サロンの二重価格表示と景品表示法|正しい書き方
サロンのキャンペーン価格表示と景品表示法|「通常◯円→◯円」の正しい使い方

サロンのキャンペーン価格表示と景品表示法|「通常◯円→◯円」の正しい使い方

更新日:2026年9月7日

「通常12,000円→初回7,000円」。サロンの集客で当たり前に使われるこの見せ方は、二重価格表示と呼ばれ、景品表示法のルールの対象です。比較のもとになる「通常価格」に実態がなければ、お得さを装う不当表示と判断されるおそれがあります。知らずにやってしまいやすい領域だからこそ、正しい知識が店を守ります。この記事では、二重価格表示の基本ルールと、サロンでやりがちな危ない表示、安全なキャンペーンの作り方を解説します。

【大事なこと】
  • 実際と異なる「通常価格」を並べた割引表示は、景品表示法の有利誤認表示にあたるおそれがある
  • 過去の販売価格と比べる場合は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であることが必要
  • 目安として、セール前8週間のうち過半の期間で販売実績のある価格かどうかが判断材料とされる
  • 実態のない「初回50%オフ」の常態化や、期限のないオープン記念価格は危険信号
  • 違反には措置命令や課徴金の制度があり、記録を残す運用が店を守る

二重価格表示とは|問題になるのは「うそのお得さ」

二重価格表示とは、実際の販売価格に、それより高い比較対照価格(通常価格や他店価格など)を並べて割安さを見せる表示のことです。表示そのものが禁止されているわけではありません。問題になるのは、比較のもとにした価格に根拠や実態がない場合です。

景品表示法は、価格や取引条件が実際より著しく有利だと誤認させる表示を「有利誤認表示」として禁止しています。存在しない通常価格からの割引を見せる行為は、まさにこれに該当し得ます。消費者庁も、同一でない商品の価格を比較に使う場合や、比較対照価格があいまい・不正確な場合は不当表示のおそれがあるとしています(消費者庁「二重価格表示」)。

サロンの場合、チラシやネット予約のメニュー欄、SNS投稿、店頭POPまで、お客様の目に触れる価格の見せ方はすべて「表示」です。媒体ごとに書き方がばらつくと、意図せず矛盾した表示が生まれるため、価格表示のルールは店として一元管理する必要があります。サロンの価格は施術・接客・時間の複合で定価の根拠を説明しにくいからこそ、表示の正確さが信頼の代わりを務めます。ルールの要点を1枚にまとめ、販促物を作る前に確認する場所を決めておきましょう。

【要点まとめ】
  • 二重価格表示自体は禁止ではなく、根拠のない比較が問題になる
  • 実態のない通常価格からの割引は有利誤認表示にあたり得る
  • チラシ・予約画面・SNS・POPのすべてが規制対象の「表示」

「通常価格」と言えるかの判断|最近相当期間という考え方

では、どんな価格なら比較に使ってよいのでしょうか。過去の自店価格と比べる場合の基準が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」かどうかです。つまり、その通常価格で実際に、最近まで、ある程度の期間売っていた実績が要ります。

実務の目安として、セール開始前8週間のうち過半の期間でその価格による販売実績があるか、といった考え方が消費者庁の運用基準で示されています。一瞬だけ高い定価を設定してすぐ割引を始めるような見せ方は、この基準を満たしません。「値上げした直後に元の価格を通常価格として使う」のも同じ理屈で危険です。細かい適用は事案ごとの判断になるため、迷ったら公式の考え方を確認するか、表示から比較価格を外すのが安全です。

サロンで実践するなら、メニューの正規価格で施術した記録を残しておくことです。予約システムやレジの履歴で「この価格で通常販売していた」ことを示せる状態にしておけば、キャンペーン時の表示にも根拠が生まれます。価格改定の履歴も日付つきで保管しておきましょう。予約管理の履歴なら、いつ・どのメニューを・いくらで提供したかが自動的に残るため、販売実績を示す資料としてそのまま使えます。判断は表示をやめた時期や販売の量にも左右されるため、迷うケースでは比較表示をやめる判断の速さも大切です。

【要点まとめ】
  • 比較に使えるのは「最近相当期間」販売していた実績のある価格
  • セール前8週間の過半で販売実績があるかが目安とされる
  • 正規価格での販売記録と価格改定履歴を日付つきで残す

サロンでやりがちな危ない表示|3つの典型パターン

現場でよく見かける危ないパターンを3つ挙げます。1つ目は「初回50%オフ」の常態化です。新規向け割引自体は問題ありませんが、比較対照の通常価格でほとんど誰にも販売していない状態が続くと、実態のない価格からの割引と見られかねません。

2つ目は、期限を決めないオープン記念価格や特別価格です。「今だけ」と言いながら何か月も同じ価格が続けば、それが実質の通常価格であり、併記された高い価格は飾りになります。将来の値上げを前提に「◯月から通常◯円」と示す場合も、その将来価格で本当に販売する確かな予定がなければ不当表示のおそれがあります。

3つ目は、根拠のない他店比較や最上級表現です。「地域最安値」「どこよりもお得」といった表示は、相当数の競合の価格を正確に調査した裏づけがなければ使えません。割引の見せ方に頼らないキャンペーン設計は、こうしたリスクからも店を遠ざけてくれます。また、集客サイトやチラシなど媒体ごとに違う価格が並ぶと、それ自体が「どれが本当の価格か」という不信を生みます。改定時は全媒体を同じ日に更新しましょう。

