親の美容室を継ぐ前に必ず確認したい"3つの数字":二代目オーナーの初期チェックリスト
親の美容室を継ぐ前に必ず確認したい

親の美容室を継ぐ前に必ず確認したい”3つの数字”:二代目オーナーの初期チェックリスト

更新日:2025年12月8日

親が長年営んできた美容室を継ぐ決意をしたとき、まず何から手をつければよいのでしょうか。感情や思い入れだけで継承を進めると、引き継いだ後に想定外の経営課題に直面する可能性があります。二代目として家業を引き継ぐ前に、客観的な数字で現状を把握することが不可欠です。本記事では、承継前に必ずチェックすべき3つの重要な経営数値と、その確認方法について解説します。
【大事なこと】営業利益率が低い場合、承継後の資金繰りに苦労する可能性が高まります。
家賃や人件費などの固定費が売上の何%を占めているか確認することが重要です。
親の代の借入金を引き継ぐ場合は、返済計画が現実的かシミュレーションが必要です。
これら3つの数字を把握せずに承継すると、経営難に陥るリスクがあります。
専門家への相談を含め、承継前の数値確認は経営の健全性を判断する基準になります。

なぜ「数字」の確認が必要なのか

親から美容室を引き継ぐことは、単なる技術の承継ではなく経営のバトンタッチです。先代が感覚的に店を回していた場合でも、二代目は数字で経営を把握する必要があります。なぜなら、売上がそれなりにあっても利益が出ていないケースや、固定費が重すぎて新しい投資ができないケースが実際に多いからです。

美容業界では、材料費や人件費の負担が大きく、営業利益率が低くなりがちな構造があります。実際、業界平均では人件費が売上の45〜55%、家賃が10〜15%を占めるとされています。これらの数字を把握していないと、承継後に「思っていたより手元にお金が残らない」という事態に陥りやすいのです。

また、親子間では「言わなくても分かる」という思い込みから、経営数値の共有が不十分になることがよくあります。しかし、経営の実態は数字に表れます。承継を決意した段階で、感情ではなく客観的な数字で店の状態を把握することが、成功する二代目への第一歩です。

【要点まとめ】

  • 美容室経営は技術だけでなく、数字で経営状態を把握する必要がある
  • 業界特有の費用構造を理解し、自店の数値と比較することが重要
  • 親子間でも経営数値の共有を明確に行い、現状認識のズレを防ぐ

数字①:月ごとの営業利益と利益率

最初に確認すべきは、毎月の営業利益です。営業利益とは、売上から材料費・人件費・家賃などすべての経費を差し引いた後に残る利益のことを指します。売上が高くても、経費がかさんでいれば利益は残りません。

具体的には、少なくとも過去1年分の損益計算書を確認し、単月ベースで黒字が出ているかをチェックしましょう。理想的な営業利益率は15〜20%とされています。たとえば月商80万円のサロンであれば、12万円〜16万円程度の営業利益が残るのが健全な状態です。

もし営業利益率が10%を下回っている場合、費用構造に何らかの問題がある可能性があります。材料費率が高すぎる、人件費が売上に対して過大、家賃負担が重いなど、原因を特定する必要があります。特に人件費については、業界平均の50%前後を大きく超えている場合、オーナー自身が現場で売上を上げ続けないと利益が出にくいビジネスモデルになっている恐れがあります。

営業利益率が低い状態で承継すると、設備投資や広告費に回す余裕がなく、二代目としての新しい施策を打ち出すことが困難になります。承継前に改善の余地があるのか、それとも事業構造自体を見直す必要があるのかを判断することが重要です。

【要点まとめ】

  • 営業利益率15〜20%が健全な経営の目安となる
  • 売上があっても利益が出ていないケースは費用構造に問題がある
  • 人件費・材料費・家賃などの比率を業界平均と比較して現状を把握する

数字②:固定費の総額と内訳

次に確認すべきは固定費です。固定費とは、売上の増減に関わらず毎月一定額が発生する費用のことで、美容室の場合は家賃・人件費(固定給部分)・光熱費・リース料・広告費などが該当します。

まず家賃についてですが、業界平均では売上の10〜15%が目安とされています。もし家賃比率が15%を超えている場合、経営の柔軟性が著しく損なわれます。高い家賃は固定費として毎月必ず支払う必要があるため、売上が下がった時に真っ先に経営を圧迫する要因となります。承継前に賃貸契約の条件を確認し、必要であれば家主との条件交渉や移転の可能性も視野に入れるべきです。

