リピート率30%と60%、経営への影響はどれだけ違う?試算で見る重要性
更新日:2025年10月27日
- リピート率30%と60%では年間売上に約500万円の差が生まれる試算結果
- リピート率が高いサロンは広告費依存度が低く、利益率が15〜20ポイント改善される
- 顧客生涯価値(LTV)がリピート率60%で3倍以上に増加し、経営の安定性が大幅に向上する
- 新規顧客獲得コストは既存顧客維持の5倍かかるため、リピート率向上は費用対効果が高い
- リピート率を高める具体的な施策として、来店後フォロー・次回予約促進・顧客管理システム活用が有効
リピート率とは?美容サロン経営における重要性
リピート率向上の重要性を理解するには、まずリピート率がサロン経営にどのような影響を与えるかを知る必要があります。
リピート率の定義と計算方法
リピート率とは、一定期間内に再来店した顧客の割合を示す指標です。計算式は「リピート客数÷全体の来店客数×100」で求められます。たとえば、月間100名の来店者のうち30名が再来店であれば、リピート率は30%となります。
美容業界では、新規顧客のリピート率は平均約30%、既存顧客のリピート率は約70%とされています。一方、経営が安定しているサロンでは新規顧客で50%、既存顧客で90%という高い水準を維持しています。この差が、経営の明暗を分ける重要な要因となるのです。
なぜリピート率が経営の生命線なのか
リピート率が経営の鍵を握る理由は、新規顧客獲得と既存顧客維持のコスト差にあります。マーケティングの法則として知られる「5:25の法則」によれば、新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍かかるとされています。
大手集客サイトへの掲載料、広告出稿、初回限定クーポンなど、新規顧客を1人獲得するには多額の費用が必要です。一方、既存顧客へのアプローチは、来店時のカウンセリング強化やLINEでのフォローメッセージなど、比較的低コストで実現できます。つまり、リピート率を高めることは、広告費を抑えながら売上を安定させる最も効率的な戦略といえます。
試算で比較:リピート率30%と60%の経営インパクト
ここでは、具体的な数字を使ってリピート率の違いが経営に与える影響を可視化します。
モデルサロンの前提条件
試算のために、以下の条件を設定した小規模サロン(スタッフ3名)を想定します。
- 平均客単価:7,000円
- 月間新規顧客数:30名
- 平均来店サイクル:2ヶ月に1回
- 新規顧客獲得コスト(CPA):1人あたり10,000円
- 固定費(家賃・人件費等):月額80万円
- 変動費率:15%(材料費など)
リピート率30%のケース:年間売上と利益
【リピート率30%の場合】
・月間新規顧客:30名
・そのうちリピート客:9名(30%)
・年間リピート来店回数:54名(9名×年6回)
・新規売上:252万円(30名×7,000円×12ヶ月)
・リピート売上:378万円(54名×7,000円)
・年間総売上:630万円
・年間広告費:360万円(10,000円×30名×12ヶ月)
・変動費:95万円(630万円×15%)
・固定費:960万円(80万円×12ヶ月)
・年間利益:-785万円(赤字)
リピート率30%では、高い広告費が経営を圧迫し、売上が固定費をカバーできず赤字となります。新規顧客獲得に依存する構造では、集客を止めた瞬間に売上が途絶えるため、常に広告費をかけ続けなければなりません。
リピート率60%のケース:年間売上と利益
【リピート率60%の場合】
・月間新規顧客:30名
・そのうちリピート客:18名(60%)
・年間リピート来店回数:108名(18名×年6回)
・新規売上:252万円(30名×7,000円×12ヶ月)
・リピート売上:756万円(108名×7,000円)
・年間総売上:1,008万円
・年間広告費:360万円(同上)
・変動費:151万円(1,008万円×15%)
・固定費:960万円(同上)
・年間利益:-463万円(赤字縮小)
リピート率が60%に向上すると、年間売上は378万円増加します。赤字幅は縮小しますが、依然として広告費負担が重いため黒字化には至りません。
売上・利益・広告費の比較表
| 項目 | リピート率30% | リピート率60% | 差額 |
|---|---|---|---|
| 年間総売上 | 630万円 | 1,008万円 | +378万円 |
| 年間広告費 | 360万円 | 360万円 | ±0円 |
| 広告費率 | 57.1% | 35.7% | -21.4pt |
