106万円の壁撤廃|美容サロンは対象?個人と法人の違い
106万円の壁が撤廃へ|あなたのサロンは対象?個人と法人で分かれる社会保険

106万円の壁が撤廃へ|あなたのサロンは対象?個人と法人で分かれる社会保険

更新日:2026年9月14日

2026年10月、社会保険の加入要件から「月額8.8万円以上」という賃金要件が撤廃される予定です。いわゆる「106万円の壁」がなくなり、判断基準は週の労働時間に一本化されます。ただし、この変更がすべての美容サロンに同じように効くわけではありません。個人事業か法人かで結論が大きく変わるためです。ご自身のサロンが対象になるのかを、順を追って整理します。
【大事なこと】
  • 2026年10月、短時間労働者の賃金要件(月額8.8万円)が撤廃される予定で、基準は「週20時間以上」に一本化されます。
  • 個人事業の美容室・理容室は「非適用業種」にあたり、従業員が何人いても強制適用にはなりません。
  • 法人のサロンは、従業員が1人でも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。
  • 短時間スタッフの適用拡大が直接及ぶのは、厚生年金被保険者51人以上の事業所です。
  • 企業規模要件は段階的に縮小され、2035年10月に撤廃される予定です。

2026年10月に何が変わるのか|106万円の壁の撤廃

結論として、2026年10月に撤廃されるのは「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件です。年収に換算すると約105.6万円で、これがいわゆる「106万円の壁」と呼ばれてきました。

撤廃の理由は、最低賃金の上昇にあります。全国の最低賃金がすべて時給1,016円を超えたことで、週20時間働けば賃金要件も自動的に満たす状態になりました。要件として機能しなくなったため、整理されるという流れです。根拠となるのは、2025年6月20日に公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)です。

具体的には、撤廃後に残る加入要件は次の4つです。週の所定労働時間が20時間以上であること。2か月を超えて雇用される見込みがあること。学生でないこと。そして事業所が一定の規模要件を満たすこと。つまり「週20時間の壁」に呼び名が変わる、と表現されることもあります。

注意したいのは、法律上「106万円」という基準が定められていたわけではない点です。月額8.8万円という基準額から逆算された通称なので、正確には「いわゆる106万円の壁」と表現するのが適切です。また、厚生労働省・日本年金機構の公表資料では2026年9月時点でも「撤廃予定」という表記が続いており、断定は避けておくのが無難と考えられます。

【要点まとめ】
  • 撤廃されるのは「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件です。
  • 最低賃金がすべての都道府県で1,016円を超えたことが背景にあります。
  • 撤廃後も、週20時間以上・2か月超の雇用見込み・学生でないこと、という要件は残ります。
  • 公的資料では現在も「予定」表記のため、最新情報の確認が必要です。

個人事業の美容室は、そもそも強制適用の対象外です

結論から申し上げると、法人化していない個人事業の美容室・理容室は、従業員が何人いても健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所にはなりません。

理由は、社会保険の強制適用が「法人の事業所」と「常時5人以上を使用する個人事業所のうち法定17業種」に限られているためです。この17業種に理美容業は含まれていません。厚生労働省の資料でも、非適用業種の例として農業、林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業、洗濯、理美容、浴場業などが明記されています。

具体例で考えます。オーナーが個人事業主として営むサロンに、スタイリスト3名とアシスタント2名、パートの受付1名がいるとします。従業員は6名で「常時5人以上」に該当しますが、理美容業は法定17業種ではないため、強制適用にはなりません。2022年10月に士業が追加された際も、美容業は対象に加えられていません。

注意点として、この状態は将来変わる見込みです。2029年10月から、常時5人以上を使用する個人事業所は原則としてすべての業種が適用対象になる予定です。ただし、その時点ですでに存在している事業所は当分の間対象外とする経過措置が設けられています。つまり、いま営業している個人サロンは、当面のあいだ従来どおりと考えられます。

【要点まとめ】
  • 個人事業の理美容業は「非適用業種」で、従業員数にかかわらず強制適用にはなりません。
  • 強制適用は「法人の事業所」と「常時5人以上の個人事業所のうち法定17業種」に限られます。
  • 2022年10月の士業追加でも、美容業は対象になっていません。
  • 2029年10月に業種要件が撤廃される予定ですが、既存事業所には経過措置があります。

法人サロンは従業員1人から対象|適用拡大が効くのは51人以上

結論として、法人化しているサロンは従業員が1人でも強制適用事業所です。一方で、今回の適用拡大が短時間スタッフに直接及ぶのは、厚生年金被保険者が51人以上の事業所に限られます。

