面貸し・業務委託とフリーランス新法|サロンの確認事項
面貸し・業務委託とフリーランス新法|サロンが確認する書面・支払期日・相談体制

面貸し・業務委託とフリーランス新法|サロンが確認する書面・支払期日・相談体制

更新日:2026年9月14日

業務委託のスタイリストや面貸しを取り入れているサロンにとって、確認しておきたい法律があります。2024年11月に施行されたフリーランス新法です。発注する側にどんな義務があるかは、サロンが従業員を雇っているかどうかで大きく変わります。従業員ゼロなら義務は1つ、パートが1人いれば7つ。この違いを含めて整理します。
【大事なこと】
  • 正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。2024年11月1日に施行されています。
  • 発注側の義務は、従業員を使用しているかどうかで1つになったり7つになったりします。
  • 「従業員を使用する」とは、週20時間以上かつ31日以上継続して雇用する見込みの方がいる場合を指します。
  • 取引条件の明示は、従業員がいない個人サロンにも課される唯一の義務です。
  • 純粋な面貸しは対象外と考えられますが、業種別の公的な解釈は示されていません。

フリーランス新法とは、どういう法律なのか

結論として、フリーランス新法は、個人で仕事を受ける方と発注する事業者との間の取引を適正化し、就業環境を整備するための法律です。

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)。2023年5月12日に公布され、2024年11月1日から施行されています。所管は、取引の適正化に関する部分が公正取引委員会と中小企業庁、就業環境の整備に関する部分が厚生労働省です。

具体的に、この法律で「保護される側」にあたるのが特定受託事業者です。定義は、個人であって従業員を使用しないもの、または法人であって一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの、とされています。つまり、ひとりで働く美容師やネイリストは、まさにこの法律の中心的な対象です。

注意点として、この法律は「発注する側」の義務を定めるものです。サロンが業務委託でスタイリストに仕事を依頼している場合、サロンが発注側になります。

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【要点まとめ】
  • 正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。
  • 2023年5月12日公布、2024年11月1日施行です。
  • 保護される側は、従業員を使用しない個人または一人法人です。
  • サロンが業務委託で依頼している場合、サロンが発注側になります。

義務の数は、従業員を雇っているかで変わります

結論として、発注側の義務は「取引条件の明示」1つだけの場合と、7つすべてが課される場合に分かれます。分かれ目は、サロンが従業員を使用しているかどうかです。

理由は、法律が発注側を2種類に区別しているためです。すべての発注者にあたる「業務委託事業者」と、より重い義務が課される「特定業務委託事業者」です。後者の定義は、個人であって従業員を使用するもの、または法人であって二以上の役員があるか従業員を使用するもの、とされています。

ここで重要なのが「従業員を使用する」の判断基準です。公正取引委員会のQ&Aでは、週20時間以上かつ31日以上継続して雇用することが見込まれる労働者を雇用する場合が該当し、短期間・短時間のみの労働者は含まないとされています。派遣労働者についても、週20時間以上かつ31日以上の受入見込みがあれば該当するとされています。

具体例で整理します。オーナーがひとりで営むサロンが、業務委託の美容師に仕事を依頼している場合。従業員を使用していないため、課されるのは取引条件の明示だけです。一方、週25時間の受付スタッフを1名雇っているサロンであれば、特定業務委託事業者にあたり、7つの義務が視野に入ります。

注意点として、この判断は雇用契約の相手が誰かではなく、雇用しているかどうかで決まります。「業務委託の美容師しかいないから従業員ゼロ」と考えていても、受付や清掃をパートで雇っていれば、その方が基準を満たす限り従業員を使用していることになります。

【要点まとめ】
  • 発注側は「業務委託事業者」と「特定業務委託事業者」に分かれます。
  • 従業員を使用していなければ、義務は取引条件の明示のみです。
  • 「従業員を使用する」は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みが基準です。
  • 受付や清掃のパートも、基準を満たせば従業員に含まれます。

7つの義務と、それぞれの適用条件

結論として、7つの義務にはそれぞれ適用条件があり、取引期間によって発生するものとしないものがあります。

義務 適用対象 期間の条件
取引条件の明示 すべての業務委託事業者 なし
報酬支払期日の設定・期日内の支払 特定業務委託事業者 なし
7つの禁止行為 特定業務委託事業者 1か月以上
募集情報の的確表示 特定業務委託事業者 なし
育児介護等と業務の両立への配慮 特定業務委託事業者 6か月以上(未満は努力義務)
ハラスメント対策に係る体制整備 特定業務委託事業者 なし
中途解除等の事前予告・理由開示 特定業務委託事業者 6か月以上

禁止行為として挙げられているのは、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用の強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しの7つです。

具体的に、サロンで注意が必要になりそうなのは「購入・利用の強制」です。業務委託の美容師に対して、サロンが指定する薬剤や店販商品の購入を条件にしている場合、この禁止行為に触れる可能性があります。1か月以上の業務委託であることが前提ですが、継続的に依頼している関係であれば該当し得ます。

