サロンの損益分岐点|固定費・人件費から逆算する売上目標の作り方
更新日:2026年5月25日
サロンの損益分岐点(BEP)を計算すると、「いくら売れば赤字を出さないか」という最低ラインが見えるため、毎月の売上目標と価格改定の判断が一気に楽になります。逆に、固定費を把握しないまま売上目標を立てても、感覚経営から抜け出せません。本記事では、固定費の洗い出しからBEP計算式、月次目標への落とし込み、多店舗展開時の管理ポイントまでを整理します。
- 損益分岐点(BEP)は「固定費÷限界利益率」で計算します
- 固定費は家賃・人件費・水光熱費・通信費・リース料が中心です
- サロンの人件費比率は売上の40〜55%が一つの目安です
- 月次売上目標はBEPに「目標利益÷限界利益率」を加えて算出します
- 多店舗の場合は店舗別BEPと全社BEPを分けて管理します
損益分岐点(BEP)の基本|赤字にならない売上ライン
結論として、損益分岐点(BEP)は「固定費÷限界利益率」で求める数値で、これを下回ると赤字になる売上ラインです。サロンの場合、家賃・人件費・水光熱費などの固定費が毎月一定額発生するため、それを売上で回収できるかどうかが利益の分岐点になります。
限界利益率とは、売上から変動費(主に材料費)を引いた金額の、売上に対する比率です。たとえばカラー1人あたりの材料費が単価の15%であれば、限界利益率は85%となります。
サロンは設備産業の性質を持つ業態で、固定費の比率が高くなりがちです。空席や空ベッドの時間帯があっても固定費は出ていくため、BEPを計算しておくことが資金繰りと値付けの両方に直結します。
BEPを把握すれば、毎月の売上目標を感覚で決める段階を抜け出し、「必達ライン」「目標ライン」「ストレッチライン」の3段階で売上目標を立てられるようになります。
あわせて読みたい:- BEP=固定費÷限界利益率で計算する
- 限界利益率=(売上−変動費)÷売上の比率
- BEPは資金繰りと値付けの両方に直結する基準
固定費の洗い出し|サロンで見落としがちな項目
固定費の洗い出しは、月次で必ず発生する費用を漏れなくリストアップすることから始めます。家賃・人件費・水光熱費・通信費・リース料・保険料・広告費の固定部分・経理税理士費用・ソフトウェア使用料の9項目をベースに整理するのが現実的です。
サロンでよく見落とすのが、定期的に発生するソフトウェアやサービスの使用料です。予約システム・キャッシュレス決済の月額費用・公式アプリ運用料などは月数千円〜数万円規模で積み上がります。
また、広告費は変動費と固定費の両方の性質を持ちます。MEO対策ツール・ホームページ管理費・SNS運用代行費などは毎月発生するため固定費に計上し、キャンペーン広告費は変動費として別管理にするのが分かりやすくなります。
固定費の合計が見えたら、それを必達売上に翻訳するための限界利益率を、過去3〜6か月の実績から算出します。月によって材料費率が大きく変動する場合は、平均値ではなく中央値を使うと判断がぶれにくくなります。
- 9項目(家賃・人件費・水光熱費・通信費・リース料・保険料・広告費固定・経理・ソフト使用料)が基本
- ソフト使用料とMEO関連費は固定費として計上する
- 限界利益率は3〜6か月の中央値で算出する
人件費比率の目安|サロンの利益構造を決める最大変数
人件費比率は、サロンの利益構造を決める最大の変数です。一般的に、サロンの人件費比率は売上の40〜55%が一つの目安と言われています。50%を超え始めると利益が出にくくなり、60%を超えると赤字に近づきやすくなります。
人件費比率を下げる方向で考える場合は、客単価アップやスタッフ1人あたりの売上引き上げが王道です。逆に、人件費比率が高くても採用力や定着率が高ければ、長期的な競争優位になるという考え方もあります。
また、業務委託・面貸し・正社員・パートを組み合わせた雇用ポートフォリオで、人件費の固定費比率をコントロールする方法もあります。固定給スタッフが多いほど固定費比率が高まり、業務委託や歩合中心ほど変動費寄りになります。
店舗の成長フェーズ(新規開業・拡大期・安定期)によって最適な人件費比率は変わるため、業界平均だけで判断せず、自店の固定費構造と合わせて見ることが重要です。
あわせて読みたい:- 人件費比率の目安は売上の40〜55%
- 50%超で利益が出にくく、60%超で赤字リスク
- 雇用形態の組み合わせで固定費比率をコントロール
BEP計算式|実際に手元の数字を当てはめる
実際に計算してみると分かりやすくなります。たとえば月間固定費が250万円、限界利益率が75%のサロンの場合、BEPは「250万円÷0.75=約333万円」となります。月商333万円を超えれば利益が出始め、下回れば赤字、という線が見えます。
