者が男性の場合は料金面を明確に提示し、女性管理者の場合は施術技術や利用者への心理的効果を強調するなど、アプローチを変えることで契約率が向上します。また、施設内でのイベント出店(母の日・父の日キャンペーンや納涼祭での出張施術)を通じて、長期的な関係性を築く工夫も有効です。
契約締結時には、以下の項目を明確にすることでトラブルを防げます。訪問頻度(月何回、週何回)、対応人数の上限、料金体系(施設負担か利用者負担か)、感染症対策や衛生管理のルール、緊急時の連絡体制などです。特に理美容行為は介護保険適用外のため、料金設定と負担者を事前に明示しておく必要があります。
- お試し体験会で実際のサービス品質を施設側に体感してもらうことが信頼獲得の近道です
- 施設管理者の性別や立場に応じて、価格面と技術面を使い分けた営業が効果的です
- 契約時には訪問頻度、料金負担、衛生管理ルールを明文化してトラブルを防ぎます
- 施設内イベントへの参加など、継続的な関係構築が長期契約につながります
訪問美容に必要なスタッフ育成と専門知識
訪問美容の成功は、スタッフの専門性に大きく左右されます。
施設側から信頼を得るために最も重要なのは、医療・福祉の基礎知識を持ったスタッフの配置です。成功事例では、ホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の資格を取得したオーナーや、看護師資格を持つスタッフが在籍するチームが、体調変化や認知症の症状に配慮した対応ができるため、施設側からの信頼も厚く契約に結びついています。
美容室が新たに訪問美容を始める場合、まずはスタッフに介護の基礎研修を受けさせたり、福祉理美容師の資格取得を支援したりすることが推奨されます。全日本美容業生活衛生同業組合連合会(全美連)では、訪問美容に関する技能指導や経営支援を実施しており、こうした業界団体のサポートも積極的に活用すべきです。
技術面では、通常のサロン施術とは異なる配慮が求められます。たとえば車いすや寝たままの状態でも対応できる着付け技術、限られたスペースでの施術手順、寝たまま短時間で洗髪できる機材の使用方法などです。あるサロンでは、こうした特殊技術を定期研修で習得させることで、訪問美容師の育成体制を確立しています。
また、訪問美容では道具の準備と衛生管理も重要です。施術後の清掃に必要な道具(ホウキ、チリトリ、コロコロなど)を徹底して用意し、衛生的で快適なサービス環境を提供することが信頼の担保となります。移動手段については、訪問美容中の車にマグネット式の宣伝シートを貼ることで、地域への認知拡大にもつながります。
- ホームヘルパーや福祉理美容師などの資格取得が施設側の信頼獲得に直結します
- 車いすや寝たままでの施術技術など、訪問美容特有のスキル習得が必須です
- 施術後の清掃道具や衛生管理の徹底が、プロとしての信頼性を高めます
- 業界団体のサポートや定期研修を活用して、継続的なスキルアップを図りましょう
高齢者に響くメニュー設計と料金設定
訪問美容のメニュー設計では、高齢者特有のニーズに寄り添うことが重要です。
成功事例として注目されるのは、30分7,000円からのトータルケアを提供するチームです。このメニューは、従来のカット・カラーに加えて、ハンドマッサージ、フルメイク、眉カット、ネイルケアなど細やかなオプションを用意し、高齢者一人ひとりの希望に応じたケアを提供しています。重要なのは、単に身だしなみを整えるだけでなく「心のケアまで含めた内容」である点です。
プロの美容技術でお顔立ちを明るく整えると、利用者の方が鏡を見て笑顔になり、生き生きとした表情を取り戻す効果があります。実際、引きこもりがちな高齢者にパーマを施術すると、明るい色の洋服を選ぶようになり、次第に表情も明るくなるといった変化が報告されています。この「美容がもたらす心理的効果」こそが、訪問美容の最大の価値といえます。