注意点として、「買いたたき」も見落とされやすい項目です。通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を一方的に定めることを指します。歩合率を一方的に引き下げるような場面では、この観点が問題になり得ます。

【要点まとめ】
  • 取引条件の明示は、期間の条件なくすべての発注者に課されます。
  • 禁止行為は1か月以上、両立への配慮と中途解除の予告は6か月以上の取引が条件です。
  • 禁止行為には「購入・利用の強制」と「買いたたき」が含まれます。
  • 薬剤や店販商品の購入を条件にする運用は、確認が必要です。

取引条件の明示(3条通知)で書くこと

結論として、取引条件の明示はすべての発注者に課される唯一の義務であり、書くべき項目が決まっています。

明示の方法は、書面または電磁的方法です。メールやSNS、チャットでも構いません。ただし、相手方から書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を交付する必要があります。

明示すべき項目は次のとおりです。

  • 業務委託事業者および特定受託事業者の名称(相手を識別できるもの)
  • 業務委託をした日
  • 給付の内容(品目、数量、規格、仕様。知的財産権の譲渡範囲を含む)
  • 給付を受領する期日、または役務の提供を受ける期日
  • 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所
  • 検査を完了する期日(検査をする場合)
  • 報酬の額および支払期日(具体的な金額または算定方法、支払期日は具体的な日付)
  • 金銭以外の方法で支払う場合はその方法

具体的に、美容サロンの業務委託契約では「報酬の額および支払期日」の書き方が実務上のポイントになります。歩合制であれば、率と算定の基礎を明記する必要があります。「売上の◯%」だけでなく、その売上が税込か税抜か、材料費を差し引くのかどうかまで書いておくと、後々のトラブルを防げます。

報酬の支払期日については、役務の提供を受けた日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に具体的な期日を定め、その期日内に支払うことが求められます。

注意点として、これは特定業務委託事業者に課される義務ですが、従業員を使用していないサロンでも、明示自体は必要です。「口約束でずっとやってきた」という関係であれば、この機会に書面化することをおすすめします。

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【要点まとめ】
  • 明示は書面または電磁的方法で行い、求めがあれば書面を交付します。
  • 明示事項は名称、委託日、給付の内容、期日、場所、報酬額と支払期日などです。
  • 歩合制の場合は、率だけでなく算定の基礎まで書くとトラブルを防げます。
  • 報酬は役務提供を受けた日から60日以内に支払います。

ハラスメント相談体制の整備も義務です

結論として、特定業務委託事業者には、業務委託先に対するハラスメント対策の体制整備が義務づけられています。

対象となるのは、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント、パワーハラスメントの3類型です。求められる措置は、雇用しているスタッフに対するハラスメント対策とよく似ています。

  • ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、周知・啓発すること
  • 相談窓口を設置し、業務委託先に周知すること
  • 事実関係の迅速かつ正確な確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止
  • 相談者・行為者のプライバシー保護、相談したこと等を理由とする契約解除その他の不利益取扱いをしない旨の定めと周知

具体的に、サロンでの実務を考えると、2026年10月1日から施行されるカスタマーハラスメント対策や求職者へのセクハラ対策と、方針文と相談窓口を共通化できます。別々に作る必要はありません。ハラスメント全般の方針を1つ用意し、対象に業務委託の美容師を含めておく形が現実的です。

注意点として、相談窓口はメールやアプリなど非対面の形でも構わないとされていますが、受理したことを確認できる機能が必要とされています。個人の携帯電話への連絡だけ、という運用は避けたほうがよいでしょう。

【要点まとめ】
  • セクハラ、妊娠出産等、パワハラの3類型が対象です。
  • 方針の明確化、相談窓口の設置と周知、事後対応が求められます。
  • 2026年10月施行のハラスメント対策と、方針文と窓口を共通化できます。
  • 相談窓口は非対面でも可ですが、受理を確認できる仕組みが必要です。

面貸しは対象になるのか

結論として、純粋な面貸しはこの法律の対象外と考えられますが、公的な業種別の解釈は示されていません。断定は避けるべき論点です。

理由は、法律が定める「業務委託」が、物品の製造・加工委託、情報成果物の作成委託、役務提供委託に限られているためです。公正取引委員会のQ&Aには、単に既にある物品等の貸出しを依頼することは、給付に係る仕様や内容等を指定していないため業務委託に該当しない、という趣旨の記述があります。

具体的に整理すると、次のように考えられます。

  • 純粋な面貸し:施術者が自ら集客し、お客様から直接代金を受け取り、サロンには席や設備の使用料を支払う形。サロンは「貸す側」であり「委託する側」ではないため、対象外と考えられます。
  • 業務委託スタイリスト:サロンが集客し、お客様から代金を受け取り、施術者に歩合を支払う形。これは役務提供委託の構造にあたり、対象になり得ます。