人件費については、正社員の固定給部分が固定費に該当します。理想的には売上の50%程度が目安です。親世代から引き継いだスタッフの給与体系がそのまま続く場合、その負担が適正かどうかを確認しましょう。また、設備のリース契約が残っている場合、その返済スケジュールと金額も把握が必要です。

固定費の総額を把握することで、損益分岐点売上高を計算できます。損益分岐点とは、売上と費用が等しくなり利益がゼロになる売上水準のことです。たとえば固定費が月56万円、変動費率が15.5%の場合、損益分岐点売上高は約66万円となります。つまり、最低でも月66万円の売上がなければ赤字になる計算です。この数字を知ることで、承継後に最低限必要な売上目標が明確になります。

【要点まとめ】

  • 家賃比率が15%を超える場合は経営を圧迫する可能性が高い
  • 固定費の内訳を把握し、削減できる項目がないか確認する
  • 損益分岐点売上高を計算し、最低限必要な売上水準を知る

数字③:現金残高と借入返済の状況

三つ目のチェックポイントは、手元資金と借入金の状況です。いくら帳簿上で利益が出ていても、現金が手元にない状態では経営は回りません。特に美容室は入金サイクルが短い現金商売ですが、材料費の支払いや人件費の支払いタイミングによってはキャッシュフローが厳しくなることもあります。

まず、サロンの預金残高を確認しましょう。少なくとも3ヶ月分の固定費に相当する現金があれば、一時的な売上減少があっても対応できます。逆に、預金残高が1ヶ月分の固定費を下回っている場合は、資金繰りが綱渡り状態といえます。

次に、借入金の残高と返済計画を確認します。親の代に設備投資や運転資金のために借り入れた融資が残っている場合、その返済義務を承継することになります。毎月の返済額が現在のキャッシュフローで無理なく返せるかをシミュレーションしましょう。もし返済が厳しい場合は、金融機関にリスケジュール(返済条件の見直し)を相談することも選択肢です。

また、承継後に新しい設備投資や広告費が必要になることも想定されます。現在の現金残高と今後の投資計画を照らし合わせ、追加の融資が必要かどうかも検討しておくべきです。資金繰りの見通しが甘いまま承継すると、承継直後に資金ショートという最悪の事態を招きかねません。

【要点まとめ】

  • 最低でも3ヶ月分の固定費に相当する現金を確保しておく
  • 借入金の返済計画が現実的かシミュレーションする
  • 承継後の投資計画を見据えて資金繰りの見通しを立てる

数字を確認した後の判断基準

これら3つの数字を確認した結果、経営状態が健全であれば安心して承継を進められます。一方、数字に問題がある場合は、承継前に改善策を講じるか、それとも承継そのものを見直すかの判断が必要です。

たとえば、営業利益率が低い原因が人件費過多であれば、スタッフの雇用形態を見直す、業務委託契約に切り替えるなどの対策が考えられます。固定費が重すぎる場合は、不要なリース契約の解除や賃料の交渉、場合によっては規模縮小も視野に入れる必要があります。

借入金の返済が厳しい場合は、金融機関との交渉や専門家への相談が不可欠です。税理士や中小企業診断士など、美容業界の経営に詳しい専門家に相談することで、客観的な視点からアドバイスを得ることができます。

また、親世代との役割分担を明確にすることも重要です。承継初年度は「父が経理と仕入れ担当、後継者が現場責任者として人事と集客担当」など、役割を書面で明確にしておくことで、承継後のトラブルを防げます。特に数字に関する権限と責任を曖昧にしないことが、円満な承継の鍵となります。

【要点まとめ】

  • 数字に問題がある場合は承継前に改善策を検討する
  • 専門家への相談を活用し、客観的な判断材料を得る
  • 親世代との役割分担を明確にし、経営権限を整理する

承継後の数字管理のポイント

無事に承継を終えた後も、数字の管理は継続する必要があります。二代目として新しい施策を打ち出す際も、必ず数字で効果を検証する習慣をつけましょう。

まず、月次で損益計算書を確認する習慣をつけることです。売上・経費・利益の推移を毎月追うことで、経営の変化に早く気づくことができます。特に客単価・来店客数・来店頻度という3つの要素を分解して分析することで、売上が増減した原因を特定しやすくなります。