料金設定については、介護保険適用外であるため実費での提供となり、やや高めの価格帯となります。しかし「プロによる安心・安全な施術」の価値を丁寧に伝えることで、適正価格での契約が可能です。施設負担なのか利用者本人負担なのかを明確にし、場合によっては自治体の訪問美容支援制度(利用者補助や事業者登録制度)を活用することで、利用者の経済的負担を軽減できます。
メニュー提案では、利用者の身体状況や認知機能に配慮した柔軟な対応が求められます。たとえば施術時間を30分程度に抑える短時間メニューや、体調に合わせて座位・臥位を選べるプランなど、高齢者特有の制約に対応したバリエーションを用意することで、より多くの方にサービスを提供できます。
- 30分7,000円前後のトータルケアが目安で、心のケアまで含めた価値提供が重要です
- カット・カラーに加え、メイクやネイルなど細やかなオプションが高齢者に喜ばれます
- 料金は介護保険適用外のため実費となり、負担者を事前に明確化する必要があります
- 自治体の訪問美容支援制度を活用することで、利用者の経済的負担を軽減できます
現場でのオペレーションと感染症対策
訪問美容の現場では、サロンとは異なる運営上の配慮が求められます。
まず訪問スケジュールの管理が重要です。成功事例では週1〜2回、契約する5つの介護施設を定期訪問し、延べ2〜16名の高齢者に施術を提供しています。施設との契約内容を明確化し(月何回訪問、何名まで対応等)、無理のない訪問計画を立てることで、スタッフの負担を軽減しながら安定したサービス提供が可能となります。
施設内でのオペレーションでは、施設職員との連携が不可欠です。利用者の体調確認や施術前の準備、施術中の見守りなど、施設スタッフのサポートを受けながら進めることで、安全性と満足度の両立が図れます。また訪問美容であってもサロン来店時と同様の「癒し」を提供できるよう、トーク内容、雰囲気(アロマや音楽等も時には利用)など、細やかな気遣いが評価されます。
感染症対策は最優先事項です。器具の衛生管理ルールを施設側と取り決め、使用する道具の消毒・滅菌を徹底します。特にコロナ禍以降、施設側の衛生基準は厳格化されているため、マスク着用、手指消毒、体調チェックなど基本的な感染予防策を確実に実施することが信頼維持につながります。
緊急時の対応体制も整えておきましょう。施術中に利用者の体調が急変した場合の連絡体制、保険の加入状況、責任範囲の明確化など、リスク管理の観点からも事前に施設側と協議しておくことが重要です。訪問美容は医療行為ではありませんが、高齢者を対象とする以上、万全の体制で臨む姿勢が求められます。
- 週1〜2回の定期訪問で、スタッフに無理のないスケジュール管理を心がけます
- 施設職員との連携により、利用者の体調確認や安全な施術環境を確保します
- 器具の消毒・滅菌や感染予防策の徹底が、施設側の信頼維持に直結します
- 緊急時の連絡体制や保険加入など、リスク管理の観点からも事前準備が必須です
訪問美容の認知拡大と集客戦略
訪問美容サービスは、地域住民への認知度向上が事業拡大の鍵となります。
在宅高齢者とその家族への訴求には、ホームページの作成や地域紙への広告掲載が効果的です。ある事例では「ルームシャンプーを使った訪問美容」編と「孫から訪問美容プレゼント」編の2種類のラジオCMを流し、訪問美容というサービス自体の認知度向上に成功しています。訪問美容は地域によってはまだ知られていないサービスであるため、まず「こういうサービスがある」ことを知ってもらう広報活動が重要です。
既存顧客からの紹介も有力な集客チャネルです。顧客名簿から在宅療養中で来店できないお客様にお声がけし、3名のお客様から訪問美容をスタートさせた事例があります。長年通っていただいたお客様が来店困難になった際、訪問美容で継続的にサービスを提供できることは、顧客満足度の向上とサロンへの信頼強化につながります。