注意点として、契約の名称ではなく実態で判断されるのがこの分野の原則です。さらに重要なのは、実態が労働者であればフリーランス新法ではなく労働関係法令が適用されるという点です。公正取引委員会のQ&Aにも、労働基準法における労働者と認められる場合は特定受託事業者に該当しない旨が示されています。

出勤時間の指定、シフトによる管理、指名以外のお客様の割り当て、サロン独自メニューの実施の強制、材料のサロン負担といった実態があると、「業務委託」という名称でも労働者と判断される可能性があります。その場合は、フリーランス新法ではなく労働基準法やパートタイム・有期雇用労働法の話になります。

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【要点まとめ】
  • 純粋な面貸しは業務委託に該当しないと考えられますが、業種別の公的解釈はありません。
  • サロンが集客し歩合を支払う形は、役務提供委託にあたり得ます。
  • 契約の名称ではなく実態で判断されるのが原則です。
  • 実態が労働者であれば、労働関係法令のほうが適用されます。

違反した場合と、相談できる窓口

結論として、行政の対応は指導・助言から始まり、勧告、命令、公表と段階的に進みます。命令に違反した場合には罰則があります。

具体的な流れは、報告徴収や立入検査を経て、指導・助言、勧告、命令・公表という順序です。罰則としては、命令に違反した場合および報告徴収・検査の拒否等について50万円以下の罰金が定められています。法人の代表者や使用人等が違反した場合に法人にも同額の罰金が科される両罰規定もあります。また、一部の報告義務違反には20万円以下の過料が定められています。

相談窓口としては、公正取引委員会の違反申出窓口のほか、厚生労働省が委託して運営する「フリーランス・トラブル110番」があります。弁護士による相談や和解のあっせんを受けられる仕組みです。

注意点として、行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約を解除したり取引を停止したりすることは禁止されています。相談されたこと自体を問題視する対応は、それ自体が違反になり得ます。

【要点まとめ】
  • 指導・助言、勧告、命令・公表という段階を経て対応が進みます。
  • 命令違反等には50万円以下の罰金、両罰規定もあります。
  • 公正取引委員会の申出窓口と「フリーランス・トラブル110番」があります。
  • 申出をしたことを理由とする契約解除や取引停止は禁止されています。

まとめ:まずは書面を1枚、用意するところから

フリーランス新法は2024年11月に施行されており、業務委託でスタイリストに依頼しているサロンは発注側として関わります。義務の重さは、サロンが従業員を使用しているかどうかで大きく変わります。従業員がいなければ取引条件の明示だけ、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある方が1人でもいれば7つの義務が視野に入ります。

最初にやるべきは、取引条件を書面(またはメール等)で明示することです。特に報酬の額と支払期日は、歩合の算定基礎まで書いておくと後の行き違いを防げます。支払は役務の提供を受けた日から60日以内です。

あわせて、ハラスメント相談体制の整備は2026年10月に施行されるカスタマーハラスメント対策などと共通化できます。方針文と窓口を1つにまとめておくと、作業は一度で済みます。面貸しが対象になるかどうかなど判断に迷う点は、公正取引委員会や所轄の労働局、顧問の専門家へご相談ください。

FAQ:フリーランス新法とサロンについて、よくある質問

Q. フリーランス新法とはどんな法律ですか?
A. 正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、2023年5月12日に公布され、2024年11月1日に施行されました。従業員を使用しない個人などに業務を委託する発注者に対して、取引条件の明示や支払期日の設定、ハラスメント対策の体制整備などを義務づけるものです。

Q. 従業員がいないサロンでも義務はありますか?
A. 従業員を使用していない場合でも、取引条件の明示は必要です。これはすべての業務委託事業者に課される義務で、取引期間の条件もありません。一方、支払期日の設定や禁止行為、ハラスメント対策の体制整備などは、従業員を使用する事業者(特定業務委託事業者)に課されるものです。

Q. 「従業員を使用する」とはどういう状態ですか?
A. 公正取引委員会のQ&Aでは、週20時間以上かつ31日以上継続して雇用することが見込まれる労働者を雇用する場合が該当するとされています。短期間・短時間のみの労働者は含まないとされています。受付や清掃のパートスタッフでも、この基準を満たせば従業員を使用していることになります。

Q. 面貸し(ミラーレンタル)も対象になりますか?
A. 施術者が自ら集客し、お客様から直接代金を受け取る純粋な面貸しは、席や設備の貸出しにあたるため対象外と考えられます。一方、サロンが集客して代金を受け取り、施術者に歩合を支払う形は役務提供委託にあたり得ます。業種別の公的な解釈は示されていないため、判断に迷う場合は専門家へご確認ください。

Q. 業務委託にすれば労働関係の法律は関係なくなりますか?
A. そうとは限りません。労働者にあたるかどうかは契約の形式や名称ではなく、働き方の実態で判断されます。出勤時間の指定、シフトによる管理、お客様の割り当てといった実態があると、業務委託という名称でも労働者と判断される可能性があります。その場合は労働基準法などが適用されます。

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