あわせて読みたい:
【要点まとめ】
  • 通常価格での販売実態がない「初回◯%オフ」の常態化は危険
  • 期限のない記念価格・根拠のない将来価格は不当表示のおそれ
  • 「地域最安値」等は正確な調査の裏づけなしには使えない

安全なキャンペーンの作り方|期限・記録・言い換えの3点セット

ルールを踏まえると、安全なキャンペーンの型は自然に見えてきます。第一に、期間を最初に決めて表示に明記すること。「◯月◯日まで」と区切れば、特別価格が通常化する事態を防げます。終了日を守ることも表示の一部と考えてください。延長したい場合は「第2弾」のような別企画として区切り、同じ表示をだらだら続けない運用が無難です。

第二に、記録です。キャンペーンの企画書に、比較対照価格の販売実績(いつからいつまで、何件)を添えておけば、後から問われても説明できます。チラシやSNS投稿の現物・スクリーンショットも保管しておくと安心です。

第三に、二重価格に頼らない言い換えの引き出しを持つことです。「初回カウンセリング込み」「トリートメント1回分をプラス」のような内容の上乗せや、「平日限定メニュー」のような枠の設計なら、価格比較の根拠問題は生じません。値引きではなく価値の追加で新規を呼ぶ発想は、常連への説明もしやすく、単価の防衛にもつながります。追加する価値は、時間・情報・体験といった原価の低いものから選ぶと利益を守れます。キャンペーン全体の目的とKPIから設計する方法は、次の記事で詳しく整理しています。

あわせて読みたい:
【要点まとめ】
  • 期間を先に決めて明記し、終了日を必ず守る
  • 比較価格の販売実績と表示物の現物を記録として残す
  • 値引き表示に頼らず、価値の追加や枠の設計で言い換える

違反するとどうなるか|措置命令・課徴金と、それ以上に痛い信頼

景品表示法に違反すると、消費者庁や都道府県から表示の差し止めや再発防止策を命じる措置命令が出されることがあります。命令は事業者名とともに公表されるため、地域密着のサロンにとっては金銭以上のダメージです。有利誤認表示には売上額に応じた課徴金の制度もあります。

行政処分に至らなくても、リスクは身近にあります。お客様は他店の価格表示も見比べており、「この店の割引は本当なのか」という疑念は口コミやSNSで簡単に広がります。せっかくの技術やサービスが、価格の見せ方ひとつで疑われるのは割に合いません。

予防はシンプルです。価格表示を作る人を決め、この記事で挙げた基準をチェックリスト化し、新しいチラシや投稿を出す前に一度通す。外部の制作会社や広告代理店に任せている場合も、最終責任は店にあるという前提で確認を挟みましょう。年に一度、掲載中の全媒体の価格表示を棚卸しする習慣があれば、古いキャンペーン表示の消し忘れも防げます。ネット予約の説明文、店頭の料金表、SNSの固定投稿は、とくに古い価格が残りやすい場所です。点検は繁忙期前の落ち着いた時期に行うと、キャンペーン準備と一緒に済ませられます。

【要点まとめ】
  • 措置命令は事業者名つきで公表され、課徴金の制度もある
  • 処分に至らなくても、疑わしい表示は口コミで信頼を削る
  • 表示前チェックの担当者と手順を決め、年1回全媒体を棚卸しする

まとめ:お得の演出ではなく、根拠のあるお得を見せる

二重価格表示のルールは、突き詰めれば「うそのお得さでお客様を呼ばない」という一点です。比較に使う通常価格には最近相当期間の販売実績が必要で、目安はセール前8週間の過半。期限の明記と記録の保管、そして値引きに頼らない企画の引き出しがあれば、キャンペーンは安全に運用できます。まずは、いま出しているチラシ・予約画面・SNSの価格表示を一覧にして、比較対照価格の根拠を言えるかを確認してみてください。ひとつでも答えに詰まる表示があれば、それが最初に直すべき箇所です。表示のルールは一度身につければ以後のすべての販促に効く知識です。迷ったら消費者庁の資料に立ち返る習慣をつけましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 「通常価格」で実際に販売していなくても表示していいですか?
A. 避けるべきです。過去の販売価格を比較に使うには、最近相当期間にわたって実際にその価格で販売していたことが必要とされます。実態のない価格からの割引表示は有利誤認表示と判断されるおそれがあるため、販売実績のある価格だけを比較に使ってください。

Q. オープン記念価格はいつまで続けられますか?
A. 明確な日数の定めはありませんが、「記念」「今だけ」と言いながら長期間同じ価格を続けると、実質的な通常価格とみなされ、併記した高い価格が根拠を失います。終了日をあらかじめ決めて表示し、その日で確実に切り替える運用が安全です。切り替え日はスタッフにも共有しておきましょう。

Q. 「地域最安値」と書いてもいいですか?
A. 競合店の価格を正確に調査した裏づけがない限り使えません。相当数の競合店の実際の販売価格を調べ、根拠を示せる状態が必要とされています。調査の手間と更新の負担を考えると、最上級の表現は避けて具体的な内容で訴求するほうが現実的です。使う場合は調査日も記録しましょう。

Q. 違反するとどんな処分がありますか?
A. 行政から措置命令(表示の差し止め・再発防止策の公表など)が出されることがあり、事業者名も公表されます。有利誤認表示には売上額に応じた課徴金制度もあります。まずは表示前のチェック体制を作り、根拠資料を残すことが最も有効な予防策です。日頃の記録が何よりの備えになります。

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