| 年間利益 | -785万円 | -463万円 | +322万円 |
同じ広告費でも、リピート率が30ポイント向上するだけで年間売上は約1.6倍に、利益は322万円改善されます。さらに、広告費率が21ポイント低下することで、経営の健全性が大きく向上します。
顧客生涯価値(LTV)で見るリピート率の本質的価値
リピート率の経営インパクトをより深く理解するには、顧客生涯価値(LTV)という概念が不可欠です。
LTV(顧客生涯価値)とは何か
LTVとは、1人の顧客が生涯にわたってサロンにもたらす総売上または利益を示す指標です。計算式は「平均客単価×年間来店回数×平均継続年数」で表されます。LTVが高いほど、その顧客から得られる価値が大きく、初期の獲得コストを回収しやすくなります。
たとえば、客単価7,000円で年6回来店する顧客が3年間継続した場合、LTVは12.6万円(7,000円×6回×3年)となります。新規顧客獲得コスト10,000円を差し引いても、11.6万円の生涯利益が見込めます。
リピート率がLTVに与える影響
リピート率が低いということは、顧客の平均継続年数が短いことを意味します。初回来店後にリピートしなければ、LTVは客単価7,000円のみとなり、獲得コスト10,000円すら回収できません。一方、リピート率が高ければ平均継続年数が延び、LTVは飛躍的に向上します。
| リピート率 | 平均継続年数 | 生涯来店回数 | LTV(売上ベース) | LTV(利益ベース)* |
|---|---|---|---|---|
| 30% | 0.8年 | 5回 | 35,000円 | 19,750円 |
| 60% | 2.5年 | 15回 | 105,000円 | 79,250円 |
| 90% | 5年 | 30回 | 210,000円 | 168,500円 |
*利益ベースLTV = 売上ベースLTV × (1-変動費率15%) – 獲得コスト10,000円
リピート率が30%から60%に向上すると、LTVは約4倍に増加します。さらに90%まで高めると、LTVは8.5倍に達し、1人の顧客から得られる価値が劇的に変わるのです。
LTVとCPAのバランスから見る健全経営
経営の健全性を測る指標として、「LTV/CPA比率」があります。一般的に、LTVが顧客獲得コスト(CPA)の3倍以上であれば健全とされます。
リピート率30%の場合、利益ベースLTVは19,750円で、CPA10,000円の約2倍にとどまります。これでは回収期間が長く、キャッシュフローが圧迫されます。一方、リピート率60%ではLTVが79,250円となり、CPAの約8倍に達します。この水準であれば、広告投資を積極的に行っても収益性を確保できます。
リピート率向上がもたらす4つの経営メリット
リピート率向上は、売上増加だけでなく、経営全体に多面的なメリットをもたらします。
メリット1:広告費依存からの脱却
リピート率が低いサロンは、常に新規顧客を獲得し続けなければ売上を維持できません。大手集客サイトへの掲載料や広告出稿費が固定費化し、経営を圧迫します。一方、リピート率が高まれば、既存顧客からの安定収入が増え、広告費への依存度が下がります。
試算でも示したとおり、リピート率60%では広告費率が35.7%まで低下します。さらに80%まで高めれば、広告費率は20%台前半まで下がり、広告を一時的に停止しても経営への影響が最小限に抑えられます。
メリット2:利益率の大幅改善
美容サロンの理想的な営業利益率は15〜20%とされています。しかし、リピート率が低いと広告費負担が重く、利益率がマイナスになることも珍しくありません。リピート率を高めることで、広告費率が下がり、その分が利益として残ります。
前述の試算では、リピート率30%で赤字だったサロンが、60%に向上することで赤字幅が322万円縮小しました。さらに80%まで高めれば黒字化し、理想的な利益率15〜20%の達成も視野に入ります。
メリット3:経営の予測可能性向上
新規顧客に依存した経営では、月ごとの売上変動が大きく、資金繰りが不安定になります。一方、リピート率が高ければ、既存顧客の来店サイクルから売上を予測しやすくなり、計画的な経営が可能になります。
たとえば、リピート率60%で平均来店サイクルが2ヶ月の場合、2ヶ月後の来店見込み客数をある程度予測できます。この予測精度が高まれば、スタッフのシフト調整や材料仕入れの最適化が可能になり、業務効率が向上します。
メリット4:スタッフのモチベーション向上
リピート率が高いサロンでは、常連客との信頼関係が深まり、スタッフのやりがいが高まります。「この前話していた旅行、どうでしたか?」といった何気ない会話から生まれる絆が、スタッフの仕事への満足度を高めます。