理由は、短時間労働者の適用拡大が「特定適用事業所」という枠組みで進められているからです。特定適用事業所とは、厚生年金保険の被保険者数が一定以上の事業所を指し、現在の基準は51人以上です。

この規模要件は、次のとおり段階的に引き下げられる予定です。

  • 現在から2027年9月まで:51人以上
  • 2027年10月から:36人以上
  • 2029年10月から:21人以上
  • 2032年10月から:11人以上
  • 2035年10月から:規模要件を撤廃

つまり、法人であっても数名から十数名規模のサロンであれば、2026年10月の賃金要件撤廃によって短時間スタッフの加入が直ちに義務づけられるわけではありません。自店に影響が出るのは、上記のうちどの時点で規模要件に該当するかによります。

注意点として、フルタイムのスタッフは規模要件と関係なく加入対象です。法人サロンで正社員スタイリストを雇っている場合、その方は当初から健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。今回の話は、あくまで週20時間台で働く短時間スタッフの扱いに関するものです。

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【要点まとめ】
  • 法人のサロンは従業員1人から強制適用事業所です。
  • 短時間スタッフの適用拡大が及ぶのは、現在は厚生年金被保険者51人以上の事業所です。
  • 規模要件は2027年10月に36人以上、2035年10月に撤廃される予定です。
  • フルタイムのスタッフは規模要件と関係なく加入対象になります。

自店がどこに当てはまるか、3分で判定する

結論として、確認する順番は「法人か個人事業か」「厚生年金被保険者が51人以上か」「そのスタッフは週20時間以上か」の3つです。

理由は、この順に見ていけば、迷わず結論にたどり着けるからです。上流の答えで下流の質問が不要になります。

ステップ1:法人か、個人事業か

個人事業であれば、理美容業は非適用業種のため、強制適用はありません。ここで判定は終わりです。法人であれば、次に進みます。

ステップ2:厚生年金保険の被保険者は51人以上か

50人以下であれば、短時間スタッフの強制加入は当面ありません。フルタイムのスタッフは従来どおり加入対象です。51人以上であれば、次に進みます。

ステップ3:そのスタッフの週の所定労働時間は20時間以上か

20時間以上で、2か月を超えて雇用される見込みがあり、学生でなければ、2026年10月以降は賃金額にかかわらず加入対象になります。20時間未満であれば対象外です。

注意点として、週の所定労働時間は契約上の時間で判断するのが原則で、残業は含まないとされています。ただし、契約は週18時間でも実際には毎週22時間働いている、という状態が続いている場合は、実態で判断される可能性があります。契約と実態を揃えておくことが大切です。

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【要点まとめ】
  • 判定は「法人か個人か」「51人以上か」「週20時間以上か」の順です。
  • 個人事業であれば、そこで判定は終わります。
  • 週の所定労働時間は契約上の時間で判断し、残業は含みません。
  • 契約と実態が乖離している場合は、実態で判断される可能性があります。

それでも社会保険に入れたい場合の選択肢

結論として、強制適用の対象外であっても、任意で社会保険を適用する道は用意されています。

理由は、社会保険への加入が採用の場面で差になっているためです。求人票に「社会保険完備」と書けるかどうかで応募数が変わる、という声は業界を問わず聞かれます。人手の確保が難しい美容業界では、検討する価値のある投資と考えられます。

任意適用事業所

個人事業所であっても、従業員の半数以上の同意を得て事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受ければ適用事業所になれます。健康保険と厚生年金保険のいずれか一方だけ、あるいは両方を選ぶことも可能です。

任意特定適用事業所

すでに適用事業所である法人サロンが、規模要件を満たさない段階で短時間スタッフを加入対象にしたい場合の仕組みです。同意対象者の過半数の同意を得て申し出ることで認定されます。なお、取消しの申出には4分の3以上の同意が必要とされており、一度入ると簡単には戻せない点は理解しておく必要があります。

注意点として、2026年10月からは「保険料調整制度」という新しい仕組みも始まる予定です。標準報酬月額126,000円以下の短時間労働者について、事業主が本人負担分を一時的に多く負担することで、通算3年間にわたり本人の負担を軽減できます。事業主が最終的に納める額は増えず、本人の将来の年金額にも影響しないとされています。ただし対象となる事業所の範囲が定められているため、活用を検討する場合は日本年金機構の案内をご確認ください。