地域のケアマネジャーや病院との連携も検討すべきです。ケアマネジャーは高齢者の生活全般を支援する立場にあり、訪問美容の情報を必要としている利用者を多く把握しています。病院や介護施設への営業展開に加えて、地域包括支援センターなどでサービス案内を配布することで、幅広い層へのアプローチが可能となります。
口コミの促進も忘れてはいけません。訪問美容サービスでは、口コミが新規顧客獲得に非常に効果的な手段となります。そのため顧客満足度を最大化し、施術後には丁寧なフォローアップ(次回訪問日の確認、体調の変化への気遣いなど)を行うことで、自然と紹介や評判が広がる仕組みを作りましょう。
- ホームページや地域紙、ラジオCMなど多様な媒体で訪問美容の認知度を高めます
- 既存顧客の中で来店困難になった方へのアプローチが、紹介拡大の起点となります
- ケアマネジャーや地域包括支援センターとの連携で、幅広い層にリーチできます
- 丁寧なフォローアップで顧客満足度を高め、口コミによる自然な拡散を促します
訪問美容を軌道に乗せるための実践ステップ
最後に、訪問美容事業を着実に成功させるためのロードマップを整理します。
まず事業開始にあたっては、個人の場合は管轄の税務署へ「開業届」を提出するなどの法的準備が必要です。また目的と目標額を明確に定めることで、施策の優先順位付けと進捗管理がしやすくなります。たとえば「月商30万円アップを目指す」といった具体的な数値目標を設定し、そこから逆算して必要な施設数や訪問頻度を算出します。
スタッフ体制の構築も計画的に進めます。訪問美容を専門に行うスタッフは、子育て中などフルタイム勤務が難しい美容師と連携することで、双方にメリットのある働き方を実現できます。今後訪問美容を広域で提供していくためにも、需要に合わせて連携する美容師を増やし、訪問美容師同士の人脈や仲間を創ることも情報交換や技術向上につながります。
施設との契約拡大は段階的に進めましょう。まず1〜2施設でサービスを開始し、運営ノウハウを蓄積した上で、他の施設へ営業展開していくアプローチが現実的です。施設ごとに利用者層や運営方針が異なるため、それぞれに合わせた提案内容や料金プランを柔軟に調整する姿勢が求められます。
長期的には、訪問美容ならではの強みをしっかりと確立することが、地域における訪問美容ビジネスモデルの成功につながります。医療・福祉の知識と美容技術を融合させたサービス、高齢者一人ひとりに寄り添う丁寧なケア、地域社会への貢献といった価値を体現することで、他のサービスとは一線を画す存在となれるでしょう。
- 開業届の提出や具体的な数値目標の設定など、事業基盤を整えます
- フルタイム勤務が難しい美容師との連携で、柔軟な働き方と人材確保を両立します
- 1〜2施設で実績を積んでから、段階的に契約施設を拡大していきます
- 医療・福祉知識と美容技術の融合で、地域における独自のポジションを確立します
まとめ
訪問美容は、高齢化社会における確実な需要を捉え、サロン経営の安定化と地域貢献を両立できる成長分野です。医療・介護施設との連携を成功させるには、スタッフの専門知識習得、明確な契約条件の設定、高齢者に寄り添ったメニュー設計、徹底した衛生管理、そして地域への認知拡大が不可欠です。
特に重要なのは、施設側との信頼関係を丁寧に構築することです。お試し体験会での実績提示、相手に合わせた営業アプローチ、契約内容の明文化、継続的なコミュニケーションを通じて、長期的なパートナーシップを築きましょう。また、訪問美容は単なる技術提供にとどまらず、高齢者の生きる力を引き出す「心のケア」でもあります。この価値を理解し、情熱を持って取り組むことが、事業成功への最短ルートとなります。
今日から始められるアクションとして、まずは近隣の介護施設へお試し体験会の提案をしてみてはいかがでしょうか。スタッフの介護基礎研修への参加、訪問用の機材準備、自治体の支援制度の確認など、できることから一歩ずつ進めていくことで、あなたのサロンにも新たな収益の柱が生まれるはずです。
よくある質問
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