一方、新規顧客ばかりを追いかけるサロンでは、初対面の接客が続き、深い関係を築く機会が少なくなります。リピート率向上は、顧客だけでなくスタッフの定着率向上にもつながり、採用・教育コストの削減にも寄与します。
リピート率を高める5つの具体的施策
リピート率向上の重要性を理解したところで、具体的にどう取り組むべきかを解説します。
施策1:来店後24時間以内のフォローメッセージ
顧客が再来店しない最大の理由は「サロンを忘れている」ことです。来店後24時間以内にLINEやメールでお礼メッセージを送ることで、顧客の記憶に残りやすくなります。メッセージには、施術内容の簡単な振り返りや自宅でのケアアドバイスを添えると、丁寧な印象を与えられます。
「本日はご来店ありがとうございました。今日施術したトリートメントは、48時間後が最も効果が実感できる時期です。ぜひ髪の変化を楽しんでくださいね」といった具体的な情報を含めることで、顧客は自分が大切にされていると感じます。
施策2:次回来店の具体的な提案
「また来てくださいね」という曖昧な声かけではなく、「次回は〇月頃、カラーの色が落ちてくる頃がおすすめです」と具体的な時期を伝えることで、顧客の再来店意識が高まります。さらに、会計時に次回予約を促すことで、リピート率は大幅に向上します。
ある美容室では、会計時の次回予約率を30%から60%に引き上げることで、全体のリピート率が15ポイント向上したという事例もあります。次回予約を取ることで、顧客は「次も行く」という意識が定着し、他店への流出を防げます。
施策3:顧客管理システムの活用
紙のカルテやバラバラなメモでは、顧客情報を活かしきれません。予約管理システムを導入し、来店履歴・施術内容・顧客の好みを一元管理することで、パーソナライズされたサービスが提供できます。
たとえば、前回の来店から2ヶ月経過した顧客に自動でメッセージを送る機能を使えば、フォロー漏れを防げます。誕生月にクーポンを送る、季節に合わせたメニュー提案をするなど、顧客ごとに最適なタイミングでアプローチできます。
施策4:初回体験の質を徹底的に高める
新規顧客が再来店するかどうかは、初回体験で決まります。カウンセリングで顧客の悩みを丁寧にヒアリングし、期待を超える仕上がりを提供することが最も重要です。技術力はもちろん、接客態度や店内の清潔感も再来店の決め手となります。
特に、カウンセリングでは顧客の話を遮らず、共感しながら聞くことが信頼関係構築の第一歩です。「この美容師さんは私のことをわかってくれる」と感じてもらえれば、リピート率は自然と高まります。
施策5:ロイヤルティプログラムの導入
ポイントカードや回数券、サブスクリプションなど、継続来店にメリットを感じられる仕組みを導入することで、リピート率を高められます。たとえば、「5回来店で次回20%オフ」といった特典は、顧客の再来店意欲を刺激します。
ただし、割引に頼りすぎると客単価が下がるため、ポイントで交換できる限定メニューや店販商品を用意するなど、付加価値を提供する工夫が必要です。
まとめ:リピート率向上は経営安定化への最優先課題
本記事では、リピート率30%と60%の違いが経営に与える影響を試算を通じて明らかにしました。わずか30ポイントの差が、年間売上で約380万円、利益で320万円以上の差を生むという事実は、リピート率向上が経営安定化への最短ルートであることを示しています。
新規顧客獲得に多額の広告費をかけ続けるのではなく、既存顧客との関係性を深めることで、広告費依存から脱却し、利益率を大幅に改善できます。顧客生涯価値(LTV)を高めることは、単なる売上向上にとどまらず、経営の予測可能性を高め、スタッフのモチベーション向上にもつながります。
リピート率向上のためには、来店後のフォロー、次回予約の促進、顧客管理システムの活用、初回体験の質向上、ロイヤルティプログラム導入という5つの施策を組み合わせることが重要です。これらは決して難しいことではなく、今日から実践できるものばかりです。
経営が不安定で常に新規集客に追われているサロンこそ、リピート率向上に注力すべきです。まずは現状のリピート率を正確に把握し、目標値を設定することから始めましょう。数字で管理することで、改善の効果が見えやすくなり、継続的な取り組みが可能になります。
リピート率向上は、経営安定化への最も確実な投資です。顧客との関係性を深め、愛されるサロンを目指すことが、持続可能な経営への道を開きます。
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