次に、目標設定の際も数字を基準にします。たとえば「今月の営業利益率を18%にする」「固定費比率を60%以下に抑える」など、具体的な数値目標を掲げることで、施策の優先順位が明確になります。

また、顧客生涯価値(LTV)と新規顧客獲得単価(CPA)のバランスにも注目しましょう。広告費をかけて新規客を獲得する場合、その顧客が生涯でどれだけの利益をもたらすかを計算し、獲得コストが回収できるかを判断します。健全な経営では、LTVがCPAの3倍以上あることが望ましいとされています。

【要点まとめ】

  • 月次で損益計算書を確認し、経営数値の推移を把握する
  • 客単価・客数・来店頻度を分解して売上変動の原因を分析する
  • LTVとCPAのバランスを意識し、広告投資の効果を測定する

まとめ

親の美容室を継ぐ前に必ず確認すべき3つの数字は、「営業利益と利益率」「固定費の総額と内訳」「現金残高と借入返済の状況」です。これらの数字を客観的に把握することで、承継後の経営リスクを大幅に減らすことができます。

営業利益率が15〜20%あり、固定費比率が適正で、3ヶ月分以上の現金が手元にある状態であれば、健全な経営といえます。逆に、これらの数字に問題がある場合は、承継前に改善策を講じるか、専門家に相談して現実的な計画を立てることが重要です。

二代目オーナーとして成功するためには、親世代の技術や顧客基盤を継承しつつ、数字で経営を管理する視点を持つことが不可欠です。感情や思い入れだけでなく、客観的なデータに基づいた経営判断を行うことで、長く愛されるサロンを次世代に引き継ぐことができるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 親が経営数値を詳しく教えてくれない場合、どうすればよいですか?
A. まずは税理士に相談し、過去の確定申告書や決算書を確認させてもらいましょう。親世代が感覚で経営している場合でも、税理士は正確な数字を把握しています。また、第三者である税理士や商工会の経営支援員を交えて三者で話し合う場を設けることで、感情的にならず客観的な議論ができます。承継は家族の問題であると同時にビジネスの問題でもあるため、専門家の力を借りることをためらわないことが大切です。
Q. 数字を確認した結果、経営状態が思ったより悪かった場合、承継を断念すべきですか?
A. 必ずしも断念する必要はありません。まずは何が問題なのかを特定し、改善の余地があるかを検討しましょう。たとえば家賃が高すぎる場合は移転や賃料交渉、人件費が過大な場合は雇用形態の見直しなど、具体的な対策を講じることで経営を立て直せる可能性があります。税理士や中小企業診断士などの専門家に相談し、事業再生の可能性を探ることをお勧めします。改善策を実行してから承継するという選択肢もあります。
Q. 損益分岐点売上高はどうやって計算すればよいですか?
A. 損益分岐点売上高は「固定費÷(1−変動費率)」で計算できます。まず固定費(家賃・人件費・広告費など)の月額合計を出します。次に変動費率(材料費や決済手数料など売上に比例する費用の割合)を計算します。たとえば固定費が月56万円、変動費率が15.5%の場合、損益分岐点売上高は56万円÷0.845=約66万円となります。この金額を下回ると赤字になるため、最低限達成すべき売上目標として意識することが重要です。
Q. 承継後に新しい設備投資をしたいのですが、どれくらい資金を用意すべきですか?
A. 投資内容によりますが、最低でも3ヶ月分の固定費に相当する運転資金を手元に残した上で、投資資金を別途用意することをお勧めします。たとえば月の固定費が60万円であれば、運転資金180万円を確保した上で、設備投資の資金を準備します。自己資金で賄えない場合は、日本政策金融公庫の融資や自治体の制度融資を活用することも検討しましょう。承継時は事業承継に特化した融資制度も利用できる場合があるため、金融機関に相談してみてください。
Q. 承継前に確認した数字と、承継後の実際の数字が違っていた場合はどうすればよいですか?
A. 承継前後で数字が変動することは珍しくありません。特に常連客が先代オーナーについていた場合、承継後に一時的に売上が下がることもあります。重要なのは、変動の原因を分析し、早期に対策を打つことです。顧客離れが原因であれば、既存顧客へのフォローを強化する、新規集客を増やすなどの施策を講じます。また、親世代と定期的にミーティングを持ち、顧客対応や技術面でのアドバイスを受けることも有効です。承継初年度は試行錯誤の期間と割り切り、柔軟に対応することが大切です。

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