もし目標利益が月50万円欲しい場合は、「(固定費+目標利益)÷限界利益率」で必要売上を算出します。先ほどの例なら、(250万+50万)÷0.75=約400万円が目標売上です。
BEPの計算は一度行えば終わりではなく、固定費の変動(家賃改定・採用増・ソフト導入など)があるたびに更新するのが基本です。年に4回、四半期ごとに見直すサイクルがおすすめです。
Excelで計算テンプレを作っておけば、固定費・限界利益率を入力するだけでBEPと目標売上が自動算出されます。スタッフ別・店舗別の計算も同じ仕組みで横展開できます。
- BEP=固定費÷限界利益率
- 目標利益込みなら(固定費+目標利益)÷限界利益率
- 四半期ごとにBEPと固定費を見直す
売上目標への落とし込み|日次・週次まで分解する
月次BEPが見えたら、それを日次・週次の売上目標まで分解します。たとえば月商目標400万円・月25営業日のサロンなら、1日あたり16万円が日次目標になります。
ただし、サロンの売上は曜日・時間帯で大きく偏るのが普通です。平日と週末、午前と午後の比率を過去データから読み取り、曜日別・時間帯別の目標まで落とすと、現場の動き方が変わります。
日次目標は「予約枠の埋まり率」で先読みできます。平日午後の埋まり率が低ければ、平日限定オプションやLINE配信での予約誘導を増やすなど、具体的な打ち手につながります。
また、スタッフ別の売上目標は、シフト時間×目標時間単価で設計するのが現実的です。指名比率や得意メニューによって時間単価は変わるため、画一的な金額目標より分単価ベースで管理した方が納得感が出やすくなります。
- 月次→日次→曜日・時間帯別まで分解する
- 予約枠の埋まり率で日次目標を先読みする
- スタッフ別はシフト×時間単価で設計する
価格改定の判断軸|BEPが上がったときの対応
固定費の増加(家賃改定・最低賃金上昇・材料費上昇など)でBEPが上昇した場合、対応は3パターンあります。①売上の総量を増やす、②客単価を上げる、③固定費を下げる、の3つです。
売上総量の増加は、集客強化や営業時間延長で実現しますが、現場負担とのバランスが課題です。客単価アップは、メニュー再構成・オプション・指名固定化など、複数の打ち手を組み合わせる必要があります。
固定費の削減は、契約見直しが中心です。家賃・通信費・ソフトウェア使用料・保険料は、契約更新のタイミングで見直す価値があります。広告費の固定部分も、効果が出ていない媒体から順に整理するのが定石です。
値上げの判断は、限界利益率と来店頻度の両方を見ます。限界利益率が低い(材料費比率が高い)メニューは、値上げ余地が大きい場合が多いため、優先的に検討します。逆に来店頻度の高い看板メニューは、値上げ幅を抑えて離反リスクを最小化します。
あわせて読みたい:- BEP上昇時は売上増・単価上げ・固定費削減の3択
- 固定費は契約更新時に見直すのが現実的
- 値上げは限界利益率と来店頻度から優先順位を決める
多店舗の場合|店舗別BEPと全社BEPを分ける
多店舗展開の場合は、店舗別BEPと全社BEPを必ず分けて管理します。全社BEPには本部経費(マーケティング・人事・経理など)が乗るため、店舗別BEPを足し合わせただけでは全社の必達ラインに届きません。
店舗別BEPで「店舗単体での黒字化ライン」が見え、全社BEPで「本部運営も含めた必達ライン」が見えます。新規出店した店舗は当初は単店黒字化を優先目標にし、立ち上がってから全社BEP貢献に評価軸を切り替えるのが現実的です。
店舗ごとの売上・利益進捗を比較する場合、月次ダッシュボードで一覧できる状態を作るのが重要です。エクセル管理だと更新が滞りがちなので、予約・売上データから自動集計される仕組みに乗せておくと判断スピードが上がります。
ビューティーメリットでは、予約・売上を店舗横断で集約しレポート化できるため、月次・週次のBEP達成率を店舗別に確認できる運用が可能です。店長との進捗会議に直接活用できる粒度で出力できます。
あわせて読みたい:- 店舗別BEPと全社BEPは必ず分けて管理する
- 新規出店は単店黒字化を先行目標にする
- 月次ダッシュボードで店舗別の進捗を可視化する
まとめ
サロンのBEPは「固定費÷限界利益率」で計算するシンプルな数式ですが、固定費を正しく洗い出し、限界利益率を実態に合った数字で算出することが前提になります。BEPが分かれば必達売上・目標売上・ストレッチ目標を段階的に立てられ、価格改定の判断軸も明確になります。
多店舗展開する場合は、店舗別BEPと全社BEPを分け、月次ダッシュボードで進捗を可視化する仕組みが必須です。固定費・限界利益率は年4回ペースで見直し、変化に応じてBEPを更新していきましょう。
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