【要点まとめ】
  • 個人事業所でも、従業員の半数以上の同意と認可があれば任意適用事業所になれます。
  • 法人サロンには任意特定適用事業所という選択肢があります。
  • 取消しには4分の3以上の同意が必要で、判断は慎重に行う必要があります。
  • 2026年10月から保険料調整制度が始まる予定です。

加入した場合、店の負担はどのくらいか

結論として、事業主の負担はおおよそ報酬の15%前後が目安になります。断定はできませんが、判断材料として計算の考え方を押さえておくと役立ちます。

理由は、保険料率が公表されているためです。厚生年金保険料率は18.300%で、労使折半のため事業主負担は9.15%です。健康保険料率は都道府県によって異なり、たとえば東京では9.85%(2026年3月分から)で、事業主負担は4.925%になります。これに40歳から64歳の方は介護保険料率が加わり、子ども・子育て拠出金は事業主が全額負担します。

具体例として、標準報酬月額が10万円のスタッフ1名を加入させた場合、事業主の負担は月額でおおよそ1万5千円前後、年間で18万円前後という規模感になります。あくまで概算であり、地域や年齢、加入する健康保険によって変わります。

注意点として、この負担を「コスト」とだけ見るか、「採用と定着への投資」と見るかで判断は変わります。美容業界では人手不足を原因とする経営難が課題になっており、待遇面の整備は中長期の競争力に関わります。数字を出したうえで、採用計画とあわせて検討することをおすすめします。

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【要点まとめ】
  • 厚生年金保険料率は18.300%で、労使折半です。
  • 健康保険料率は都道府県ごとに異なります。
  • 事業主負担はおおよそ報酬の15%前後が目安と考えられます。
  • コストと採用への投資、両面から判断することをおすすめします。

まとめ:まず「個人か法人か」を確認するところから

2026年10月の「106万円の壁」撤廃は報道で大きく取り上げられていますが、美容サロンへの影響は事業形態によって大きく異なります。個人事業の美容室は理美容業が非適用業種にあたるため、従業員数にかかわらず強制適用の対象外です。法人サロンは従業員1人から適用事業所ですが、短時間スタッフの適用拡大が及ぶのは現時点で51人以上の規模に限られます。

まずは「法人か個人事業か」「厚生年金被保険者が51人以上か」「そのスタッフは週20時間以上か」の3点を順に確認してください。この3つで、自店が対象かどうかはほぼ判定できます。

そのうえで、任意適用や保険料調整制度といった選択肢を、採用戦略の一部として検討する価値はあります。判断に迷う場合は、最寄りの年金事務所、または顧問の社会保険労務士へご相談ください。

FAQ:社会保険の適用拡大について、よくある質問

Q. 106万円の壁はいつ撤廃されるのですか?
A. 2026年10月1日に撤廃される予定です。撤廃されるのは「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件で、以降は週20時間以上という労働時間の要件が基準になります。根拠は2025年6月20日に公布された年金制度改正法です。公的機関の資料では現在も「予定」と表記されているため、最新情報の確認をおすすめします。

Q. 個人事業の美容室でも社会保険への加入は必要ですか?
A. 法人化していない個人事業の美容室は、理美容業が社会保険の非適用業種にあたるため、従業員が何人いても強制適用の対象にはなりません。ただし、従業員の半数以上の同意を得て申請し、認可を受ければ任意適用事業所になることができます。採用面での効果を考えて検討するサロンもあります。

Q. 法人のサロンは何人から社会保険が必要になりますか?
A. 法人の事業所は従業員が1人でも強制適用事業所になります。役員のみの場合も対象です。ただし、週20時間台で働く短時間スタッフの加入義務が生じるのは、厚生年金保険の被保険者が51人以上の事業所に限られます。この規模要件は段階的に引き下げられ、2035年10月に撤廃される予定です。

Q. シフトを週20時間未満に抑えれば加入を避けられますか?
A. 制度上は週の所定労働時間が20時間未満であれば短時間労働者の加入対象になりません。ただし、そもそも自店が規模要件に該当していなければ、時間を調整する必要自体がない場合もあります。また、契約が20時間未満でも実態が上回っている場合は実態で判断される可能性があります。まず事業形態と規模要件をご確認ください。

Q. 社会保険に加入すると店の負担はどのくらい増えますか?
A. 厚生年金保険料率は18.300%で労使折半、健康保険料率は都道府県ごとに異なります。子ども・子育て拠出金は事業主が全額負担します。これらを合わせると、事業主負担はおおよそ報酬の15%前後が目安と考えられます。地域や年齢によって変わるため、具体的な金額は年金事務所でご確認ください。

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